608 出発準備
部屋から出ると、箒を持った見知らぬメイドさんががいた。え、誰?
「アマリアよ! ザンバリーの従妹の!」
あ、ああ。いたな。以前と服が違ってたからわからんかったよ。
「ってか、なんでメイドやってんの?」
うち、どんだけメイドを必要としてんだよ? 明らかに過剰だよね?
「花嫁修行だって」
花嫁修行? なんのかい、メイドなんかして?
「まあ、よーわからんが、がんばんな」
永遠に花嫁になれんオレにはわからんので、応援だけして食堂に向かった。
食堂には誰もいない。まあ、いつもなら朝の仕事に向かうし、サプルたち料理班は身を清めるために朝風呂に入っているので、しばらくは誰もこないだろう。
なんで、猫型ドレミを撫でながらマンダ〇タイムモーニングバージョン(羊乳をちょっと加えただけです)をしながら皆が来るのを待つ。
「おはようございます、ベー様」
半分ほど飲んだところで執事さんがやって来た。
……執事って、どんな仕事してんのかな……?
ふっと疑問に思ったものの、家のこと親父殿の管轄。まあ、なんかやってんだろうと勝手に結論を出して流した。
「はい、おはよーさん」
「なにか、口にできるものをお持ち致しますか?」
「いや、これで充分だよ。ところで、剣客さんってどうした?」
おもいっきり忘れてたが、剣客さん、最近どころか結構前からいねーよね? それとも、ただ見てねーだけか?
「タジト様でしたら道場におります」
道場? なんね、それ?
うちにいねーオレが言うのもなんだが、なぜ家の事情とかオレの耳に入ってくんの、こんなに遅いの?
「……ベーの耳に入れても気にしないじゃない……」
なんか頭の上から突っ込みが入るが、なに心の声を聞かないでください。ってか、聞こえてんの!?
「オホン。で、道場ってなによ?」
謎の生物の謎習性はサラっと無視して執事さんに尋ねた。
「はい。魔族の者に剣を学びたいと言う者がおりまして、旦那様に相談したところタジト様にお願いしました」
なんでも最初、剣客さんは、まだ修行の身と一旦は断ったようだが、カテンヒツルギ流を広めるイイ機会だと親父殿に説得され、やるようになったそーだ。
道場は、クレインの町に造ったそうで、そちらにいるんだとよ。
「ほ~ん。なら、暇ができたら一度顔でも出してみるか」
あの剣客さんが、どんな教えしてるのか興味あるし、使えそうならクレインの町の防衛隊にしたいしな。
「でもそうなるとうちの守りがいねーな」
剣客さんは、トータの剣を見てもらうのと用心棒をしてもらおうと誘った。まあ、親父殿がいる時点で必要もねーんだが、数は力だ。多いに超したことはねー。大規模に襲われたら親父殿だけでは間に合わねーしな。
「ベー様。旅にと申されましたが、留守はいかが致しましょう?」
「それなんだがな、執事さんとメイドさん何人かには残ってもらいてーんだわ。一応、誰もいなくても防衛手段は施してあるんだが、夏か秋にかけて結構知り合いが来んだわ。あと、ルククが来たらこれを持たせてやってくれ。オレの魔術で落ちないようにしてあるから首の後ろ辺りにつけてもらえばイイからよ」
まあ、その前に帰って来るだろうが、ルククは半野生で群れで行動している。気候や外敵の有無で渡りが早くなるときもある。なんで念のために頼んでおくんだよ。
「畏まりました。では、人選はこちらでいってもよろしいでしょうか?」
「そうだな。そこら辺はサプルと相談してくれ。サプルの補助にメイドさんは必要だしよ」
「では、サプル様と相談の上、決めさせていただきます」
「おう、頼むわ」
一礼して執事さんが食堂を出ていった。
あとは、サリネと女騎士さんだが、まあ、サリネは留守組を選ぶだろうし、勇者ちゃんをほったからしにしていく女騎士さんでもねーから、残留と見てイイだろう。
「残るはトータか」
家族旅行と銘打っている以上、トータを残すわけにはいかねーが、トータの自由意志を無視するわけにはいかねー。
まっ、帰って来たら聞けばイイし、帰って来ねーのならそれはそれだ。好きに冒険してろ、だ。
あとはなんだと考えていたら、サプルたちが現れ、オカンや親父殿、サリネや下宿人と思われる魔族なんかが集まって来た。
まあ、残りは朝食後でイイか。
「では、頂きます」
親父殿の音頭で朝食に入った。




