1851 ファンタジーパワー
「……イイ話だった……」
「開始十分くらいで爆睡してましたよ」
夢の中で観たんだよ! 心の中で感動したんだよ! でも、また観に来ようっと。
「てか、ユウコさんは大丈夫なん?」
目が充血しているよ。何時間観たん?
「さすがに眠そうですね。わたしが無理矢理寝かさないようにしてますけど」
鬼畜かな? いや、幽霊でしたね。
「そろそろ寝かせてやれよ。ユウコさんは生身なんだからよ」
まだ若いとは言え、一晩中起きているのは大変だろう。徹夜とかしない時代なんだからよ。
「なに観てんだ?」
アメリカドラマっぽいが。
「メリー・ポピンズとか言ってましたね」
「てか、言葉わかるんだ」
日本語翻訳されたものではあるが、日本語なんてどこで覚えたんだよ? ファンタジーパワーか?
「このダンジョン内では言葉の壁はありません」
と、アヤネが教えてくれた。いたんかい!? 気配出せや!
「……本当にファンタジーパワーが働いていたんかい……」
「お姉様ですから」
これってないくらいの説得力。あれにかかったら常識が素足で逃げ出すレベルだからな……。
「ハァー。寝起きなのにどっと疲れたよ。今、朝なのか?」
閉め切った部屋なので朝なのか夜なのかもわからん。時計もないし。
「朝の六時ですね。朝食はどうします? ダンジョンでは六時半から七時半までが朝食になります」
「そんなモーニングタイムがあるんだ」
規則正しいダンジョンだな!
「はい。ダンジョン内は時間の感覚がなくなりやすいので設けたみたいですよ」
「ダンジョンマスターは、昼夜逆転みたいなライフスタイルなのにな」
てか、昼夜なんて概念なんてないだろう。引きこもってんだからよ。
「お姉様、案外規則正しい生活を送ってますよ」
「リッチが規則正しいとか笑わせてくれんな。元々健康でもねーだろう。突っ込み待ちか?」
血色のイイリッチとかどこに需要があんだよ? つくづく常識を外してくるヤツだよ。
「類は友を呼ぶ、ですね」
あれと類にしないでください。
「友達とは思っているんですね」
知らんわ!
シアタールームを出──たらどこだよ? なんかレンタル店みたいな……やっていたんだっけな……。
「あら、ベーさま。貸出ですか? 会員証を作りますよ? 会員登録は無料ですから」
「……頼む……」
ま、まあ、いつ来るかわからんが、無料なら会員登録しておくか。
「ここに名前をお願いします。ベーで構いませんよ。長い名前に対応してないので」
「そんなもんでイイんだ」
「はい。返却ボックスは至るところにあるので安心ですよ。それでも面倒なときはドレミにでも返させてください」
TSU○AYAかな? まあ、それはそれでありがたいがよ。
「ダンジョン店? 他にもあんのか?」
会員証にダンジョン店って書いてあった。フランチャイズ?
「はい。ブルー島店、カイナーズホーム店、館地下店なんかがありますね。魔大陸にも三店舗ありますよ」
ワールド展開だな! 言語どーすんの?
「魔族の間では声優業が人気なんですよ」
世界観! この世界の観! もうメチャクチャだな!




