1852 出会いは日常茶飯事
ダンジョンワールドやカイナーズワールドにはついて行けんと、考えるのは放棄させてもらった。ハァー。
レンタル店から出て、シアタールームに戻った。
「今何時よ?」
「朝の八時くらいです」
アヤネが腕時計を見て教えてくれた。
「このダンジョン、ちゃんと外の時間と同じなんだよな?」
出たら百年後とかゴメンだぞ。まあ、竜宮城ならギリ許せるがよ。
「大丈夫ですよ。同じ時間ですから」
アヤネが言うなら信じられるので、馬車の外まで案内してもらった。まったく、ダンジョンはこえ~わ!
「ベー」
馬車から出ると、あんちゃんが美丈夫のオーガとお茶していた。どんな仲よ?
「おう。男爵とは有意義な交流はできたかい?」
「ああ。おもしろい話をたくさん聞かせてもらった。また話を聞きたいものだ」
「そうか。まあ、縁ができたならまた会えるさ。それまでの楽しみだな」
それが出会いであり、オレの人生に一期一会は存在しない。一度関われば出会いは日常茶飯事になる。悲しむ必要はないさ。
「お前は前向きだな」
「イイ人生にしたいからな。後ろなんて見てらんねーよ」
イヤなことはスルーさせてもらうけどな!
「御者。見習い魔女たちは帰って来たか?」
「後ろにいるだろうが。しっかり存在を見てやれよ」
振り向いたら委員長さんとチビッ子さんがいた。いつの間に!?
「わたしたちの存在なんてそんなものなのね」
こくこく。
「ドンマイ!」
なんて慰めてやったらワンダーワンドでボコられました。冗談ですやん!
「ほら、出発するから乗れ」
地面に倒れているオレを無造作につかみ、御者台へと放り投げられた。酷いよ……。
「ハァー。オレの扱い、雑ですやん」
「お前も大概、人を雑に扱っているがな」
「それは否定できん」
「しろよ! クソ村人が」
なんだい。村人とは認めてくれてんのかよ。案外イイヤツじゃないか。
「お、男爵! またな~!」
どうやら見送りに来てくれていたようだ。気づかなくてゴメンよ。
「お気をつけて!」
男爵や配下の者たちに見送られてラナクの村を出た。てか、三歩進んで二歩下がるみたいな旅をしているよな。
「まあ、そんな旅もまたよしだ」
オレの人生にはお似合いだな。
「これなら精霊獣的馬を連れて来るんだったな」
皆は忘れているかもしれんが、エリナが造りし十頭の馬のことだよ。
「それならいるぞ。一応、護衛として連れて来ているから」
器用に指笛を鳴らすと、一頭の栗毛の馬が現れた。馬具や轡をつけて。どこから現れたよ?
「名前は、ライジンだ」
「おー! カッケー名前じゃん。ライジン! 乗せてくれるか?」
ヒィヒーンと鳴いた。まるで「あたぼうよ!」と言っているように聞こえた。
御者台から飛び出し、ライジンの背に跨がった。
そう言えば、南の大陸で乗せてくれたあいつ、元気にやってっかな? 四肢を持つ竜で、リジャーと呼ばれていた魔物だ。※1258話。
「確か、ハヤテだったかな?」
まあ、元気にやってんだろう。またそのうち会えるんだからそのときに謝るとしよう。今はライジンだ。
「ハイヤー、ライジン! マルセンの村まで駆け抜けるぞ!」
ヒィヒーン!




