1847 ニュー釘バット
一日漫画を読んで過ごす。
これもまたスローなライフの一場面──かどうかはそれぞれの判断に任せるとして、久しぶりに本を読むってのは肩が凝るものだ。
馬車から出て、近くにあった木材をつかみ、結界でバットを作り出した。
「こんなもんか?」
バットを作るのも久しぶりすぎて感覚が鈍って──いや、体が成長したからか? バットのサイズが微妙に足りてないような気がした。重さも足りてないな。
「釘でも打っておくか」
「また凶悪なものを」
別に凶悪にしているわけじゃない。重さを増やしているだけだ。
まあ、オレの能力からしたら誤差みたいなもんだが、バットはバランスが大事。微妙な重さで一撃が変わってくるのだ。
何度か素振りをして釘を足して行った。
「こんなものか?」
バットを振るのも久しぶりすぎて感覚がまだ思い出せん。まあ、悪くはないのでこれでよしとしよう。
「おい、美丈夫。ちょっと相手してくれや」
馬車?御者をやっている美丈夫のオーガに声をかけた。
一応、人間の姿に変わっているが、能力まで人間になってはいないはずだ。試しにはちょうどイイだろうよ。
「いいだろう。あのときの借りを返してやる」
おーおー威勢がイイね~。オレがオーガ殺しって知らないのか? いや、エリナの部下だから殺したりはしないがよ。
「素手か?」
「ああ。殴るのが得意だからな」
そうだった。世界を狙えるパンチを持っていたっけな。※忘れた人は第72話にレッツゴーだ。
美丈夫なオーガはボクシングスタイルで構え、オレは野球スタイルで構える。ヘイヘイ、ピッチャービビってるよ~!
ジリジリと近づいて来て、回し蹴りを放って来やがった。
やるじゃねーか。だが、その角度は余裕でストライクゾーンだ。おらよっと!
最高の一振りで回し蹴りを振り上げてやった。今のなら二塁には行けたね!
「なんだ? 空手で世界を目指すのか?」
「……相変わらずデタラメな体しやがって……」
お前のご主人様ほどではないがな。てかあいつ、強化しやがったな? ホームランにしてやる勢いだったのによ。
「ほら、本気を出さねーと彼方にブッ飛ばしてやんぞ」
「ほざけ!」
蹴りを放って来る美丈夫なオーガ。カポエイラか? テコンドーか? 異世界武術か?
しかし、まだまだストライクゾーン。オレはカーブを打つのが得意なんだよ! そんな変化球高校野球レベルだ。高校で野球やってなかったけど!
「そんなもんか? なら、次はこっちから行くぜ!」
これは守備の構え。これからは攻撃の構え。うぉりゃー!
で、美丈夫なオーガに一発を食らわしてやりましたとさ。うん! オレはまだまだ強い!
「なんて少年漫画ごっこもたまにはイイもんだ」
そんなごっこもスローなライフの一場面なんですよ。




