1844 ミノ子ママ
夕方になり、馬車から腐嬢王が出て来た。
「おや、ヴィどの。帰っておりましたか」
「ああ。お前が外に出るなんて珍しいな。人類滅亡の時が来たのか?」
「拙者をなんだと思っているのでござるか? 毎日暗くなったら出ているでござるよ。外の空気を吸いたくて」
自分がどれだけ矛盾をはらんだこと言ってんのか理解しているんだろうか? メンドクセーから突っ込んだりはしないがよ。
「マルゲリータさんは?」
「相変わらず名前改変実行中でござるな。マリーなら大図書館に戻ったでござるよ」
マルゲリータならマルーじゃねーの? 愛称間違ってんぞ。
「ベー様が言えたことではありませんけどね」
まあ、友達をどう呼ぼうと構わんか。それだけ仲がイイってことだからな。
「お前って、なんかコミュニケーション能力高いよな。引きこもりのクセに」
「ネットの中では友達百人はいたでござる。日々、語り合っていたでござるよ。文字でしたが」
それは誇られることなのか? ってまあ、死ぬ際、友達0人のオレが言えた義理はないがよ。
「そうかい。ルヴィはどうしてる?」
「ミノ子が面倒見ているでござるよ」
「そうか。いいミノタウロスだな。オレの代わりになんか褒美をくれてやってくれよ」
ミノタウロスが喜ぶもなど知らんし。
「ミノ子はルヴィちゃんを世話することがご褒美でござる。ミノ子ママと呼んでくだされ。ルヴィちゃんにとってもママでござるからな」
「あいつ、娘が欲しかったのか?」
「さあ、どうでござろう? ミノタウロスの心などわからんでござる」
部下にしたんだから慮ってやれよ。てか、ミノタウロスなんてどこから見つけて来たんだ? あ、深く知りたいわけじゃないんで説明は結構ですよ。
「散歩はイイが、人は襲うなよ」
「拙者、ダンジョン以外で食事はしない流儀でござる」
主義にしろよ。怖いんだよ。
馬車の中に入り、ダンジョンだかマンションだかわからん空間に入った。
「お帰りなさい。ルヴィちゃん、パパが帰って来ましたよ」
「パパにすんなや。まだそんな歳じゃねーわ。ベーで覚えさせろや。ルヴィの本当の父親に失礼だわ」
「父親はルヴィを捨てたわけじゃないので?」
アヤネ、いたんかい! って突っ込みはご遠慮くださいね。
「レニスの性格上、そこら辺の男の子供なんて拵えたりしねーし、男を逃がすわけもねー。やむにやまれぬことがあったんだろうよ。なら、父親と再会する未来もある。そんなとき、父親と呼べねーのは可哀相だろう。オレはあくまで預かったまで。返すときが来たら返すだけだ」
それまではしっかり……かはわからんが、五体満足、誰に恥じることなく面倒見てやるさ。
ルヴィを受け取り、高い高いしてやる。
「お前のオトンはお前を捨てたわけじゃねーし、望まれてこの世に産まれたんだ。まっすぐ、誰に恥じこともねー女になれ」
ただ、方向音痴だけは母親に似ないでくれよ。




