1843 魔女の知恵
あんちゃんは男爵に任せて馬車に向かった。
「お、帰ってたか」
馬車の前でなにかを作る見習い二人。元気にしてた?
「あなたの放置にも慣れたわ」
別に放置プレーしてんじゃないんだからそう言うセリフは止めてください。
「人生にはそんな時間も必要なものさ。そんとき、どう時間を使うかで将来が変わってくるもんだぜ」
まあ、ただ時間を消費するもよし。有意義に使うもよし。どう過ごそうと人それぞれだ。得たものから人生は作られるんだからな。
「明日か明後日には出発するから」
「曖昧ね」
「予定は未定。思い立ったときが出発さ」
思い立ったが吉日。思い立たなければ凶日。人生、そんなもんで構わないのさ。運不運なんぞその時次第なんだからよ。
「適当なんだから」
「イイんだよ、適当で。オレはオレを満足させるために生きてんだからな」
絶対、後悔しない人生なんて生きられるわけがない。その逆に、絶対、満足できる人生も生きられない。運不運が重なり、できることもあればできないことも出て来る。それでもオレはオレのために生きている。実にイイ人生じゃないか。イエス、スローライフ! イエス、パッピーライフだ!
「若人よ、今を生きよ、だ」
「あんた、わたしたちより年下でしょうが!」
「精神的にはお前らより上だ。粋がるな、小娘が」
人生を語るなら何十年と生きて、人生を終了さてからにするがよい。って、そんなヤツはお前らだけだ、なんて突っ込みはノーサンキューだぜ☆
「何様よ!」
「村人様よ!」
この下り、なんか前にもやったような? そろそろ飽きられそうだ。まっ、それでもやるがな!
「で、なに作ってんだ? 薬か?」
「粘着材よ。板の隙間を埋めるために使うのよ」
「へー。そんなのを使うところもあるんだ」
オレは結界で断熱材としている。粘着材とか使うって発想がなかったよ。
「魔女の知識か?」
「そうね。大図書館は古いからわたしたちで修繕しないといけないのよ」
「予算とかもらえんの?」
「さあ? 知らないわ」
見習いには知らされることじゃないか。
「大図書館も苦労してんだな。今度、弟皇さんに会ったらお願いしておくよ」
レヴィウブに行けば会えるような気がする。今ではないだろうがよ。
「……近所の人に会うんじゃないんだから……」
オレには近所の人より遭遇率が高い。ここしばらく近所の人らに会ってないし。
「まだ作るのかい? てか、水っぽいな。粘着性、ないんじゃね?」
茶色い水って感じだ。
「最後に灰を入れると固まるのよ。それまではこのままなの」
へー。そんなもんなんだ。魔女の知恵は凄いもんだ。
まだまだ作るそうなので、そのレシピを教えてもらうことにした。




