1842 知ったことか!
「じゃあ、オレらは聖国に戻るわ。儲け話があったら呼ぶよ」
「忙しいって言ってんだろうが! そっちでなんとかしろ!」
「はいはい。そうするよ。嫁さんによろしくな」
あんちゃんと別れ、聖国へ向かうとする。
転移結界門を出たら転移バッチでレッツらゴー! ケルク村に戻って来た。
「おー! さらに進んでんな」
人海戦術か? バイブラストは本気出してんな~。
「ここが聖国とやらなのか?」
「その端にあった村だよ。山賊だか盗賊が巣くっていたが、滅ぼしてバイブラスト、帝国領としていただいた」
「……それ、侵略と言わんか……?」
「奪われたくないのならしっかり管理しておけ。奪われる聖国がワリーんだよ」
侵略で大いに結構。帝国、ガンバレ、だ。
「戦争にならんのか?」
「帝国は他国を平定して領土を拡大した国だ。戦争にも交渉にも慣れているよ。今さらだ」
人を殺し、名誉を汚し、奪うことはしていない。それをやっているのは聖国だ。そんなカスみたいな国に遠慮してやる優しさはオレにはない。知ったことか! だ。
「男爵に戻って来たことを伝えに行くか。あんちゃんも紹介したいしな」
「帝国で男爵は地位が高いのか?」
「うーん。そうでもないんじゃないか? 庶民からしたら雲の上の存在だろうが、公爵から見たらかなり下だと思う。ただ、ここを任せられた男爵は優秀だ。そのうち伯爵とか辺境伯とかになるんじゃね?」
そこは公爵どのの働き次第。好きなようにやってくれだ。
「あんちゃんと商売することはねーだろうが、どこで繋がるかわからんからな、仲良くしておいて損はねーだろうさ」
東の大陸の者が気軽に来れ……てはいるが、オレが仲介しないと来れないんだから顔と名前を覚えておくだけでイイだろうよ。
「男爵はどこかな~?」
って、捜すこともなくあちらからやって来た。
「おう、男爵。イイところで会ったよ。ちょっとイイかい?」
「はい、問題ありません。どうかなさいましたか?」
「なんでお前が頭を下げられているのだ?」
「バイブラスト公爵とは友達だからだな」
「はい。ベー様は公爵様から特別な地位と権限が与えられていますので」
いろいろ関わってきたからな。紋章も与えられてるし。
「どんな村人だよ?」
「こんな村人だよ」
あるがままのオレを見るがよい。どこからどう見ても村人だろう?
「ハァー。男爵殿。わたしはファード・オン。紅玉帝国、こちらの方には東の大陸で通じるとか。その地で商売をしておる商人でございます」
「これはご丁寧に。わたしは、クレウ・ロストルと申す。バイブラスト公爵家に仕える男爵の一人です」
握手をする二人。どちらも丁寧な挨拶をする。
「こちのあんちゃんに聖国を見せたくて連れて来た。よろしく頼むわ」
「こちらこそよろしくお願いします。ベー様が連れて来た者なら大歓迎です。ファード殿と呼んでよろしいか?」
「ええ。わたしは男爵様とお呼びいただいても?」
「なに、クレウと呼んでくだされ。ベー様が認めた方なら敬称など不要です」
「なら、ファードと呼んでくだされ。クレウ」
「ああ、了解した。ファード」
また握手する二人。気が合ってなによりだ。




