1841 最強の商人
「てか、あの狂人と似てるとか、オレ、終わってんだろう」
先生の知識と技術は素直に尊敬できる。見習いたいとも思う。だが、性根は最低。同じくなりたいと欠片も思わねーよ。反面教師にしかならん人だわ。
「ある意味、終わっているところがありますよね。丸投げするとことか、丸投げするとことか、丸投げするとこですね」
三回も言う必要あった? まあ、丸投げはオレのスローなライフを守るためのもの。いや、事か? 丸投げを止めることはない。断言しよう!
「それで不幸になったヤツはいない」
「苦労した方がほとんどですけどね」
「生きてりゃ苦労の連続だよ。苦労からは誰も逃れられねーもんさ」
丸投げしているオレだって理不尽って苦労から逃れられてない。オレはまったく望んでないのにだ。
「嫌なら断れ。オレはそれを尊重するまでだ。あんちゃんたちも理不尽だと感じたら断ってくれて結構。ただ、他の誰かに利益が移るだけなんだからな」
丸投げしても強制はしない。どうしても嫌だってんなら他を捜すまでだ。オレの出会い運なら問題ナッシング~!
「お前のそういうところが卑怯だよな。こちらが断れないようにしておいてよ」
「商人が甘いこと言ってんな。取捨選択しろ。苦労と儲けが釣り合うか。そんなこともわからねーんなら行商に戻れ。小さな儲けで満足してろ」
勝負するために行商を辞めたんだろうが。なら、多少、苦労に片寄ってようが、それを押し退けて儲けを吊り上げるのが商人だろうがよ。
まあ、あんちゃんは名より身を大切にするタイプ。そんな男だからオレは気に入ったんだがな。
「あんちゃんは成り上がりもんだが、成り上がりだからこそ信頼もできるし信用もできる。オレの中であんちゃんが一番の、いや、最高の商人だ。これは、初めて会ったときから変わってねーよ」
優秀な商人は星の数ほどいるだろう。だが、オレの中ではあんちゃんが最高の商人だ。こればかりは会長さんでも覆せないだろうよ。
「……そういうところも卑怯なんだよ……」
「卑怯で結構。オレはオレの見る目を信じているからな」
どんなに否定されようが、オレはこの見る目を絶対に疑ったりはしない。お前らのほうが見る目がないんだよと笑ってやるさ。
「オレは最強の村人。その最強があんちゃんを最強の商人と認めたんだ、グダグダ言ってんな。目指せばイイんだよ。自分の商売をな」
最強の村人たるオレが味方になってやる。だから最強の商人はオレの味方になってね。他に丸投すると怒るんだもん。あんちゃんだけが味方だよ。
「クズですね」
いえ、村人です。




