1286 到着
「ベー様。あと十キロでバルザイドの町に到着します」
ジャッドの村を出て十六日。結構時間がかかったもんだ。
「三時過ぎか。陽が沈む前には到着できそうだな」
町が近いせいか道も広く、それなりによくなっている。まあ、道をいくのはオレらだけ。ヤンキー災害から落ち着く頃だと思うんだかな?
「はい。先行隊にも報告しましたのですぐに食事にできます」
「あいよ。騒ぎにはなってねーかい?」
先行隊にはシープリット族が一人混ざっている。見たこともねー種族に騒がしくなっても不思議ではねー。
「到着直後は騒ぎにはなりましたが、今は落ち着いているそうです」
それはなにより。先行隊を考えたヤツにボーナスだな。いや、誰だか知らんけど。
ミタさんから報告を受けてすぐ、田んぼ? が現れた。
「……米、ではねーな。なんだ……?」
稲っぽい植物が青々と生っている。
「ミドですね。南の大陸の主食とされてるものです。小さな粒々の実が生って、乾燥させたのちに粉にするんです。まあ、麦みたいなものですね」
いや、麦と言うよりは粟っぽいな。まあ、実物を見たことねーからはっきりとは言えねーけどよ。
「秋に収穫すんのか?」
「春と秋の二回収穫できますね」
南の大陸は今、夏だと思うから収穫はまだ先のようだな。
「ヤンキーの被害がないってことはまだ食えない段階か。大暴走になったのは別の要因か?」
「なぜそう思うの?」
とは委員長さん。
「大体の大暴走は食料があるときかまったくないかのどちらかだ。なのに、ジャングルの中には食い物があり、この植物は食えない。あるときとないときに起きた。まあ、オレたちが住む大陸の法則が南の大陸に当てはまるかはわからんがな」
環境が違えば事情も違う。オレの想像もしない要因があるかもしれない。今はなんとも言えんな。
町に近づくと、ヤンキーに踏み潰されたりしてあちらこちら倒れている。こりゃかなりの収穫減だな。
「手入れする暇もなしか」
田んぼ(仮)に人はいず、雑草が生えている。結構な人が死んだか?
「……酷いものね……」
「弱肉強食な世界はどこもこんなものさ」
世界を探せばいくらでもある光景だ。いちいち感傷に浸るのもメンドクセーわ。
「ルダール。行儀よくしろよ」
「了解です」
オレたちに気がついたようで、町から武装した野郎どもが何十人と出て来た。
「ハヤテ。前に」
結界擬装(老人の姿ね)して隊商の前に出る。
「わしたちはゼルフィング商会の者でベーと申す。町へ入る許しを得たい」
武装した野郎どもの中から役人みたいな男が前に出て来た。
「ザイライヤー族の者から聞いている。食料を持って来たとは本当だろうか?」
「町を潤すほどではないが、塩漬け肉とイモ、果物などがある。町で商売をさせてもらえるなら安く融通させてもらうよ」
先行隊から聞いているだろうからか、武装した野郎どもが道の端によった。
「もちろんだ。町長に代わり歓迎しよう」
「感謝する」
役人みたいな男が先導してくれバルザイドの町へと入った。
前に来たときと同じく町の中は寂れ、空気が重い。食料不足が深刻なのかもしれんな。
「ベー様!」
先行隊のザイライヤー族やシープリット族、ジャッド村の者と思われる男たちが駆け寄って来た。
「ご苦労さん。大丈夫だったかい?」
「はい。大人しくしてましたから」
月読を与えた……なんだっけ?
「ラドリーさんですよ」
いつもありがとうございます。
「あとはオレが代わるから休んでくれ。なんなら村に戻ってもイイぞ。しばらく町に滞在するんでな」
「いえ、残ります。活躍の場を逃したくないので」
なにやらあったみたいだな。
まったく、オレはゆったりまったりスローなライフを送りたいだけなのに、弱肉強食な世界はそれを許してくれねー。誰か世界を征服して平和にしてくんねーかな~。
「今まさに世界を征服しようとする村人がここにいますけどね」
オレは誰かが築いた平和の下で生きるのを目標とした村人です。
「さあ、荷物を降ろせ。商売を始めるぞ!」
世界征服うんぬんより商売だ。この町にゼルフィング商会ありと示すぞ。




