1287 人買い
食料不足とは聞いてたが、聞いてた以上に不足しているようだ。
「まあ、餓死者が出てないのが救いか」
「なぜ救いなの?」
オレの一人言を聞いた委員長さんが尋ねてきた。
「餓死者が出るってことは町として崩壊してるってことだ。そこから自力で復帰するのは至難。大体は滅ぶものさ」
大暴走でのことなら滅び一直線だろうよ。
「町のヤツにはワリーが、つけ入る側としては好機だな」
なにもないときに町を掌握するには手間も時間もかかる。食料でつけ入れるなら安いもんだぜ。
「……たちの悪い犯罪者の思考ね……」
なぜか悪いほうに見られるオレ。誰一人不幸にしてないのに……。
「不幸にはしてませんが、過労にしてますけどね」
それはそれぞれの仕事配分が悪い。オレは失敗しても間違ってもサボっても叱咤しない。自由自主を尊重する雇い主です。
ジャッド村の者も喜んで働いてくれ、うちのメイドも笑顔で働いている。これのどこか犯罪者なんでしょうね?
「それでやっていけるのが不思議でしかたがないわ」
「フッ。わかるように精進するんだな」
いずれ大図書館を背負う一人となるのだ、人心掌握は必須だぜ。
「べー様。食料が半分を切りました」
と、ミタさんからの報告。まあ、荷車数台分で町一つを賄えるわけがない。
「どうするのよ?」
「それは町を仕切るヤツの出方次第だな」
食料はイニシアチブを握るため下準備。まあ、相手がどうしようもないアホだと無駄に終わるがな。
「まあ、勇者ちゃんを受け入れ、大暴走から町を守ったヤツならすぐにやって来るさ」
「あなたは先見の眼でも持っているの?」
「先見の眼がなくても過去を知り、今を見て、人を知り、情勢を鑑みれば未来を予測できるもんだよ」
まあ、人生は予測不能で一寸先は闇だ。どんなに備えても不可抗力なことはあるものもの。過信せず傲慢にならず、石橋を叩いて生きましょう、だ。
「……なにも考えず爆走してるように見えるんですがね……」
感じて動くことは多々ありますが、考えなしではないからね。本当だからね。
それから一時間で用意した食料は完売。普通の隊商なら一財産だろうな。
「ミタさん。食事を用意してやって」
ここは、町の広場でオレたちしかいないので場所は使い放題。盆踊りができそうだ。
「べー。少しよいか?」
姿が見えなかったエース的オネーサマが顕れた。どこいってたのよ?
「人を買った。荷車を使わせてもらってよいか?」
ん? 人を買った?
「ザイライヤー族は外から受け入れる一族ですよ」
あ、ああ。そう言やそうだったな。すっかり忘れてたわ。
「構わんよ。なんなら先に帰っててもいいぜ。オレらはしばらくいるからよ」
オレは勇者ちゃんたちを追わなくちゃいかんからな。
「わかった。帰らせてもらう」
「護衛はいるかい?」
「……何人かつけてもらえると助かる」
いらないと言わないだけ世間を知ったかな?
「ルダール、頼むよ」
「では、五人ほどつけておきます」
ザイライヤーのオネーサマ方が六歳くらいの女の子を十人くらい荷車に乗せた。
「結構、人が死んだらしいな」
女の子がいるなら男の子もいるはず。孤児があれだけと思えないから百人くらいいそうだ。
ん~。町の規模から人口は四千人くらいか? その数から百人も孤児が出たら二、三百人は死んでるっぽいな。まあ、想像でしかないがよ。
「魔女もあんな感じかい?」
委員長さんや他の魔女の表情が冷たい。暗い過去を思い出さないようにしてるのかな?
「そうね」
と、短い答え。語りたくはない、か。
「自分を変えるのは自分にしかできねーぜ」
委員長さんの心の中は委員長さんにしかわからない。が、その表情は不満顔だ。鬱屈した感情をすっきりしたいのなら自ら動くしかねーぜ。
「……そうね……」
また短く答えてどこかへといってしまった。
「ドレミ。警護してくれ」
あの様子じゃ周りに目がいってねー。悪いおじさんに絡まれたら困るからドレミに見ててもらおう。
「イエス、マイロード」
「ドレミさん、久しぶりの出番ですね」
誰への説明だよ?
「べー様の言葉を借りたら大きな友達にですよ」
なんだろう、この幽霊は? 変な電波でも受信してんじゃないだろうな?
「よくわかりませんが、失礼なことを言っているのはわかります」
失礼なこと毎回言ってるのはあなたですよね?
「べー様。町長と名乗る方がお会いしたいそうです」
やれやれ、やっと来たか。行動力がない町長さんだよ。
「あいよ。通してくれ」
さてと。交渉開始といきますか。




