1285 魔闘術
「殲滅技が一つ、村人鉄拳!」
ワーガーの鱗にあんぱんーち。七割くらいの力で砕けてしまった。
「弱っ!」
仮にも竜種だろうにオレのパンチで粉々とか弱すぎだろう。
「あなたが非常識なだけよ!」
なぜか委員長さんに怒鳴られた。
「オレくらいのヤツならいくらでもいるよ」
A級冒険者ならこのくらいの芸当はできる。まあ、結界を使えば飛竜の鱗でも粉々にできるけどよ。
「べー様。我らもやっていいですか?」
鉄拳カイザーを与えた……なんだっけ? 灰色の毛を持ったヤツ?
「バンドラーさんですよ」
カンニング幽霊さん、サンキューです。
「おう。やってみやってみ。あ、ただの力技にしろよ」
鱗を結界で固定してやり、バンドラーにやらした。
強度的には白銀綱のほうが負けてるかも知れんが、結界を纏わせているので百倍は硬い。バンドラーに筋力があれば割ることくらいはできるだろうよ。
「はい! ──鉄拳!」
オレの読み通り、鱗を割ることができた。
「な」
と、委員長さんに証明してみせた。
「……いや、あなたが作った武器を使ってやられても……」
「別に魔力を使ってもできるよ。魔闘術って知ってるかい?」
「魔闘術? いえ、知らないわ」
「まあ、とある獣人に伝わる技だからな、帝国に伝わってなくてもしょうがねーか」
ダリエラ──元赤き迅雷の一人、虎獣人族に伝わる格闘技だ。
「魔闘術ならワーガーの鱗くらいは粉々にできるぜ」
「なんでも知ってる村人ね」
「知らんことのほうが多いよ」
だからこの世はおもしろい。人生に潤いを与えてくれるぜ。
「魔闘衣を与えた……」
「シザーニさんです」
「……シザーニなら魔闘術を使えるんじゃねーかな? 魔大陸出身者なら魔力があるからな」
魔力を増幅する結界を施してある。ギア5まで出したらオレの全力くらいにはなるんじゃねーかな?
「べー様、それは本当ですか?」
たぶん、シザーニが前に出て来た。
「ギア3にして魔力を拳に集中させてみな。魔力の流れがわかると思うから」
ダリエラの魔力の流れをトレースして結界を創った。人それぞれ魔力の波長(?)は違っても魔の元? 質? まあ、魔の根本は変わらない。その変わらないものを感じ取って流れをトレースしたのだ。
「ギア3」
シザーニが拳を握り締め、魔力を拳に集中させた。
「魔力の流れがわかるか?」
「……はい。今までにないくらい魔力の流れがわかります……」
わかるのか。おそらくシザーニの才能か無意識に使ってたからわかったんだろう。親父殿は何日かかかったからな。
「それを何度かやれば魔闘衣を纏わなくても魔力を流し、体を覆うことができてワーガーの鱗くらい粉砕できるようになるさ」
まあ、すぐには無理だろうが、一年もやればできんじゃねーのかな? テキトーでワリーけどよ。
「それはわたしたちもできるかしら?」
「できるとは思うが、魔女は魔術をガンバったほうがイイと思うぜ。魔闘術は戦闘術だからな。体を動かすのが苦手なヤツには宝の持ち腐れだよ」
バリラもやってみたが、運動神経が鈍くて使いこなせなかった。めんどくさいと言ってすぐに止めたよ。
「まあ、それでも覚えたいって言うなら魔闘衣を一つやるよ。試してみな」
無限鞄から魔闘衣のネックレスを出して委員長さんに渡した。ちょっと仕掛けを足して。
「いいの? シープリット族が命をかけて勝ち取ったものなのに」
「オレはあんたらを叡知の魔女さんから預かった。なら、オレの判断と責任であんたたちにたくさん学ばせるだけさ」
あちらに預けた魔族をどう扱うかは叡知の魔女さん次第。好きなように学ばさせればイイさ。
「楽しみだな。叡知の魔女さんがあいつらをどう成長させるかがな」
長生きした成果を見せてもらおうじゃないか。再会するのが今から楽しみでしょうがないぜ。クク。
「……あなた、本当に怖いもの知らずね……」
「その怖いものに挑まなければ見えない世界がある。委員長さんは怯えて見えるものだけしか見ないで満足できるのか?」
挑むような目で委員長さんを見る。
「……ま、満足なんかしないわ!」
挑むような目で見返して来る。
「フフ。それでこそ次の世代を背負う魔女だ。オレのところにいる間はたくさん学ばせてやるよ」
世界観が五、六回はひっくり返るくらいな。
「……この方は人を育てちゃ絶対にダメな人だ……」
オレ、人を育てるには定評がある村人なんですけど!




