1212 利用する気満々です
さながら難民キャンプって感じだな。
オレが考える以上に湖の中は悪い状況のようになってるようだ。
「……淡水人魚は終わってんな……」
逆によく生き残ってると感心するわ。この狭い生存圏で生きるとか苦行でしかねーよ。
「それなのに助けるんですか?」
「人魚が暮らすところは水が綺麗なんだよ」
海もそうだが、水魔法に特化した種族なだけに水を浄化させる力があるのだ。
「綺麗な水ってのは万金に値するもの。ヤオヨロズに欲しい種族さ」
本当ならバイブラストで会ったダーティーさんに取りなしてもらいたかったのだが、あちらもあちらで大変なご様子。縁が重なるまでは放置でイイやろう。
「二百人くらいクレイン湖に移住してくれると助かるんだがな」
南大陸と北大陸では気候が違うし水温も違う。移住したら体調を悪くするかも知れない。移住するなら覚悟してもらわんとならんだろうな。
「移住してくれるんじゃないですか? このままだと死んでしまいそうですし」
死ぬくらいなら、そうだろうな。オレだって死ぬくらいなら恥も外聞も放り投げて逃げ出すわ。
「ってか、人魚の子どもって初めて見たわ」
見た目、十三、四歳くらいの人魚が何人かいた。
人魚の成長は早く、二、三年で成体(見た目、十七、八歳)になり、ゆっくりと成長してゆき、三十歳前後で止まる。
「わたしも初めて見ました。なんなんでしょうね?」
種の違いか環境の違いか、まあ、探究は学者かなにかに任せればイイさ。オレはそこまで興味はねー。生きてんならそれでよし、だ。
やがて腹が満ちた人魚たちは湖の中に消えていった。
「薄情な人たちですね」
「信頼は一日にして成らず、さ」
食いもんで縛るか恩で縛るか。利用させてもらう身としてはどちらでも構わねー。慈善でやってるわけじゃねーんだしな。
「顔と言葉が合ってませんよ」
おっと。優しい顔優しい顔っと。にぱー。
「……もう好きにしてください……」
幽霊様からの許可、いただきました~。まあ、だからなんだって話だけど!
「ミタさん。野菜、間に合う?」
百人以上来て、結構な量を食い、家族にと抱えるほど持っていった。遠慮なしやな。
「問題ありません。カイナーズホームとも連絡を密にしてますので」
問題なくやってる方々に感謝の敬礼を。
夜も深くなったのでリクライニングチェアでお休みなさい。少し寝坊して起きると、また人魚が集まっていた。
「つーか、増えてね?」
軽く二百人は超えてる。もしかして湖の中は秩序崩壊してんのか?
「ミタさん。食わしてやってくれ」
食料配布をメイドさんたちに任せ、オレはその様子を眺める。使えそうな人材がいないかを、な。
この湖に住む人魚の文化や社会体制は遅れている。まあ、それは前世の記憶があるから感じることであり、今の時代を考えたらそれほどではないだろう。もっと田舎にいけば人魚と似たようなところはいっぱいあるだろうさ。
それでも人として優秀な者はいて、性格のよい者、気遣いのできる者、秩序を守ろうとする者、感謝する者がいるのだ。我も我もでは世紀末より酷い状況になるだろうよ。
「ミタさん。あいつとあいつ、あとあいつをよく見ててくれや。ゼルフィング家に取り込むからよ」
「使用人として雇うおつもりですか?」
「ああ。ゼルフィング家で教育してクレイン湖やバイブラストにいってもらう。なんならミタさんの故郷にもいってもらってもイイぜ」
ミタさんの故郷の湖も結構な広さがあった。水を浄化してくれるなら魚を放流してとかも可能になるだろう。まあ、まだ皮算用だけどよ。
「わかりました。よく注意して人選します」
ミタさんのやる気スイッチがオンされました。暴走しない程度にガンバってくださいませ。
さすがにこれは丸投げはできないのでオレも人魚たちの行動を観察した。




