1050 メンヘラ
ハイ、いつものようにサラリと流して出発進行! ベッタベタなクラーケンを排除していきましょ~。
「いや、クラーケン多いわ! ってか、ここはモンスターの巣窟かよ!」
オレの突っ込みに答える者なし。皆さん、ドンドンパンパン虐殺ですわ~。
うん。コーヒーにしよう。
炬燵に入り、三百六十度クラーケンに囲まれて飲むコーヒーの無味無臭なことよ。あー胃がいてー!
「あれね、美味しいんだよ」
「ぴー」
「びー」
「ふふ。可愛いですね」
炬燵の上でなにやら会話する三匹の竜。和むわ~。
皆は忘れているだろうが、オレのベストの内ポケットにはピータとビーダって言う地竜がいるんだぜ。
あ、それと、オレの背後に憑いてる幽霊のこと、覚えてる? ごっめ~ん! オレ、姿を現すまで完全無欠に忘れてた~。あ、可愛い発言はレイコさんだよ~。
「べーって最近、心が弱くなってない? 前はもっとバカだったのに」
アハハ。三百六十度クラーケンに囲まれて、虐殺している者たちを前にして平然としているメルヘンに言われたくないよね。
「見てたら食べたくなっちゃた」
「ぴー?」
「びー?」
「あれは別腹だよ」
ふふ。なに言ってるかわかんねーけど、和むわ~。
「あ、べー様。クラーケンにも魔石はありますよ」
ヨッシャー! 回収じゃ回収っ! すべて残らず回収じゃー!
あらよっ! こらよっ! どっこいしょー! で、死屍累々なクラーケンを回収。生きてたらゴニョゴニョ(表現規制)。死んだら資源。命のリサイクルを致しましょ~。
「……こうして海は死んでいくのね……」
なにかメルヘンがメンヘラのご様子ですが、そんなふうになるときもあるのでしょう。
さすがにデカさがデカさなので、秘技、結界捌き! で微塵切り。結界に閉じ込めて無限鞄へ。魔石は魔力の指輪に吸い込ませる。
「全部は入らないか」
容量とかあるんだ。まあ、そう使うわけじゃないし、残りは無限鞄へと入れておこう。
「ねぇねぇ、あたち、クラーケン食べたいの」
ウパ子がクラーケンをねだってきた。あ、食いたいとか言ってたね。
野球のボール大の肉塊を出して、四センチくらいのウパ子の前に置いた。
「わーい!」
と、喜びながら肉塊へと食らいついた。
「意外と強靭なアゴしてんだな」
「見た目はこれですけど、シュゼンヴィールは竜ですからね。噛む力は尋常じゃないですよ」
レイコ教授もご存知でしたか。
「ウパ子はクラーケンは怖くないのか?」
デカさは同じだし、クラーケンのほうが捕食者っぽいのだが。
「シュゼンヴィールは昔、暴食竜として恐れられていたんですよ。しかも、魚人や人魚も食べるので、大々的な討伐が行われて滅びの種とされています。ウパ子さんの見た目や態度からは想像できないでしょうが」
確かに想像はできんな。これが竜ってことが。
「でも、シュゼンヴィールは海を豊かにするのも事実で、シュゼンヴィールがいる海は生き物が豊富なんです」
で、最後に食われていれば世話ねーな。
「ウパ子ってメスなの?」
「シュゼンヴィールに雌雄はありませんよ」
「雌雄同体か。まあ、海の生き物には多いってハルヤール将軍が言ってたしな、珍しくないか」
この世界の生き物を理解しようとしたら万年単位でかかりそうだな。
「ぴー!」
「びー!」
なにやらピータとビーダが鳴き出した。お前らはしゃべらんの?
いやまあ、こいつらまでしゃべり出したら収集がつかなくなるので、そのままでいてください。
「ウパ子さんを見ていたらお腹空いたのではないですか?」
そう言えば、最近出てこなかったからエサくれてなかったっけ。それともこっそり出て食ってたのかな?
「腹減ったのか、お前ら?」
「ぴー!」
「びー!」
そうだ、こんにゃろーとばかりに鳴く二匹。なら、島の草木でも食ってもらうか。元のサイズ……はどのくらいだったっけ?
まあ、デカくして食ってもらうか。開拓の手間を省けるし。
「ミタさん。適当なところでクルーザーを島につけてくれや」
「畏まりました」
島には化け物がいないことを願いながら、クルーザーは島へと向かった。
「フリ?」
「違います!」
メンヘラメルヘンは黙らっしゃい。島にはなにもいーまーせーんっ!




