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村人転生~最強のスローライフ  作者: タカハシあん
十歳スタート

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1048 癒されたい

「そうだ。現実逃避しよう!」


 炬燵に戻り、海水混じりのコーヒーを飲む。あーしょっぺー。


「……清々しいまでに言い切ったわね……」


 ハイ、言い切りましたがなにか? オレは雄大な海を見ながらしょっぺーコーヒーを飲みたいんだよ。


「ベー様。そんな海水なんて飲んだら体を壊しますよ」


 ミタさんに、しょっぺーコーヒーを取り上げられ、なぜか二リットルのペットボトルを突っ込まれ、強制的に水を飲まされた。


 ゴボゴボゴボゴボ──って死ぬわ! 溺れさす気か! 


「失礼します。ふんっ!」


 と、五トンのものを持っても平気なお腹に衝撃が。


 胃の中の水がオエー。霞む視界に虹が見えた。


「汚いわね」


「ベー様。現実はしっかり見てください」


 そんな正論いらねーんだよ! つーか、乱暴な君に言われたくないよ。オレ、君の雇い主だよね? あと、そこのメルヘン、水をかけないで!


 クソ! オレの扱い雑過ぎ! もうちょっと優しくして!


「ほら、ベー様。現実ですよ」


 パイルダーオンしてきたメルヘンに、強制的に現実へと向けられた。


 なんでそんなに現実に引き戻すのよ? このまま逃げ切ったらイイじゃん。そう言う運命だったと思えばイイじゃん。オレの物語になんら支障はないんだからさ……。


「ほら、ちゃんと見る!」


 向けられた視線の先にはつぶらな瞳を持つ、ウーパールーパーっぽいなにかがいた。


「世の中には不思議な生き物がいるものね」


 お前が言うなと、全身全霊をかけて突っ込みたいが、アレを見ながら突っ込んでも冷笑されるだけ。マジで不思議な生き物なんだもん……。


 はぁ~。これがモンスター映画ならハラハラドキドキの末に、やっとモンスターを倒し、エンディングでさらなるモンスターが! って展開だろうに、ここはメルヘンあり、SFあり、お笑いありのファンタジー。


 いや、お笑いってなんだよ! オレの人生、いつも真剣勝負。ハラハラドキドキーーはモンスター映画だな。じゃなくて! クソ! 笑わずにはいられない人生だよ、こん畜生かっ!


「……ベー様……」


 バチバチとミタさんが握るものが青白く光る。


「見てるよ! 心の整理をしてんだよ!」


 あなた、本当にオレのメイドなの!? あの出会った頃のあなたに会いたいです!


 ぢぐじょう! なんでオレなんだよ。他が対処すりゃイイじゃねーか。


「ほら、早くしなさいよ。泣きそうな顔してるよ」


 泣きそうなのはこっちだわ、クソったれが。


 ため息一つ吐き、こちらを、いや、なぜかオレを見詰めるウーパールーパーっぽいものを見る。


 ……そう言やこの似たような状況、前にもあったな……。


 状況は似ていても相手が違うだけで、こうも心の重い出会いになるもんなんだな。モコモコガールに会いてーよ。


 いや、もうモコモコじゃなくなったが、あっちのほうが目にも心にも優しい仕様になっている。今度、変獣してもらって荒んだ心を癒してもらおうっと。


「よくよく見ると、愛嬌のある顔よね」


 よくよく見えてたのは二百メートル先から。画面越しだったらオレもそう思うよ。だが、ウーパールーパーっぽいものとの距離は三十メートル。失笑しか出てこねーよ。


 岩の陰に隠れるようにこちらを見るウーパールーパーっぽい生き物。水槽の中でやってたら写真に収めたいところだが、現実では映像に残して千年後に残したいよ。きっと貴重な資料となることだろうよ。


 ……千年後に人類がいたら、だけどよ……。


「よし、いけ!」


 と、ほへーと眺めているプリッつあんをつかみ、ウーパールーパーっぽい生き物に投げ放った──が、ブーメランも真っ青な感じで戻ってきて、額にドロップキックをかましやがった。


 キュルキュルと、ウーパールーパーっぽい生き物の腹が鳴いた。


 鳴るんだ、とか思わず感心してしまう。


「お腹空いてるみたいね。なに食べるのかしら?」


 お前らを食ってやるー! と襲ってきてくれたら容赦なく天に送ってやるところだが、全力で人畜無害を出されたら殺すこともできない。やったら悪魔だよ。


「……魚、食べたいでし……」


 あらやだ奥さん、ウーパールーパーっぽい生き物がしゃべりましたわよ。ウフフ。


 とかパニックになるのはオレだけ。他の方は冷静に、当然のように受け止めてます。アハハ!


「可愛い声ね」


「そうですね」


 ウーパールーパーっぽい生き物がしゃべることにはコメントなしですか。まあ、しゃべる生き物、いっぱいいるからね! 今さらだよね! ギャハハハ!


 

「ベー、魚よ」


 持ってねーよ。オレはド○えもんじゃねーんだからよ。


「わたしが持ってます」


 と、なぜか鮎に似た魚を出すミタさん。なぜに川魚なの?


「すみません。わたしの無限鞄は生き物が入らないので」


 それはオレの無限鞄もだよ。つーか、理由になってねーよ。いや、どうしても知りたいわけじゃねーけどさ。


 魚を受け取り、ウーパールーパーっぽい生き物の口に合うようデカくし、結界皿に乗せて差し出した。


 にょるんと触手っぽいものが体から出て魚をつかんで頭から丸噛り。イイ食いっぷりで。


「お代わりでし!」


「ベー、魚よ」


「同じでいいですかね」


 誰もウーパールーパーっぽい生き物が『お代わり』と言っても不思議に感じないこの不思議。ミステリーハンターに探してきてもらいてーな。


 明鏡止水な心でミタさんが出した魚を受け取り、デカくして結界皿に乗せる。


「美味しい~!」


 全長約二十メートル。ウーパールーパーっぽい生き物じゃなかったら萌えたのに。


 あ、確かアリザの妹がいたはず。あの子で心を癒そうっと。


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