1047 コーヒーが不味い
「……え、えーと、なに、この虐殺は……?」
炬燵につかりながら平和を噛み砕いていたら、カイナが哨戒艇のようなものに乗って現れた。
「知らんわ」
オレが止める暇なく銃撃を始めたんだからよ。
「やっぱり海はスゴいのが住んでるよね」
それを虐殺する魔族のほうがスゴいわ。あと、巨大化させたメルヘンも。
「どうするのこれ? これ以上の肉食のがよって来るんじゃない?」
「お前の威圧で蹴散らせよ」
少しはそのアホみたいな魔力を有効利用しやがれ。
「たぶん、それをやったら死の海になっちゃうと思う。前に一度やって、しばらく草木が生えなかったからさ」
うん。こいつは勇者に滅ぼしてもらおう。
「お前は放射能か。しっかり管理してくれよな」
爆発するなら宇宙で爆発してくれよ。
「大丈夫。魔力はカイナーズホームに変換してるからさ」
それはそれで心配な気がしないでもないが、草木が生えなくなるよりはマシか。いや、マシか!?
「それより、これ、どうするの?」
「魔大陸にでも運んで大地の肥やしにでもしろ」
生きてればエリナのエサにもできるが、死んでては肉としか使い道はない。だが、海竜や魚はもう腐るほどある。それ以上は不良在庫だわ。
「そうだね。そろそろ緑化もしないとならないし、肥料にするか。魔石はどうする? 飛空船のエネルギーになると思うけど」
「あ、そうだったな」
そうだよ。海の生き物には魔石があるんだった。魔石がない地域に住んでると、そう言うのに疎くなるぜ。
「そっちで使わないならくれや。ちょっと使いたいことがあるからよ」
「また、なにかやる気?」
なんだよ、その呆れたような目は? お前のほうが呆れたことやってんだろうが!
「魔道具販売だよ。ってか、今から魔大陸で魔石のある生き物を増やしていけ。そして、ヤオヨロズ国に輸出しろ」
命はエリナに。魔石はおれに。今からそんなサイクルを作っておくのもイイだろう。
「……次から次と、よくそんなアイデアが出るよね……」
「思いつきなら誰でもできるよ」
そのサイクルに持っていく者が賞賛されるべきだ。婦人とか婦人とか……婦人、ガンバって! そして、オレを見捨てないでね!
「その思いつきで救われている者にしたら、ベーの言葉を蔑ろにはできないよ。ヤオヨロズ国がいい事例じゃない。あれで救われた命は万単位でいるよ」
「まあ、それと同じくらい命がなくなってるがな」
主に海の命が。まあ、人魚も凶暴な生き物がいなくなれば棲息域が拡大するのだから反論もできない。すべての命が報われない世界は無常だぜ。
「そうだね。食われないようがんばりましょう、だ」
先に行きたきゃ強者たれ。弱者は食われるだけだ。
「それじゃ、すべて魔大陸に運ぶね。魔石はミタさんに渡しておくから」
「任せるよ」
オレの今生、任せることで成り立ってると言っても過言ではない。よきにはからえ、だ。
カイナが消えると、四方に浮いていた死屍累々も一斉に消えた。
「……自分の能力をどう使おうが勝手だが、もうちょっと有効な使い方しやがれ……」
まあ、あそこまで無駄に使うのも見事だとは思うけどよ。
「ところで、プリッつあん。上のお方はいつまで巨大化してるの?」
ブンブンバンバンうるさいんですけど。
「まだ血が滾ってるから、もうしばらくはあのままなんじゃない」
狂戦士か! つーか、呪われてんじゃねーの? 変な銃が混ざってたか?
「飽きるまで放っておけばいいわよ。弾がなくなれば降りてくるでしょう」
ったく。休まる暇もねーな。
「ミタさん、島一周の続き、よろしく」
出発三十分もしないで目的を忘れそうになるとか、この島こそが呪われてんのかもな。
「ベー様! あれを!」
はいはい、わかってますって。フラグでしょ。オレが言ったからでしょ。呪われてるのはオレだって言いたいんでしょ。わかってるって。クソ!
もう諦めの境地で炬燵から出て、ミタさんが指差す方向を見る。
………………。
…………。
……。
「また、ベタな展開がきたもんだな」
ため息一つ吐き、炬燵に戻る。あ、ミタさん、コーヒーお願い。
すぐに出されるコーヒーを飲み、次の展開に向けて一休みすることにした。
はぁ~。コーヒーが不味い……。




