1038 有効利用
「あの戦艦、ハルナと言うらしいよ」
突然、そんなことを言うカイナ。
「……言うらしいってことは、あの未来的戦艦に誰か乗っていたってことか? それとも艦名でも刻まれていたのか?」
「乗っていた者から聞いた」
多分、尋問して、ってことだろう。
「明らかに転生者がかかわってんな」
前世と同じ和名の国があるならハルナって名前も不思議ではねーが、あれだけの戦いをした国の者が無名ってのもおかしい。もっと世間に知られているはずだ。
「おれもそう思うけど、ちょっと不明なところがあるんだよね……」
自分の中で整理するためか、新たなブランデーに手を伸ばし、蓋を外して一気飲みをした。
「……乗っていたヤツらは東の大陸出身者が八割、中央大陸出身者が二割、艦長は南の大陸出身者みたいなんだ」
ちなみに、中央大陸とはオレたちが住んでいる大陸だ。よく知らんが、昔からそう呼ばれているし、他の大陸のヤツらもそう呼んでいるのだ。
「……海賊、か……?」
「当人たちは『アフラヴィーラ』と名乗ってた。意味わかる?」
「確か、南の大陸で信仰されている十六いる神の一人だったと思う。よくは知らん」
雷神ヒィブラと闘神イグリは有名らしく、よくラーシュの手紙に書いてあった。アフラヴィーラも書いてあったと記憶するが、なんの神かは覚えてねー。
「……そう言えば、南の大陸の王子さまと文通してんだっけね……」
それこそ、そう言えば、だが、勇者ちゃんは南の大陸に着いたかな? 日数的には着いてるんだが、あの勇者ちゃんだから脇道寄り道どんと来い。気ままに行こうぜ、だからな~。
「手下を見捨てるとはいただけねーな」
海賊に友情愛情なんて求めるほうが間違ってはいるが、頭なら最後まで船を守りやがれ。
「統率力はあったみたいだけど、部下を信頼するタイプじゃなかったみたい。いろいろ隠していることがあったみたいだから」
「厄介な相手ではあるが、執念ってものを感じなかったからまだマシか」
まあ、あるかも知れないが、見極めがよすぎて勝機のラインが見えるのは欠点だな。一番厄介なのは勝機のラインが曖昧なヤツだ。
「ベーに心理戦では挑まないようにするよ」
「なんでオレと戦うこと前提なんだよ。オレは皆仲良く、平和に行こうぜって主義だわ」
なんの生産性もなければ、ただ消費するだけの行為なんて考えるのも時間の浪費だわ。そんなことするくらいならコーヒーの一杯でも飲んだほうが有意義だわ。
「そんで、乗ってた連中はどうするんだ?」
ってか、ここは、どこかの国に属してる海なのか?
「どこかの島に放置するよ。持って帰っても処分に困るからね。でも、あの戦艦はもらう」
まあ、親父さんの話では、指名手配されてなければ海賊は海へポイらしいから激甘な処置だろう。放置される海賊がどう思うかは知らんけどな。
「ハルナって戦艦が海賊なら、この辺は船がよく通るってことか?」
「航路の一つではあるらしいよ。よく通るかはわからないけど」
「この諸島は、どこの国にも所属してねーよな?」
親父さんからそんな話は聞かなかった。
「してないんじゃない? 海流が激しいところもあるし、暮らしやすい島もないっぽいから」
つまり、所有したもの勝ちってことか。
今は冬にもかかわらず、気温は二十度くらい。島の木々も南国っぽいものだった。
台風とかもありそうだが、木々を見る限り、人が住めないような規模ではない感じだ。
「どこの国でもなく誰の島でもない、か。なら、オレがもらっても構わんな」
「なにもない島だよ?」
「なにもないのなら、なんでもある島にしたらイイさ。働き手はいるんだからよ」
しかも過酷に扱っても、どこからも文句のこない働き手が、な。
「ハルナって戦艦に乗っていた海賊はオレがもらうよ」
命は有効利用しないと、な。




