1037 ラスボスな村人
食いに食い、飲みに飲んだカーチェが眠りについた。
「ミタさん。運んでやって」
カーチェを結界で包み込み、宙に浮かべる。
「クルーザーの部屋で構いませんか?」
「空いてるなら構わんよ」
そうだな。酒臭いままタケルの側に置くのは顰蹙ものか。そこでよろしこ。
運ばれて行かれるカーチェを見送っていると、赤鬼のメイドさんが現れ、テーブルを片付けてくれた。
「あんがとさん」
「なにかお持ちしますか?」
なにも食わなかったから訊いてきたのだろう。つーか、どっから見てるの!?
「いらない。あとは勝手にするから休んでイイよ」
まあ、言ったところで守るとは思えんが、こちらから言わなければ出てくることもなかろう。
「はい。休ませていただきます」
一礼して去って行った。
出したテーブルと椅子を片付け、また炬燵や座椅子を出す。あと、向かい側に座椅子も用意する。
炬燵に浸かり、潜水艦でなんかやってるフミさんたちを眺める。
「……直っている感じはしねーな……」
タケルと潜水艦は繋がっている。それがどんなものかは知らないが、どちらも存在しているのならどちらも死んではいないってことだ。
と言っても、今は供給ストップでもしてるのだろう。でなければ空腹で目覚めてるだろうからな。
ぼんやりながめていたら、突然視界が遮られた。なによ?
視界を広げると、パイロットスーツ姿のカイナがいた。
「ご苦労さん。終わったのかい?」
無限鞄から各種酒やグラス、氷を出す。勝手に飲んでくれ。
「ううん。まだまだだよ。とてもじゃないけど、おれたちの手には負えない感じさ」
グラスに氷を入れ、焼酎を選んで注いだ。
「まあ、タケルの潜水艦をああまでする未来的戦艦だからな」
「あれのこと知ってるの?」
「知らん。けど、間違いなく転生者がかかわっているのは確かだろうな。ただ、あの戦い方を見てると、戦い慣れた感じがしたな」
どこがどうとは言えないが、すぐにオレを標的に変えた。なんの情報もなく、単体でくるオレにだ。
「アレを操ってたのは間違いなく勘が鋭く、状況判断もイイ。負けるとわかったら逃げることを躊躇わない。そんなことができる転生者はいな……なんだよ?」
なにか呆れた顔をしてオレを指差すカイナ。意味わからんことすんな。
「あ、いや、ベーの言いたいことはわかるよ。おれも戦い慣れたヤツだなって思ったから。ただ、あれは反則。おれは戦いでは前世での武器だけと決めてるのに、思わず使っちゃうばかりか防がれた。あれ、おれの魔力に匹敵するものだ」
それはまた、最悪だな。カイナみたいなのがいるとか人類滅亡へのカウントダウンか?
「……あまり、心配してない顔だね……」
「まあ、対抗できる力があるんだから、そう悲観する必要もなかろう」
バイブラストのフュワール・レワロで知った天地崩壊とか、この世界はいろいろ危機的な状況に見舞われている。それを知れば今回のことなど局地的災害って感じだろうよ。
「ベーならどう戦うの?」
「陸に降りたところを後ろからぶん殴るな」
あの未来的戦艦内で自給自足できようが、あれをやっていたのは人か、人の考えを持った者だ。なら、必ず外に出て来る。ならば、そのときに倒せばイイ。
「おれみたいのだったら?」
「人外五人組を唆して騙し討ちするかな?」
そうするのは難しいだろうが、カイナを倒すのはそんなに難しいことじゃない。こいつが人の心を失わない限りはな。
「……ベーを敵にしないように気をつけるよ……」
「別に敵になっても構わんぜ。なんなら世界征服とかやっちゃえよ。オレは従順に、忠信に働くぜ」
にっこり微笑んでやると、これってないくらいしかめっ面になるカイナ。
「ベー、お前もか! って油断したところを後ろから刺されちゃうんでしょう。やだよ、そんな終わり方。ベーが裏に回ったらなにされるかわかんないもの」
「しないしない。そんなことしないよ。ただ、世界平和のためにがんばってもらうだけさ」
寝る間も惜しんで、オレのために世界を平和にしてください。一緒にがんばられる仲間はオレが用意してやるからさ。
「殺されるほうがまだマシだよ! 絶対、過労死させられる!」
チッ。根性のねー魔王だ。そこは死ぬ気で権力維持に務めやがれ。
「ベーが最悪のラスボスだよ」
失敬な。オレは日の下で堂々と、心晴れやかに生きる村人だわ。
「まあ、オレたちがどう生きようがオレたちの勝手。お互い、好きなように生きればイイさ。すべてはタケルが目を覚ましてからだ」
これはタケルの問題であり、オレたちが勝手に決めてイイことではねー。どうするかはタケルが決めることだ。
「タケルは起きるの?」
「起きなきゃぶん殴って起こすまでさ」
仲間を置いて死ぬなんてこと、オレが許さねーよ。




