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愛し子な女子高生(リメイク中)  作者: 沽雨ぴえろ
第3章  王宮編
42/45

追い返して、近寄られて、恐怖する。


テリアのチナに対する接し方で勘違いしてるかもですが、テリアは恋心抱いてませんよ(・∀・)



↑なにかの予防線(?)笑笑



それでは、どーぞー♡




ばさっ ばさっ ばさっ

ばさばさばさばさばさっ


くぇーけけけけけっ

くわーくわっくわっくわっくわっくわっ

あ゛ーっあ゛ーっ

ちゅぴーちっちっちっ




な、何で今このタイミングであんな団体になってこっち来るかなぁあああ?!いやいやいや、来るなよ!……ぁあああぁ!テリアだけじゃなく殿下までそっち見たよ!!まうダメだこれ、どうにでもなれやーー!!!



 チナの心の叫びは虚しく、魔鳥の軍隊は空の一部を黒く染め、叫びながら王宮へと近付いていた。

 魔鳥たちの声は魔調師以外には聞こえない。普通の喧しい叫び声に聞こえるだろう。が、魔調師は違う。魔調師風に変換すると、



『チーナチーナチナチナチナチナー♪』



『今いくよチナー♡』



『ボスも来るっすからねー』



『チナりーん♡あはん♡』



である。魔調師からしたら羨ましいくらいの好かれ具合だ。

 三番目くらいに耳に届いたセリフに、チナは思わず目を見張ってしまう。

 「ボス」。それを頭の中で何度も反芻するが、いくら考えてもこの現実は変わらない。



「いや、いや、いやいやいやいやいや…!」



「?なにをぶつぶつと言っている?」



 せめてもの救いは、特別魔調師の才能があるチナだからこそ聞こえたということだろうか。チナほどその才に秀でたものでなければ、この距離では聞こえはしない。



「あかん、あかんねんでー鳥さんやー…!こっち来ちゃだーめよー~?」



 未だ肩を掴まれながら、チナは両腕をつきだし、引きつった顔でいやいをするように顔を横に振った。

 が、この距離から囁き声くらいに小さい声が届くわけもなく、返って、



ぴっギョギュエッきぇきー?!ピピピッちっちっ!くわっ、けっけけー!!!



『えっなんかチナが言ったみたいなんだけど?!ヤバいヤバい聞き逃しちゃった!皆、いっそげ~!!!』



と言うように、全く逆方向に作用してしまう始末。一気に飛んでくるスピードが上がったのは傍目から見ても明らかだった。それにチナは更に顔をひきつらせるのであった。



「──おいチナ!!」



「ふぇげぶっ」



 びっくりし過ぎて舌を噛むという失態を犯しながらも、名を呼んだ相手へと顔を向ける。その相手に、びくりと肩を掴む兵士の手が震えたのがわかった。

 相手は、シルバだった。



「なん」



「止めてこい」



「でし……え?」



「止めてこい」



「……………え?」



 言いかけるチナを遮り、びっと親指で後ろの魔鳥を指差すシルバ。いきなりのことですぐに頭に入らない様子のチナに、シルバは白い歯を輝かせ、もう一度、丁寧に言った。



「あの、魔鳥の団体を、お前が、きっちりと、止めて、こい」



「わ、私が」



「お前しかいねぇだろ?魔鳥と仲良いの。さらわれて送り返してくれた仲だろ?」



 いつの間にかはなされていた肩を、今度はシルバに掴まれる。

 痛いくらいに掴まれて、頷くしかなくなる。というか、確かに自分のせいだと分かっているので、チナはもともと行く気だったのだが。



「よし。…テリア、一部穴あけられるか?チナが出れるくらいの」



 テリアは今までずっと魔鳥を見ていたのか、ぐりんと首をこちらに回し、ガラス玉のような目をこちらに向けた。



「…出来るよ」



「頼んだぞ。よしじゃあ──」



「送ってあげるよ」



「……は?」



 シルバはどうやら空を飛ぶ魔獣を出させようとしたらしい。が、その前にテリアが意味不明のことを言い出した。



「えっ…と…テリア?それは、どーゆー…」



 嫌な勘がするのはけしてチナだけではなかっただろう。

 テリアはにこにこと笑いながらもう一度繰り返した。



「送ってあげるよ。空に、僕の魔術で」




紐なしバンジー逆バージョンですかねこれは?!いやいやいやいやいや、お断りですよお断り!!安全装置もなにもないんだろきっとよ!おい!おっそろしーな!!




「やるよね?」



「ありがとう本当にね全くもって嬉しいなぁー!!」



 身の危険を感じると、人間何でも出来るものだ。

 チナ、紐なしバンジー逆バージョン、決定。



「お、おぉ…」



 シルバも顔をひきつらせて、頷く。そして直ぐに場所を退いたところを見ると、この場所で、タイミングはテリアに任せ、今すぐにでもチナを送り出すようだ。恐らく、穴をあけるのも時間などかからないのだろう。

 テリアは首を少し傾け、チナに言った。








「いってらっしゃいだね」








「えっ?っひぇっへぇぇえええええぇえええええええっ???!!!!」









「………鬼畜な…」



 なんの前触れもなく、チナを送り出したテリアだった。ガクンと体を折り曲げながら魔鳥に向かっていくチナを見て、そう呟くのは仕方がない。


 次第にテリアたちから見て、チナが親指の爪ほどの小ささになったとき、チナの周りに一瞬、縁が紫のガラスが割れたような跡が浮かび上がる。チナがそこを越えたとたん、それはすぐに消えたが、多くが目にしただろう。テリアの、穴など無い完璧な防御魔術を。

 その完璧さに感嘆の吐息をはく宮廷人たちだが、チナにそんな余裕など無い。



「ぎぃえぇええぇえええっ!!!」



 どんな魔鳥よりも魔鳥らしい叫び声をしながら、チナは回転しつつ魔鳥の軍隊に向かって飛んでいた。



「あびぇややややややややややぁあっ!!!」



 ぐんぐんと近づくチナと魔鳥。一瞬、勢いのついたチナを魔鳥たちは止めてくれないのでは、という考えがチナの中をよぎったが、そんなものは杞憂だった。



「たっ、たすけっ…!!止めてててててえええええあぁあああ!!」



『!!!!コレチナだぁー!!』



『どーやってとめる?』



『あれだよ、ぽんぽんぽーん、だよ!!』



『よーっし、いくよチナ!!』



 助けて、と願えば、魔鳥たちはそれに応えてくれる。…やり方は、勝手に決められたが。



『よいさー!!』



『おいさー!!』



『どっ…こいさー!!』



「おんぶっ……ひあやっ……ぉおおぉおおっ?!」



 三匹の二メートルくらいの魔鳥が、スピードのでたチナの威力を殺そうとして、チナを一匹が斜めに軌道をずらしながら弾き、二匹目が更に軌道をずらしながら弾き、三匹目が上へと打ち上げた。

 チナは霰もない声を上げながら、各段に落ちたスピードで空を舞う。そして、ポスン、と一匹の魔鳥の上へと落ちた。



『大丈夫ーチナー?』



「あ、あぁ…っだいひょーぶようん。目ぇ回ってるだけだからさ…」



『よーかったー!チナ、じゃー遊ぼー?』



「…え?」



『きょーはチナと遊ぶために来たのー』



 そう言って、その魔鳥を中心に他の魔鳥たちがぐるぐると回り始めた。



『チナー?』



『遊ぼうよ』



『チナ』



『チナ』



『チナ』



 そのためだけに、来たのだ。魔鳥たちは。そのことに呆気にとられながらも、混乱を押さえ、チナは最大の問題を片づけようとした。



「え?え、ちょ、待って。わかった。まずそれは置いておこう」



『えー?』



「まずは、あんたらのボスから!え、こっち来てんだっけ…?!」



『んー来てるー』



「…タラス?」



 空の魔獣を統べる魔鳥、ファルもこちらに来ていることを確認したチナは、ひとまず重大な任務をタラスにやらせようと思い、タラスを呼ぶ。



『へぇーい。久しぶりっすチナさん』



「はいはい。ちょっとお使い頼まれてくんない?」



『お使いっすか?しますっすよー』



 相変わらずチャラい話し方をするタラスだ。チナはにっこりに微笑んで、魔鳥たちが飛んできた方向を指さし、爆弾を投入する。



「あんた今すぐ帰んないと、これから名前呼ばないよ?って、ファルに言ってきて?」



 がじょーん。まさにそんな効果音が合うであろう空気が魔鳥のなかに流れた。

 そして、葛藤する。




これ、言わなかったら嫌われるんじゃね…?え、まじで?やべぇまじ株下がる…!!!だけど自分が行ったら蹴られそうだよ?!




 そして、心は一つとなり、皆一様にタラスを見つめるのだ。




任せたぞ☆



 彼らは生け贄を決めたのだった。














────────────────

───────────



「…お、帰ってきたぞ?」



 一匹の魔鳥に乗り、チナは帰ってきた。心底良い笑顔と共に。



「追い返したのか?」



 どうとでも解釈の出来る言い方に、ほんの少し眉を寄せたチナだったが、すぐにそんな顔は押し隠し、にこやかに言った。



「もちろん!なんか、私と遊びたくて来たみたいです。でも、お互い理解し合ったので、もうこんな事はないですよ」



 それを聞いて、惜しいことをしたな、と思うシルバであったが、チナがここにいるかぎり、これからもこのようなことはあるだろう、と次に期待をすることにした。

 シルバは宝石の様に美しい、エメラルドグリーンの瞳を細くして、チナから目をそらした。



「そうか」



 それからシルバは、この場に集まってしまった宮廷人たちの収拾をつけようとして、少し離れた人混みへと入っていってしまった。

 チナはそれを見送り、ふっと肩の力を抜く。やはり相手は殿下、必要以上に緊張をしてしまうのだろう。体に残った緊張を出すように、もう一度溜息をしようとして、止めた。



「そう言えばさ」



 テリアが話しかけてきたからだ。



「はい?」



 これは敬語には入らないだろうと、チナは返事をする。

 テリアはじっとチナを送り出した防御魔術の部分を見つめた後、ゆっくりとチナの方へと顔を向けた。



ゾワリ。



 いつかの時に似た、あの寒気が、チナの背を這い上がった。

 ガラス玉の様な目が、チナを見つめる。



「最近ね、侵入者がいるみたいなんだよね」



どくり。



 チナの心臓が、強く鼓動する。その侵入者に、覚えがあったから。

 そうと知ってか、知らずか、テリアはまん丸い目をチナに向けて眇めた。



「魔力が凄いんだよね、多分。僕の防御魔術を突破出来るんだから」



 さく さく さく



 チナの目の前に来て、止まる。いつの間にか、野次馬たちやシルバは居なくなっていた。なにをされても、助けは呼べない。



「思うんだよね…」



 びくりと肩を跳ね上げなかったチナは、体を強ばらせるだけにとどめた。

 それすらも、相手には分かっているのだろうけれど。











「僕から、逃げれると思ってるのかな?」


















 その後、チナはどうやって部屋に戻ったかは覚えていない。

 テリアの目はガラス玉のように透明で美しいけれど。何を思っているか、全く分からなくて。






 きれいなガラス玉と違って、テリアの目は恐ろしかった。






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