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愛し子な女子高生(リメイク中)  作者: 沽雨ぴえろ
第3章  王宮編
40/45

閑話*実は攻められてました~赤い男 解凍~

か、書き足しました!!!


なぜシルバがチナとすぐ仲良くできたのか、シルバの葛藤を書きました(・ω・)


あと、なんか、シルバが認める前にめちゃ重大な事件起こってます…。本編でやっときゃよかった(´-`)


くっそ長いけど、どうぞ楽しんで…(´・ω・`)


シルバ目線ですが、ロイとレシーもあります。



 薄暗い、部屋の中。赤い髪をした男が暗い赤色の布に身をくるみ、頭を抱えている。

 ぶつぶつと何かを呟く。



 俺は認めない。認めない。…認めない。


 あの魔調師が、俺よりもテリアに認められてるなんて、認めない。俺の方が長い間過ごしているのに。


 俺は、俺はっ……!!



 彼はくしゃりと髪を握りしめ、目を強く瞑った。最近はチナがどのようにしてテリアに気に入られたのか、ソレを知るためによく魔獣舎に行くようになっていた。しかし、それでも、分からなかった。

 シルバはチナを認めまいと頭を抱え、さらに縮こまろうとする。が。



ぎひぃっけかけかけけけけけか




 奇妙な気味の悪い音が、空から聞こえてきた。それに一瞬固まり、顔を上げるシルバ。


 

 ……あ゛?



 シルバは目つきを鋭くして空中を睨む。



 いきなりなんだよ、俺が悩んでるときに、こんなヘンテコな音だしてんの!



 どこまでも自己中な殿下である。


 薄暗い部屋に差し込む、唯一のカーテンの隙間からの光。カーテンは外からの光を遮るようにある。まるでシルバに光を近付けないようにしているかのように。なぜか、カーテンが重ぐるしく感じられた。しかし、その向こうからその奇妙な音は聞こえてくる。

 シルバはイライラとしながら体を起こし、足音を忍ばせてカーテンのなびくバルコニーに近づく。


 

ぎひぃっけかけかけけけけかかかか



 音が一際大きく聞こえてくる。シルバは眉を盛大にしかめながらシャッとカーテンを引く。

 薄暗い部屋に朝日が差し込むことで、初めてシルバは夜が明けていたことに気付いた。あまりの眩しさに目を細め、音の聞こえる青い空を仰ぐ。と、その時。

 黒い影がバルコニーを覆った。


 シルバは一瞬、訳が分からなかった。あの黒い影が。この距離でバルコニーを影で黒く染めるとは、それ程の大きさということだ。

 その影が少し離れたところで、シルバははっ、と気を取り直した。


 あの生き物を飼っているのは、確か───


思い出しかけたと同時に扉が尋常ではない強さで叩かれた。



ダンダンダンッ



「シルバ様っ!!」



 切羽詰まったレシーの声だった。

 返事をする前に勢い良く開かれる。そこにはやはりレシーが立っていた。

 声同様の切羽詰まった表情を見てただ事ではないことを察する。 



「何があった!」



「あ、青の国から奇襲です!!」



「なっ!!」



 そして、完全に思い出した。

 あの生き物は今最大の魔獣。そして、あれは青の国にしかいないはずの、ドラゴンの血族、ワイバーン。

 ドラゴンよりも小さく、他の魔獣よりも遥かに大きい魔獣。

 シルバは一瞬にして思考を切り替え、きびきびと動き出した。



「直ちに陛下に伝達をしろ!魔調隊と騎士団の魔獣騎隊にも伝達!!国民への警報は俺が出しておく!!」



「はっ」



 レシーが厳しい顔のまま踵を返す。シルバはもう一度バルコニーに出て、手のひらに魔法で赤い玉を作り出し、そのまま上へと上げる。それとともに光の玉が勢い良く上昇。

 一定の高さまであがると、シルバはギュッと手を握った。



ルォオオオオオオオオッ



 変わった爆発音が響き渡ったとたん、城下に広がる街がざわめきだった。


 『警報弾』と呼ばれるソレは、他国、もしくは巨大な魔獣からの攻撃で自国が多大な損害を与えられる場合に城から打ち出されるものだ。

 それはめったに打ち出されるものでは無い。だからこそ、民は慌てる。


 シルバは他国──青の国からの侵略に苛立ちを覚えていた。なぜ、今なのか。いや、ソレよりも、なぜこんな事をしたのか。それが分からなかった。

 だからこそ、苛ついた。分からなければならない自分が分からないことに、頭の回らない自分に。



「くそっ……なんで青の国がっ…」



 ほんの少し遠のいた黒い巨体を睨む。



 なぜ。なぜ。なぜ。先ほどからそればかりが脳裏に浮かんでは消え、浮かんでは消えていった。

 四つの国しか存在しない中、国と国との争いは建国してからほんの数度、数えられるくらいのものだった。そのたびに他の国が間に入り、仲を保ってきた。

 ここ数百年は争いも無く、至って平和だったのだ。なのに、いきなりの敵襲。

 シルバはバルコニーの手すりを強くつかんだ。

 シルバは国の防衛に関する最高官の役職についている。王の手助けをしたいから、国を守りたいから、彼は自ら志願したのだ。それゆえ、彼は誰よりも早く気付かなければならなかった。シルバは膨大な魔力を持っている。あれほどの大きさなど、容易く感知出来るはずだった。


 けれど、出来なかった。それほどまでに青の国が魔法に優れていると言うことだ。もしくは、チナとのことで、シルバがすっかり不抜けてしまったか、だ。



「───くそっ!!」



 シルバはそう叫ぶと、ガンッと手すりを殴りつけた。手から血が出るほど強く殴ったが、そんなものは無視した。

 シルバは悔しそうに顔を歪め、自分も戦いに身を投じるため、その場を後にした。

 行く先は決まっている。自分も空に行くために、魔獣舎へと行くのだ。

 チナいる、魔獣舎に。

















──────────────

────────



「魔調隊につぐ!青の国からの敵襲!早急に空と地の魔獣を!!」



 焦った声を出して、その兵士は俺に言った。いやいや、知ってるよそんなこと。俺たちは魔調師だぞ?すでに魔獣たちから言われてるよ。それに、殿下も来られるんだからな、魔獣の選別を慎重にしなくては。



「あぁ、分かってる!もうすでに空の魔獣たちは三十用意できてる!」



「了解!では離陸装備を頼む!」



 そう言って兵士はここを後にした。あ、兵士ってのは、なんつーの?騎士の称号を持ってないヤツ、みたいな?



「おい、お前ら!暇なヤツは魔獣の装備に回ってくれ!!」



「はいっ!!」



 数人が俺に返事を返す。そいつらは魔調師の素質が俺みたいに高くないから、レベルが高い魔獣を扱えない。だから、こういう時は装備に回る。装備の時はじっとしてるよう言いつけてあるからな。

 ………………あいつが。


 俺はふっ、と少し離れたところで地の魔獣を選別してるチナを見た。

 あいつがここに来てから、魔獣たちが騒がしくなった。理由は教えてくれないけど、この感じはきっと、俺よりも素質を持っているんだろう。だから、装備の間は~つうのを言えたんだろうな。



「フォクセラたち!今から出番だけど、平気?」



『チナ、チナ。大丈夫だよ!僕たちは素早いから!』



『チナ、僕たちどのくらい行けばいい?』



 ………本当すげぇよ。魔獣が自ら協力してる。しかも何だよ、コレ。



『チナ、ワイバーンは一匹じゃないよ!』



『チナ、もう一匹キタ!』



『チナ大丈夫?』



『チナ、チナ』



『チナ』



 チナのことを心配してやがる。ワイバーンがもう一匹来たって………なに?



「おいおい…もう一匹…?」



 俺は装備された魔獣を離陸場に連れて行きながら、額に手をやった。

 あんなデカいのが、二匹もいる。そのことに頭痛がしてきた。とにかく、ワイバーンの特性を知らなきゃ、即落とされるだろうな…。

 騎士たちにいっとかねぇと。



「空の魔獣、三十、装備完了だ!」



「了解!…おい!魔獣に乗れるヤツはさっさ乗れ!」



 騎士たちが乗り始める。そこで俺が、ワイバーンの特性を言おうとした、その時だった。



「すいませぇぇぇぇええーん!!!」










─────────────

─────────



「すいませぇぇぇぇええーん!!!」



 この耳障りな声は、ヤツしかいない。チナだ。チナは地の魔獣を引き連れ、先頭を走るフォクセラに跨がりこちらに走ってきていた。



「な、なんだ?!」



 もちろんのこと、騎士たちはビックリしていて。おそらくこの前のチナとシルバとのことがあったからだろう。緊急事態にも関わらず、彼らはどうしようかと少しまごついた。

 そんな彼らに気づかず、シルバがそこにいるのにも気づかず、チナはフォクセラからするりと降りて、騎士たちに言い放った。



「ワイバーンを攻撃しないでください!」



 はあ?


 誰もが思っただろう。いや、俺もバリバリ思ってる。こいつはなにを言い出すんだよ?国に、侵入してきたんだぞ?青の国が、赤の国に、無断で。



 シルバはギリリと拳を握り締めた。自国を攻められてなにも感じないのかと、怒鳴りたくなった。

 しかしそんなシルバに気づかず、チナは続けた。



「あいつらは自分の意志に反してここにいます。ワイバーンは悪くない」



 そんなの、なぜ分かる?シルバはなおもチナを睨み続けた。しかしいつまでも激情しているわけにも行かない。もしかしたら大きな戦争へと繋がるのかも知れないのだ。

 シルバは気を落ち着かせようと、チナから目を離した。すると丁度目に入ったのが、ロイだった。

 ロイの顔を見て、シルバは眉を寄せた。


 なぜ、そんな驚いた顔をしている?…チナか?チナの何に対して…


 ロイの視線をたどれば、先はチナだった。だがシルバには思い当たる節がなかった。更に眉を寄せる、その時に、ついにロイは驚きの混じった声で叫んだ。



「お前…この距離でワイバーンの声が聞こえるのか?!」



 そこにいた者たち、全員が固まった。シルバでさえも。

 ロイは『この距離で』と言ったのだ。つまりは、普通ならば聞こえないということだ。……………………ロイさえも。

 チナは怪訝そうにしたあと、こくりと頷き、話を続けた。



「ワイバーンは仲間意識が強いそうです。一人になると見せかけて罠を仕掛けてくるでしょう。でも、それは向こうの魔調師たちの策略だと思われます」



 チナが真面目なことを言うのを聞いて、シルバはきつく握った手を緩めた。

 が。



「……って言ってます、この子たちが」



「………はぁん?」



 ロイが思わず低い声を出す。まるで騎士たちの心の声を代弁しているかのようだった。


 シルバは胡散臭そうにチナを見つめ、遂に口を開こうとしたそのタイミングで。

 タイムリミットが告げられた。



「迂回したワイバーンが後から来たワイバーンと共にこちらへ向かっています!直ぐに向かってください!」



 兵士がそう叫び、返事も聞かずに去ってしまった。

 シルバは小さく舌打ちをすると、ほかの騎士とともに魔獣に乗り込んだのだった。



















────────────────

──────────



 暗い部屋の中、一人の男が豪奢なソファに座り、一人酒を区揺らせていた。

 酒のせいか、ぼんやりとしてシルバは宙を見つめていた。



 ………言う、通りだった…。



 シルバは昼のことを思い返していた。シルバは飛ぶことのできる魔獣に跨がり、ワイバーンと対峙していた。

 初め、シルバはチナの言うことを無視しようと決めていた。しかし、実際ワイバーンの近くに行くと、そうは行かなかった。


 魔獣が、勝手に動いたのだ。しかもその動きは、チナが言っていたものと同じだった。

 ワイバーンを傷つけずに、罠にハマらないように、魔獣たちは動き回り相手を混乱させた。その結果として、案外あっさりと青の国は引いていった。

 シルバとしてはその引き際の良さに不安を覚えたが、それよりもチナのことだった。


 ワイバーンを退かせて帰ってくると、そこには大勢の魔調師とロイがいた。

 偶然か、シルバの乗った魔獣はロイの近くに降り立った。そのまま魔獣から降りて、ロイに手綱を渡す。

 シルバがそこを去ろうとしたとき、ロイはシルバにそっと囁いた。



「凄いですよね、チナ」



「…あ?」



「これだけの魔獣を手懐けて、遠くの声も聞いて。彼女は逸材ですよ」



 それがどうした、とシルバは言おうと口を開く。が、ロイに先を越された。



「チナ、魔獣に命令したことないんですよ」



「?!」



 思わず目をヒンむいてしまった。魔調師が命令をしない、つまりは調教しないのだ。

 シルバが唖然としていると、さらにそれに追い打ちをかけるかのようにして、ロイは続けた。



「今回の、魔獣の動き。あれ、魔獣たちが勝手にやったことなんですよ」



「なっ……!!」



 まさに、驚愕。その一言につきるものだった。


 命令をしていない…?しかも、今回の動きは魔獣の独断?そんなことあるのか…?!例え…あるとしても。なぜそんなことを…


 いつのまにだろうか。シルバは愕然とした様子のままで、いつの間にか自分の部屋にまで帰ってきていた。

 帰ってきてもなお、彼はロイの言葉を考えていた。そして気づくのだ。


 チナはテリアに認められるほどの才能がある、と。

 魔獣たちが独断で動いたのはチナの為であるということ。それしか無いのだ。


 そして今に至るのだ。チナの才能に気付いてしまった。テリアに認められるほどのものであるということに。


 だからこそ、彼はどこかすっきりとしていた。彼は昼のことを思い出し、苦笑いするとすっと立ち上がった。

 暗い部屋の中。カーテンは閉まっている。シルバは迷うことなくバルコニーへと続くカーテンへ歩み寄った。

 朝のように窓は開いていなく、カーテンは靡いてはいなかったが、シルバにとって、そのカーテンは朝と同じように思えた。

 だから。彼は勢い良くカーテンを引き、夜の月明かりを部屋へと招き入れた。重ぐるしいカーテンなど、要らない。

 仄かな白い光が、シルバを照らす。部屋を照らすと同時に、まるでシルバのチナへの暗い気持ちを洗い流すかのように。

 窓越しに月を見上げ、明日も魔獣舎に行こうと決め、シルバは柔らかく微笑んだ。















 シルバの部屋からそれほど離れていない部屋に、レシーはいた。

 主であるシルバ同様、一人静かに月を見上げていた。



「…『チナ』…これほどの才能があるとは……」










 声には出さず、ゆっくりと唇を動かす。





──────逃がすものか。







 闇の中、彼は一人、静かに笑った。







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