仲良くなった後に魔王降臨
おひさです(*´ω`*)
ぐだってますが、まあよんでやってください(。ノωノ)
チナがクビにされる心配はなかった。なぜならもともとチナは赤の国の所有物ではないのだから。さらに言えば、チナは調教の難しいとされるグリフォンをも懐かせると言う魔調師の才能をすでに発揮している。
グリフォンを懐かせるのは至難のワザだ。チナの能力は、捨てるには勿体無い。クビなど、もってのほかだ。
そういう理由があってクビを回避したチナ。
そして今、シルバに胸ぐらを捕まれた日からすでに一ヶ月が過ぎようとしていた、ある日のことである。
はいはいはいはいはーい。ちょーっとお待ちよ。これどういう状況?え、え?
からっとした晴れの日、爽やかな風が吹く。一見のどかなそんな日に。魔獣舎の一角には、外とは違い冷たいブリザードが吹き荒れていた。
「そうか、ところでテリア。お前最近ここに入り浸ってないか?」
「別に?そう言うわけではないけど。って言うか殿下、なに?なんか用でもあるの?」
「いや別に。ただ最近ここに入り浸ってないかと思ったまでだが?」
「だからそうでもないってば。…ねぇ、ほんとになんなの?」
「用がなければ話しかけてはいけないのかそうなのかお前の中では?」
「ねえ殿下堪忍袋って知ってるかな?ボク怒るよ?」
シルバとテリアがなぜか言い合っていた。と言うか、なぜここにいるのだろうか。それすらもわからない。謎だ。
あれからテリアは、一週間に一回くらいはここに来るようになっていた。シルバはそれを言いたいのだろう。というか、言っているのだろう。
「あ、そう言えば、ねぇ、チナ」
「フォイ!」
あ、やべ、フォイじゃねぇや。って言うかいきなり声かけんなよ!!ビックリするわ!!
「何でしょうか、テリア様」
「テリアでいいってば」
いやいやいや、無理ですよちょっと!わかってんの、わかってんの、お前!後ろ!殿下のオーラがやばいの醸し出してんだって!!ってか殿下なんでっ?!どこに不機嫌要素あったし?!
「今度強い魔獣を連れてくることになってるんだよねぇ。…ねぇ、しっかりやってよね?」
無言の圧力なんて入りません。美味しくないですよくそテリアめ!!
とか思いつつも、表面上はにこやかに接するチナ。片手に箒を持ちながらもテリアに笑いかけ、頭を下げる。
「誠心誠意、働かせていただきます、テリア様」
「テリアでいいってば。ねぇ、きいてるの?人の話さぁ、聞いてんの君?」
「いえ、でも、そのような無礼な」
「ねぇ、命令だよ?ボクが言ってるんだけど。ねぇ、命令だよ、ついでに敬語も止めなよ、鬱陶しい」
ハードル上がったぁぁぁぁぁぁっ?!なんてこったい!!って、いやぁあああっ、シルバ殿下やべええええええええっ!!いやでもここでテリアの言うとおりにしちゃうとさらに眼光が…!!
「あ、あのテリ」
「命令、聞くよね?」
「うん分かった!!!」
私も我が身が可愛いのです。まる。殿下、ごめんよ、目の前の危機で手一杯目一杯なのよ……!!
何を考えているのか全く分からない紫の真ん丸い目に見つめられ、チナは引きつった笑いを浮かべながら、がくがくと首を縦に振った。
テリアは満足そうに頷くと、更に口を開いた。
「今度来る魔獣、凶暴だからね、しっかり調教してよ」
「え、嫌だ」
「え、仕事しなよ君。何言ってんの?」
ほぼ反射的に、チナは首を横に振っていた。
『調教』、と言う言葉を、チナは好いていなかった。自分の意志とは関係なく、ねじ伏せるようにして服従させる。そんなこと出来るはずもなかった。
しかしそんなチナの気持ちを知らないテリアはよく分からない笑みを深め、シルバは怪訝そうに眉を寄せた。
「自分の役職に背くというのか、チナ」
不機嫌そうにチナを睨みながら言葉を吐き出すシルバに、はっとしたかのようにチナは目を丸くし、急いで首を振る。
「まさか!ただ、私は調教なんてしたくないだけで、」
「魔調師は魔獣調教師の略称だ。魔調師は魔獣を調教するのが仕事だ。調教したくない、というのはそれは仕事の放棄と同じことだ」
「でも、魔獣たちは調教しなくても言うことを聞いてくれる!調教なんてしなくても、魔獣たちはいい子だ!!」
冷静に判断をするシルバに、チナは何ともいえない苛立ちを覚え、つい敬語を使わずに怒鳴ってしまった。言い終わったあとに、チナは思った。
あ…………終わったな………。
チナは途端に青くなると、ノアもびっくりの早さで頭を下げた。
あまりの早さに目の前に立つシルバがたじろぐのを感じた。
「も、申し訳ありませ…!!」
この世界は、残酷だ。日本みたいに、平和じゃない。殺しなんて当たり前で、差別も当たり前で。それが普通で。だからこそ分かる。不敬罪で殺されることも、普通て、当たり前なのだと。
ここに来るまえはノアがいた。常に、そばに。けれど、今となっては会えるのは夜中だけ。今自分を守れるのは、自分だけ。
手が、震えた。
「…………」
「あ、の……本当に…」
「………、」
テリアの場合、『命令』として敬語を使わされなかった。しかし、今は違う。
シルバがはぁ、と溜息をついた。びくりと体が震えた。
「…チナ、顔を上げろ」
そろり、と顔を上げる。地面から足へ、足から胴へ、胴から胸へ、胸から首へ、首から、顔へ。
ぱちり。
そんな音がしそうなほど、ぴったりと目があった。
深い、深い、エメラルドのような緑。意志の強そうなほの目は、テリアと話していたときのような激しさは無く、八の字に寄った眉とあいまって呆れのような、困惑しているようなものを灯していた。
「別にこれぐらいで罰を与えるほど鬼じゃない。以後気を付けろ」
「あ、は、はい…!」
先ほどとの差に呆気にとられるチナだったが、とりあえず今目の前のことに集中しようと、頭を振った。
「……まあ、今度来る魔獣については、見逃せないけどな。もう一度言うが、魔調師は魔獣を調教するのが仕事だ」
「……はい」
「調教する事がお前の仕事だ。お前は魔獣に調教しなければならない」
ぐっ、と手を握りしめる。爪が内側に食い込むのを感じた。
調教なんて、したくない。そう思っている中、シルバは続ける。
「だが、調教の仕方は魔調師の管轄だ」
「………え」
「魔獣をどの様に調教するか、それはお前に任せる、と言っている」
シルバは顔をしかめながら、ぶっきらぼうにチナに言う。
その意味を理解すると、チナの顔には驚きと、嬉しさが広がった。
ぱしっ
「ありがとうございますっ殿下っ!!」
「は?」
「良い人だったんですね!!」
「おいちょっと待てお前俺が悪いヤツに見えたとでも言いたいのか」
チナはおもむろにシルバの手をつかんだかと思えば、次の瞬間にはぶんぶんと手を上下に振っていた。
自分を守ってくれる存在の魔獣たちを調教しなくてもいい、と言われ、うれしさMAXなのだ。不敬罪も糞もバッチコイ!状態である。
「はい!そう思ってましたよ!!」
「正直すぎるわっ!!」
チナは大真面目に、シルバは苛ついた顔で、互いの顔を見つめ合う。もとい睨み合う。そして一拍おいて──
ぶっははははっ
初めて二人は笑い合ったのだった。
シルバはヒイヒイと笑いながらばしばしとチナの背を叩き、チナもぐふふと笑いながらシルバの腰を叩く。
なぜか一瞬で仲がよくなった二人だった。今までのシルバは何だったのだろうかとしか思いようがない。
二人がしばらく笑い合っていると、ようやくチナが気付いた。
シルバの横から来る物凄い冷気に…!
カチーン、と固まったチナを不思議に思ったシルバが、ふっ、と顔を上げ、同じく固まる。
「ボクのこと忘れるなんて、いい度胸してるよね。ほら、そう思わない?」
魔王、降臨。
私が悪いのかっ?!そんなの、そうなのか?!いや違う!断じて違うぅううう!!!
次くらいに閑話で書きますが、シルバのは嫉妬です。チナの様子に拍子抜けしちゃったんですね、はい。
おー、でも、やっぱりあっさりしすぎですかね…(-ω-;)くふぅ~難しい!!




