恐怖を実感したら震えが止まらない
やっと更新(-ω-;)
面白くないな………
次こそはチナのトークをズバズバ入れるぜっ!!
笑っているような、無表情のような。そんな表情をするテリアはチナが口を開く前に新しい質問を口にする。
「ねぇ、聞こえてないの?……ねぇ」
怖い。
テリアに声をかけられてから、チナの中にある感情はそれだけだった。
怖い怖い怖い。
怖いよ、ノア!
青い顔をして心の中でそう叫ぶ。しかし、テリアが動こうとも話しかけるのを止める気配も無いので、チナは恐る恐るテリアに向き直る。
テリアはあの時と変わらなかった。
異様な魔力と気配も、丸っこくて大きな目も、紫の髪も、何を考えてるのか全くわからないその表情も。テリアはただじっとチナを見つめる。
「君が、新しい魔調師?」
チナは血の気が引いていくのを感じながら、ぎこちなく頷く。テリアは聞いておきながらも興味なさそうに頷いた。
「そ。ねぇ、ロイは?」
「え、」
「僕、彼を捜してるんだよね」
そう言うと、テリアは笑った。口元を歪めるようにして、くいっと口端を上げる。
それを見たチナは、自分でも気付かずに後ずさった。
──君、こっち来てよ。……これ、命令だよ?
あのときと同じ笑い方。興味を持っている証拠。チナは頭の隅でロイを哀れみながらも、考えていた。
テリアだよね…この人。どうしようどうしようどうしよう?今はノアがいない……って言うか会ってないな…じゃなくて、ああ本当にどうするの私。ロイの居場所教える?でもこの人ロイに興味を持ってるみたいだし。ロイが危険な目にあうかもしれない!だから知らぬ存ぜぬで通すとして……今のこの私の状況をどうするかなんだけど。どうしたらいいんだよ?ねぇ、どうしよう?ノアはいない。いたとしても頼れないし……ファルもだめだ、どうするか?………ああああ、ダメだ考えらんないよ!冷や汗が止まらない。悪寒が這い上がってくる。怖い。
テリアを見つめながら様々なことを考えに考え抜いた末、チナはその事を考えてしまった。
怖い。
恐くて恐くてたまらない。チナは微かに震えながら首をゆるゆると横に振った。
テリアはそれを見てまた興味なさそうに頷き、獣舎をぐるりと見回した。
何やってんだよこの人!早く帰って。これ以上ここにいないで。
テリアが見渡し終えると、その曖昧な表情でチナを見つめ直す。
暫くそれが続くと、チナの冷や汗に気がついたのか、青くなっているチナに向かって言う。
「ロイ居ないんだ。へえ……。分かったよ」
チナは引きつった顔をして謝る。
「上司がいなくてすいません」
「別に。……ねぇ君」
「……はい」
テリアは服で口元を隠しながら首を傾げ、チナの顔をのぞき込む。びくりと体を跳ねさせるチナ。テリアはそれを気にせず、チナに尋ねた。
「グリフォンに気に入れられたって、本当なの?」
何を今更。だから魔調師に成れたというのに。チナはやや眉を寄せて、頷く。
テリアは目をすっと細めた。
「君、よく魔獣に好かれるんだってね」
「…は…い」
何だろう、いやな予感がする。早く、早くロイ。もう居場所教えるとかそんなの構ってらんないよ。早く、早く。誰でもいい。だから、この会話を打ち切ってくれよ。誰か。
知っていても止めないだろうし気付いているかも怪しいが、チナが怯えていることに気付かずに、テリアはさらに尋ねる。
「ウォリアに跨がるヤツ、知らない?きっと魔調師だと思うんだよね」
嫌な予感とは当たるもの。チナはその言葉を聞いて目眩を感じたが、悟られないように急いで首を横に振る。テリアはほんの少しだけ俯く。
怖がりながらも不思議に思い、覗き込む。そして、恐怖に目を見張る。
「………そうか」
俯いて返事をするテリア。しかしチナは聞いてなどいない。俯くことによって見える、その口元から目線が外せなかった。
テリアの口は、端が上がっていた。くいっ、というような小さなものではない。
にたり。そんな擬音が似合うかのような、笑み。目を細めていたのではなく、笑っていた。『あのとき』を思い出して。
それを見たチナは、初めよりも減ってきたかのように感じていた鳥肌が、もう一度一斉に立ち上がるのを感じた。
諦めて、なかった!まだ、興味を持ってる…!
チナの脳裏に、再びあのセリフが蘇ってくる。
──絶対、見つけ出してやる……!
チナは硬直した。青ざめることも、後ずさることも、叫ぶことも、なぜか出来なかった。まるで神経が痺れてしまったかのように、チナはそこに縫い付けられた。
テリアは気になって気になって仕方がない、そんな風に笑いながら、チナに一歩近付いた。
足が動かない。チナはテリアが近付くのを見ているだけだ。
テリアが不気味に笑いながら、二つ目の質問をもう一度問う。
「どうして僕の名前を知っているの?」
「……っ…」
「はっきり言ってよ、ねぇ」
「………あ、の…」
声が出ない。あぁ、だめだ、とチナは心の中で笑った。するとテリアは期限良さそうに笑っていたのを一変させ、無表情になる。
「早く言ってよ。じゃないと、僕、君を──」
──壊しちゃいそう
テリアは最後だけ楽しそうに笑った。こんなことを言われて、話せるだろうか。チナは恐怖からますます声が出なくなった。
「……黙ってるって事は、僕、君を壊してもいいの?いいんでしょ?」
テリアはさも楽しそうにチナに笑いかけると、少し離れて、片手をチナの方に突き出した。死ぬ。しかし足は動かない。チナはテリアの突き出された手を見つめるしかできなかった。
テリアは目を細めて───
「ばいば」
「ただいまー……って、テリアさん!何やってるんですか!!」
救世主が、現れた。
ロイが帰ってきたのだ。驚くような声をあげると、ロイはテリアとチナの間に割り込む。
「……………」
「テリアさん、何やってるんですか。その手を下ろしてください」
「……………で」
「はい……?」
ロイが強い口調でテリアに言う。するとテリアはぼそりと何かを呟く。魔術ではないらしかった。
ロイが怪訝そうに聞き返す。するといきなりテリアは殺気にも似た怒気を露わにする。
「何邪魔してんの?ねぇ、何してんの?見て分からないかなぁ、僕はそこの魔調師を壊すんだけど。ねぇ、何してるの本当に」
「はっ……ぐぅっ………?!」
いきなり苦しみ出すロイ。首元を押さえ、苦しそうに顔をしかめている。
ロイの顔が赤くなるにつれ、テリアからの怒気が強まるのを感じる。
「不愉快だよ、本当、不愉快だ。この前もウォリアに邪魔された……」
「テ、リアさっ……!や、めっ……」
ロイの顔が肌色から赤に、赤から真っ赤に、真っ赤から紫に。そこでやっと、チナは我に返った。
ロイを見て叫び声をあげ、テリアに叫ぶ。
「止めてくださいっ!あなたの名前を知ったのは人づてに聞いたからですよっ!!」
ぴたり
テリアの呟きと動きが止まる。それと同時にロイが勢いよく息を吸い込み、むせかえる。
のろのろとテリアは顔を上げ、チナを見たあと、もごもごと辛うじて聞き取れるくらいの声音で何かを呟いた。
「ウォリア……何処にいるのかな」
執着。それしか浮かばない。しかしこのままだとここにずっといるのではないか、そんな考えが頭をよぎり、チナは心の中でノアに謝り、テリアに話しかけた。
「『黒の森』」
二人がチナを見つめる。
テリアは無表情に、ロイは驚くように。何で知っているんだ、そう言っているかのように目を丸くする。チナはちらりとロイに目を向けたあと、テリアの目を見ず、俯きながら早口でいった。
「私はそのウォリア?に乗っていた人じゃないけど、あの子たちが教えてくれた。でも、他は教えてくれない」
仕方のない嘘だった。しかし、こうするほか道がないように思えた。
テリアはぼうっ、と突っ立っていたが、次第に顔に無表情以外の表情を浮かべる。
「そう。君、名前は?」
「…………チナ、です」
「チナ、ありがとね。これで僕は」
にたり。そうとしか形容がなつかない笑みを浮かべ、踵を返すテリア。言い掛けていた言葉は気になったが、早く去っていってほしかったため、声はかけない。
さくっ さくっ さくっ
テリアが楽しそうに獣舎を出て行く。 完全に姿が見えなくなると、チナはその場に座り込んだ。今更、全身に強烈な震えが襲う。
「………チナ、お前は今日はこれでおしまいだ。明日から仕事だ、今日は帰れ」
咳き込みながらロイは言うと、魔獣の世話をするために奥へと入っていく。
チナはその場にうずくまり、しばらく動かなかった。その間、チナは思った。
ロイが着てくれて、ほんとに良かった。……………あの人は、怖い。




