要るか要らないかは彼次第
グリフォングリフォングーリーフォーーン(・∀・)
最近長い(´-ι_-`)
──一人
そんな感情が、自分の中になだれ込んでくる。
──一人、私は一人だ。誰も信じられない。
悲しい。その気持ちが、心を満たしていく。
側に、いたいと思った。この感情を放つ者の隣に。
──寂しい寂しい。一人は嫌だ。
泣いてはいない。ただ、泣きそうだ。少しでもつついてしまうだけで、守っている殻が砕けてしまいそうだ。
──誰か、側に。私を裏切らない、誰か、信じられる、誰か。私の、側に。
溢れる、溢れる。
『この子』の負の感情が、望の感情が、希望が、願いが、唯一の、願望が。
呼んでる。自分たちを。
直ぐに分かった。『この子』は自分たちを望んでいると。欲していると。そして。
自分たちも、『この子』を望んでいると。欲していると。互いに寄り添いたいと、思い、願い、叫んでいると、しっかりと分かった。
──信じられる、誰か、私の、側に。
あぁ、あぁ、あぁ──────…
呼んでいる。呼んでいる。呼んでいる。
自分たちを、『この子』が。
あぁ、泣かないで、自分たちの可愛い可愛い、子。大丈夫、もう一人じゃないよ。自分たちがいるから。
あぁ、ほら、耳を澄まして。自分たちの仲間が、君の元へ歩み寄っている。
あぁ、ほら、目を凝らして。遠くだけでなく、君の側に。
──誰か。
さぁ、行こうか。
悲しいほどにそれを切望し、愛しいほどにそれを切望する『この子』の元に。
『この子』の側にいたいと切望する、自分たちのために。
名のある者も、名のない者も、飼われている者も、飼われていない者も、皆、『この叫びを放つ子』の元に。
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『遅かったな』
その言葉を聞きながら、臣下たちは目を見張り、青ざめ、それを凝視する。
カシャッ カシャッ カシャッ
ソレが歩く度に、輝く床が削られる。まるで抉るように、溝が幾つも走る。
爪跡だ。
アーノルドはにこやかにチナに笑いかけ、チナから数メートル離れたところで止まった、ソレを連れてきた男に話しかける。
「止められるのだろうな?」
「は、はい…」
チナは冷や汗を掻きつつも、だんだんと冷静になってくる。チナは今のアーノルドと男の短い会話に違和感を覚えた。
何が、止められるんだろう?その返事がいいにしては、弱々しいし……自信無いんだろうなぁ。と言うか、後ろにいるの…なに?なんか影で見えるけど、でかくね?なんで私の後ろにいるの?おかしくね?ってか、私、何しにきたの?
ぶつぶつと呪文のように疑問を口に出していると、いつの間にかチナの目の前にはアーノルドの靴が。
「っ!!」
「そんなに驚くな、チナ。チナ、お前には魔調師の資格が大いに見受けられる。そのため、今からどれだけ魔獣に好かれているかを見ようと思う」
チナはぽかんとしながらアーノルドの説明を聞く。驚いたのも束の間、話しかけてきたと思ったら喋るだけ喋って笑いかけてきたのだから、まぁ仕方ないと言えば仕方ない。
チナが頷くのをみると、アーノルドは片手をあげた。
「───ひぃえぇえっ?!」
その直後、チナの体がふわりと浮かんだのだ。そのまま謁見の間の中心に連れて行かされた、と思った瞬間。
ドサッ
ゴッツ
「いっでぇえええ!!」
落とした。
落ちた衝撃でチナは後ろにひっくり返り、頭を打ったのだ。すごい音と共にチナは品のない叫びをあげ、のたうち回る。涙がちょっとだけ出たが、それも仕方ないことだ。
「いっ………!!おぅっつ……っ!!」
「はは、大丈夫か、チナ」
アーノルドは呑気にチナに声をかけ、男に合図する。
「放て」
「は、はいっ!!」
男とソレも、チナと共に運ばれていたらしい。男がチナの後ろでソレのロープを外す。
カシャッ カシャッ
チナはその音で、やっとそちらに向く。頭の痛さで緊張などとうにどこかへ行ってしまった。
そして、チナはソレを見た瞬間、口を開け瞑目した。
目の前にいたのは、深緑色の鷲の頭にライオンの体、そして鷲の翼と蛇の尾を持つ魔獣───グリフォンだった。
グリフォンは金色の瞳を細め、キュルキュルと唸る。
「あ、んたは──…」
相変わらずぽかんと口を開け、グリフォンを見つめる。そして、チナとグリフォンの目が合う。ばちっと音がしそうなほど、しっかりと。
そして、次の瞬間にはグリフォンはチナの方向へ飛びかかってきた。
「わわわっ!」
「──!テマ!やめろっ!!」
アーノルドが指示を出す前に、男はそう叫んだ。が。それはチナに対しては意味が無かった。
グリフォンは、チナを飛び越えてその向こうに行ったのだ。
チナは瞬時に思い出す。
私たちはここの中心。私の右側の離れたところには王様。私の左側の離れたところにはここに入ってくるための扉。前方には壁。後ろにも──……あれ?壁?違う……後ろには確か──
あと少しで考えがまとまる、そんなときだった。
叫び声が、聞こえたのは。
そうだ!あの太ってたり偉そうな人たちは壁側にいたよ!しゃあ、この叫びは……!
チナがはっ、として後ろを振り向くと、目に入ったのは臣下たちに襲いかかるグリフォンの姿だった。チナはソレを見て、叫びにならない叫び声をあげた。
────────────
チナが考えているとき、すでにグリフォンはチナを飛び越えて、壁側に来ていた。
臣下たちはその場にいた魔術師の防御に守られている。が、それでも失神するものがいるらしい。
「テマ!やめろっ!!テマ!!こっちへ来い!!」
ああ、あの男、たしかロイと言ってたか。あれはグリフォンの世話係だったはず。なぜグリフォンは言うことを聞かない?
いや、それよりも……なぜ、グリフォンはチナを飛び越した?なぜチナを襲わず、遠く防御されている大臣たちを……。
そこまで考えて、アーノルドは小さな悲鳴を聞き取った。そちらを向くと、チナが青い顔をしてグリフォンを見つめている。
………チナは、使い物にならなそうだ。チナが好かれるのは弱小の魔鳥。グリフォンに好かれればそのほかの魔獣に好かれる可能性があったものを……所詮、こんなものか。
アーノルドはチナを少しの間見つめたあと、臣下たちに目を向けた。
パキッと何度か音がする。防御が押されているのだ。ひびのはいる音だろう。
これほどまでに怒りを露わにする理由が知りたくないわけではないが、と呟くアーノルド。今はこの状況をどうするか、それを考えようとした、その時だ。チナが叫んだのは。
「やめろっテマ!!」
グゥルルルルルル…
「テマ、大丈夫だから」
驚くことに、グリフォンは防御にのし掛かるようにしていたその巨体を、チナの言う通りにやめたのだ。
そしてグリフォンは防御の中を睨み付け、渋々と言ったようにチナの元へと歩いていく。
その様子に驚いたのは、臣下たちだけではない。
「……チナ、グリフォンを知っていたのか」
やや顔を強ばらせ、チナに笑いかけるアーノルド。その問いに気まずげに顔をしかめるチナ。その手はせわしなくグリフォンの頭を撫でている。
アーノルドが「ん?」と言うと、チナは観念したかのように話した。
「その……ここに来る前に………って、あぁっ!そう言えば、あの馬は?!」
「……なるほど、スケルニアか。ん?あぁ、スケルニアならほら、そこに」
と、アーノルドが指さす先には、恐怖で未だ引きつった顔をしている臣下たち……の横。
そこにスケルニアはいた。呑気に寝ている。
「…………」
「はは、いやぁ……面白いものを見せてもらったよ」
「はぁ……」
「チナ」
「はい」
アーノルドはにっこりと笑って、話しかけた。その笑みがチナには悪魔のように見えたことは秘密だ。
「ここで働かないか?」
「………………………………………………はい?」
あぁ、マリアさん……私、頑張れそうにないかも………………!!
グリフォン
ライオンの体、蛇の尾、鷲の頭と翼を持つ魔獣。(こちらの世界では他の言い方)




