鳥に拉致されました!
空の王者!
ガカァアアアアっ
「うわっ?!」
「ぎえっ!!」
タラスが嘴を上に向けて叫ぶ。するとどうだろうか。みるみるうちに空が黒く染まり、街に光が射さなくなった。
ギイッギイッギイッ
くえっくえっくえっ
魔鳥だ。空を黒で埋め尽くすほどの魔鳥。タラスのたった一声でこれだけが集まるのは異様だった。
「なに、これ……?!」
「チナ!店にはいるんだよっ」
「マリアさんっ!」
いつの間にかマリアがチナのそばに来ていた。探しに来てくれてらしい。
チナとジョーがマリアの方へ走り出そうとする。だが、チナはぐいっと何かに引っ張られるような違和感がして、後ろを振り返った。
そして驚愕する。
「なっ…タラス?!」
『どこに行くつもり?』
チナのスカートを、タラスが嘴で挟んでいたのだ。こうしている間にも、魔鳥は頭上でさらに増えていく。
いつの間にか周りには人がいない。マリアたちが心配そうに叫びながらこちらを見ている。
「チナッ」
「…離せってば!なんなの?!」
タラスは首を傾げる。
『おれっちたちはチナを迎えに来たんだぜ』
「迎えに……?なんのこと?って、ぎゃわっ?!」
タラスが小さく鳴くと、上に集まっていた魔鳥たちが一斉にチナに向かって降りてきた。
チナの服を嘴やら爪やらに引っ掛け始める。
「や、やめろ!!」
『チナ、おれっちたちは歓迎しますっすよ』
「…は?───っぎぃやぁああああっ!!!」
何を言ってるの?と疑問に思うチナだったが、それはすぐに消え去った。
無理もない。いきなり持ち上げられたのだから。
「いぎゃああああっ!!助けてええええっ!!」
「チナー!!」
チナが連れ去られるのを見て、マリアが叫び声をあげる。
「パンツ、パンツは見えるか?!」
「まて、見えそ…あぁっ!魔鳥が隠しやがったっ」
「あんたらチナを心配しなっ!!チナッ……」
「マ、マリアさん、あっちって、イグリの巣がある方向じゃ……!!」
「チナ、どうか…!!」
どうか無事で、チナ!!
「騎士団に早馬を!!早くっ!!」
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『───』
『──ナ』
『─チナ』
だれか、私を呼んでる─…
ふっ、と目を開けると、そこは見知らぬ天井。
……なんか私、デジャヴ多くないかな。今までで何回目なのさこれ。ふざけんなよ。なに、三回目くらい?デジャヴ経験してる私がわからないってどうなのさ?ある意味すごいよ全く。
『チナ、と言うのか?』
「っ!!」
やっと意識が浮上してきた。呼びかけられて飛び起きる。デジャヴと感じたのは『状況』に。この場所は知らない。
チナは飛び起きると声から遠ざかった。
「…………」
『お前が、チナだな?』
そこにいたのは、巨大な鷲だった。
黒い羽に、光る赤い瞳。目の色だけがノアと違っていた。
その獰猛そうな瞳がチナを見つめる。
どれだけ時間がたってもその鷲は飛びかかりはしなかった。しかし、チナは警戒をとかずに後ろにじりじりと下がる。ノアがいない今、逃げるしかないのだ。
が。
がくっ
「ひあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
木の上だったらしい。チナ、落下中。
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───────────────
ばさっばさっばさっ
「……すいません」
『いや』
巨大な鷲に回収されたチナ。さっきと同じ木の上に連れてこられ、そっ、とおろされる。まるでチナに傷が付かないように、ゆっくりと。
『…お前が、チナだろう?』
「え───」
『何カッコつけてんすかー』
鷲の言葉に返そうとすると、足元から声がしてチナのセリフを遮った。
ちらりと足元を見ると、街中でチナの目の前に降りてきたタラスがそこにいた。
「え、タラス?」
『そっすよー。おれっちタラス。もー、ボス、何カッコつけてんすか?気持ちワリッすよ~』
え、なんだなんだ、このカラス。話し方がチャラッちいぞ、このカラス。ボスってなんだ、この鷲か?
チナが鷲に目線を向けようとすると、その前に鷲が行動を起こした。
『うるっさいわガキィ!オレだってカッコつけてーのっ!!』
「………………うん?」
『っかー!お前がヨケーなこと言うから、もうボロが出ちまったじゃねえか!このクソガキ!!』
「…………ぅんん?!」
威厳がある、と少しは思ったが、違う。これは威厳とはいはない。チナは鷲とタラスの会話を聞きながら、にっこりと笑って話した。
「帰っても良いかな?」
『ダメー。チナはここにいろよ』
軽そうな鷲だから、流れで帰してくれるかもと思ったチナだが、甘かった。理由はわからないが、鷲はここにチナに居てもらいたいらしい。
チナが思いっきり嫌そうな顔をするのを見て、鷲は悲しそうな声色出す。
『だってよ、だってよチナ。オレたちはお前に惹きつけられるんだよ……なあ、居てくれよ、チナ』
─我らはお前の心に惹きつけられる。
ノアの言葉と、目の前の鷲の言葉がかぶる。同じことを言っている。『ノアと同じ』、それだけで否定出来なくなる、拒否出来なくなる。
「私に…惹きつけられる…?」
『チナー、居てくださいっすよ。おれっちたち、チナのこと守りますよ』
『チナ』
目の前の魔鳥を無視することは出来なくなっていたチナ。しかし、同時に街の人々のことも考えていた。何も、被害はないだろうか──。
しかし、口にでたのは違う言葉だった。
「────ノア」
チナを守ってくれる存在の名を、今。
タラス
黒い鳥。地球のカラスによく似ている。軽快な喋り方をする。
イグリ
黒い巨大な鷲。ウォリアは陸の魔獣を統べる魔獣なら、イグリは空の魔獣を統べる魔獣。(魔鳥)
魔鳥、チャライッす!(・∀・)




