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女王陛下の宝飾職人  作者: Jun
第三章

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8 王配殿下の奮闘と驚きの事実

見つけてくださってありがとうございます。

「ふうん。じゃあ、ダニエル・クロフトが公爵位を継いだ時、新しくカンラの町の代官になったマルサリス男爵が悪党だったのね。領主が新しく公爵になったばかりで、しかも何か不祥事が起こった家だから、手が回らないで見過ごされると踏んだんでしょう。それはそうと、マルサリスの前任のアレン男爵は、何でカンラの代官を辞めたの?」 

「アレン男爵は、今もアルカン村含めた領都周辺の代官ではあるんだ。

アレン男爵家も六、七年前に代替わりして、跡を継いだ長男が領都から離れたカンラまでは手に余ると言って、カンラ返上を申し出たらしい。誠実にきちんと代官の仕事をしていたからこそ、限界を感じてそのような申し出をしたんだろう。

しかしそこに名乗りを上げたのが、男爵になったばかりのマルサリスだったんだ。ダニエル・クロフトはカンラを早く誰かに任せたかったから、よく調べもせずに決めたんだろうね」


無責任なダニエル・クロフトらしいわ、とアイリーンは眉を寄せた。キリアンの凶行後クロフト公爵への信用は、すっかり地に落ちているようだ。


「だいたい、マルサリスが爵位を得た経緯も資金も怪しいわ。男爵位はマルサリスが高利で金を貸して、借金の形に取り上げていて、その高利貸しの金は、盗品を売りさばいて稼いでるみたいじゃない。セシールが盗られたペンダントも、きっとその店で売られたんだと思うわ。街がマルサリスに支配されているって言っても良いわね」

「そうだね。盗みを働く者もマルサリスの手下だし、それを売るのもマルサリスの店。それにセシール嬢の言っていた女性を買う男達は、マルサリスにも金を払っているみたいだ。女性には馬車代だけ渡して追い払うか、もっとひどいと高利で金を借りさせて、最後は娼館に売って儲けているらしい」

アイリーンの眉間のしわがますます深くなっていく。


「憲兵はどうなってるの」

「マルサリスに代官が代わってから、それまでの憲兵を他の街へ移らせるか辞めさせて、新しく雇っている。今憲兵は全員マルサリスの部下だろう。

捕まって牢に入れられる者は、ほとんど全員マルサリスの不正を訴えようとしたか、逆らった人間で、今あの街でマルサリスに逆らう者は誰もいない」


アイリーンはため息をついて「エド、短期間にこれだけ詳しく調べてくれてありがとう。これはセシールが教えてくれなかったら、このカーツァイト王国にとんでもない独立国が出来ていた所だったわね。それにしても、あれほど王都に近い土地がそんな状態にされていたなんて、危険極まりない。クロフト領だけの問題に留まらないわ。

今すぐ陛下に奏上して許可を得て、王家からカンラの街へ兵を出しましょう。クロフト公爵には、この報告書と一緒に召喚状を送るわ」

「公爵にはどんな処分を?」


アイリーンは最終的には陛下の判断だけど、と前置きしてから

「まずは今の領地を取り上げるつもりよ。

クロフト公爵家は、カンラの街以外でも税を徴収するだけで民の為に働いていないから、領民達は不満を抱いているでしょう? 特に領都とアルカン村を含めた地域では、弟が地元であれだけの惨事を引き起こしておきながら、全く無視している領主として信用を失っているの。

クロフト領は広大な領地だから、分轄してそれぞれにふさわしい領主を据える事になるでしょうね。ただカンラと周辺は王都に近接していて、また同じ様な事が起こると困るから王領にするわ。それとクロフト公爵家は、当然この責任を取らせて降爵にするわ」


そう言って、アイリーンはエドワードに「何段階下げるのが妥当だと思う?」と聞いた。

エドワードは、今まで王国でどのような場合に降爵が為されたのかを、思い出し答えた。

「そうだね。この事例に一番近いのは、領地を顧みず、反乱を起こさせた侯爵の事例かと思う。あの時は二段階下がって子爵になっていたから、今回も伯爵位が妥当かと。それに伴って、確かに領地も縮小させる必要があるね」

「そうね。クロフト家は広大な領地の面倒が見切れないようだから、縮小しなければね」


そこで、エドワードが楽しそうな顔でとっておきの情報をアイリーンに教えた。

「実はマルサリスが名乗りを上げる前に、アレン男爵は自分の弟をカンラの後任に推薦してるんだよ。父親が亡くなるまで父と弟と三人で仕事を分担していて、弟はカンラ周辺を担当していたからと言ってね」

「適任者がいたんじゃない。何で公爵はその人に頼まなかったの」

「男爵位を嫡男が継いで、弟は平民になってしまっていた。貴族である男爵子息なら代官の仕事が出来たけど、平民ではその権限が無かったんだ」

「クロフト公爵家は、弟に準男爵くらいならすぐ与えられるのに、それをしなかったのね」

「そう。理由は分からないけどアレン男爵の提案を却下して、マルサリスを任命したんだ。それでカンラの事とは別に、ビルの伯父さんに例のブローチの贈り主についても聞いていたら、すごい事が分かったんだよ」

「すごい事って?」エドワードの得意げな様子に、アイリーンはワクワクして尋ねた。

「セシールにブローチをくれたジョージが、そのアレン男爵家の次男なんだよ」



王太女殿下から奏上を受けた国王陛下は、カンラの街の現状を報告する書類をエドワードから受け取って目を通すと、怒りを露わにして声を上げた。

「これは酷い。こんな事が公爵家の代替わりから、五年も続いていたのか。あの街の者達はさぞかし領主や王家を無能と恨んでいるだろう。一刻も早く兵を出してマルサリス男爵の一派を捕縛し、囚われている者達を解放しなければ。クロフト公爵は一体何をしていたんだ」


「陛下。クロフト公爵は代官任せで領地に関わっておらず、何も知りません。公爵には、報告書と共に明日登城するよう召喚状を渡してあるので、今頃事実を知って驚いているでしょう」

「何とも気楽なものだな。登城する時に問い質し、返答によってしかるべき罰を与えるが…お前達はどのように罰するか考えているんだろう? 話してみなさい」


アイリーンはエドワードを促し、エドワードが口を開いた。

「はい。まずカンラを含む王都周辺の一帯は全て王領とします。理由は、今回のように領主の監督が行き届かなかった場合、王都並びに王家が危険にさらされる為です。

それ故今後は、王家自らが管理すべきと考えます。

次にクロフト公爵家は今回の不祥事を受け、公爵位を担う能力が無いとして、過去の事例も鑑みて二段階降爵し伯爵位とするのが妥当と話し合いました。


また、カンラ周辺以外の領地でも領主への不満が高まっている為、処罰の意味でもクロフト家から現在の領地を取り上げ、領地を分轄して新しい領主を置くべきだと思います。クロフト家には、伯爵領に見合った新しい場所、税収を上げる事に努力が伴う土地を与えるのが妥当と思います」


「うむ。そうだな。公爵の申し立て前ではあるが、大筋はそれで良いだろう。公爵が何を抗弁しても、カンラの住民達はこのままクロフト公爵に治められる事は受け入れがたいだろうしな。しかし、これは無能な領主に任せきりにした、我ら王家の責任でもある。王領にした後は、彼らに報いなければいかん。…しかし、これに気づけたのがあのクロス元伯爵令嬢のお陰とは、運命は不思議なものだな。アイリーン、お前があの娘を気にかけていたのは知っていたが、こうして巡り巡って助けられる事があるのだな」

「本当にそうですね。お父様」


エドワードはそこで王に「それでは、一刻も早くカンラの街を救うため軍に指令を出し、準備が出来次第即刻出発します。今回は指揮官と共に私も同行します」と申し出た。

「頼んだぞ」

「エド、気を付けて」

王に礼を取り、アイリーンに「明日の公爵の登城は頼んだよ」と告げて急ぎ足で退出するエドワードの後ろ姿を見送ってから、アイリーンは王に向き直った。


「それで、分轄後の新しい領主と、王領になるカンラの代官、新しいクロフト領の候補地について考えがあります。聞いてくださいますか」

「お前はもう少しエドワードの心配をしなくて良いのか」父親の顔で呆れたように言う王に「エドはああ見えて、剣の腕は確かですよ。お父様」アイリーンは得意そうに笑った。



読んでいただき、ありがとうございます。


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