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女王陛下の宝飾職人  作者: Jun
第二章

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16 マシューとセシール2

見つけてくださってありがとうございます。

その後二人は酒店、洋品店、家具店と回ったが、どこの店でも返事は「知らない」だった。

めぼしい店を回りつくし、最後に宝飾店の番になった時「ここは俺が行く。セシールは、あそこのベンチで待っててくれ。ここら辺はおかしな奴はうろついていないと思うが、何かあったら、あそこに立ってる憲兵に助けを求めろ」とマシューが言った。


セシールは、言われた通り街路樹の脇のベンチに腰かけ、少しぼんやりしながら店に入って行く背中を見送った。

手がかりも無いのに付き合わせて本当に申し訳ないと思いながら、初めて街を出歩き、知らない人に話しかけ緊張して疲れていたので、ここで待っていられるのはありがたかった。


宝飾店の中に入ると、マシューは奥にいた店主に「久しぶり」と声をかけた。

店主はマシューを見ると「よお、どうした。今日は店は休みなのか」と驚いたが、突然思い当たって「もしかして、例の二人組の男の方はお前なのか?」と声を上げた。

(やっぱりそうだったか)マシューが思った通り、既にこの界隈の店に自分たちの事は知られていた。

(きっと要注意人物として回ってるんだろうな)と思いながら「ああ。それは俺の事だと思うよ」と何でもないように答えた。


「何でお前がローワン夫人を探してるんだ。何か面倒な事に巻き込まれてるんじゃないだろうな」

「面倒と言えば面倒なんだが、そう大げさな話じゃないんだ。それに探してるのも実際にはローワン夫人じゃない。例の平民になった、色男のご子息の方なんだよ。

あそこに座ってる娘が見えるだろ?あの子は王都でさる御令嬢に仕えているんだが、主人の命令で、ご子息を探しにここまで来させられてるんだよ」

「御令嬢の命令って?」

「どうも御令嬢がご子息に執心だったらしくて、最後にどうしても手紙を渡したいんだってさ。御令嬢の家が甥の顧客だった縁で、今日だけあの子の面倒を見る様に頼まれたんだ」


「甥って、王都に行ってるビルか?」

「そうだよ。あいつも顧客を増やすのに頑張ってるから、俺もちょっとは協力してやらんとな」

「だからって、なんでローワン夫人なんだ。あの婆さん、突然領主様の所から人が来て追い出されたから、みんな警戒してるんだ」

「その御令嬢がご子息から、昔の使用人のローワン夫人って人が領都にいると聞いた事があったらしい。それだけで、夫人の住所も知らないのにあの子を領都に来させたんだ。使用人とは言え、さすがに気の毒だよな」

「どうせ世間知らずの御令嬢なんだろうけど、とんでもない事を言いつけるもんだな。まあ、恋心なんて一時の熱病だから、すぐに冷めて忘れるだろうが。まさか、あの子はずっとここでご子息を探す訳じゃないだろう?」


「まさか。そこまでは家も許さないさ。何でも月に一回こっちで用事があるから、そのついでに探させて、御令嬢の気持ちをなだめるらしいよ。今日はその初日という訳だ。…それで、ローワン夫人の事もご子息の事も、本当に知らないのか?」

「ああ。俺たちは、夫人が追い出された事と、追い出される前の数か月は妙に羽振りが良かった事を知ってるだけだ。ご子息の居場所は皆目見当がつかん。

…いや。夫人が一度うちの店に、宝石を買い取って欲しいと言ってきたことがあったな。割と良いルビーだったから買い取ったが、聞いてもいないのに、昔公爵夫人から頂いた品だと言ってたっけ。ずいぶん前に侍女を辞めたのに、何で今頃売りに出すのかとは思ったが、もしかしたらご子息の持ち物かもしれないな」

「じゃあ、ご子息は本当にここら辺にいるのかもな」


「ま、それもただの推測だ。ローワン夫人はもういなくなっているし、ご子息の行方は分からない。俺に言えるのはこれだけだよ」

「いや、それだけでも助かったよ。ありがとう。周りの皆にはこういう訳だから、あの子がまた来たら、分かる事だけで良いから教えてくれるよう伝えて貰えないか。あの子も何も情報無しで主人の所へ帰るんじゃ、可哀想だからさ」

「分かった。何か情報が入るとは思えないが、皆には邪険にしないように言っとくよ。何か分かれば、お前にも伝える。じゃあ、次は組合の会合で会おうや」

「ああ。邪魔して悪かった。またな」


店を出ると、こちらに気づいたセシールが立ち上がり歩いてきた。

マシューは「ローワン夫人はもういない事しか分からないみたいだったよ」とだけ言い「腹が減ったな。昼飯を食べに行こう」とこの場を離れた。


昼食に入った食堂では、二人とも日替わりの鶏のトマト煮込みに舌鼓を打って、食後のお茶を飲んでいる時マシューが話し出した。

「あそこら辺の者はローワン夫人が追い出された理由も知らないし、子息の居場所も全く分からないというのは確からしい。ただ夫人が宝石を売りに来た事があるから、宝飾店の知り合いに、それらしい男が宝石を売りに来たら教えてくれるよう頼んでおく。もし本人が売りにくれば、少しでも居場所が分かるんじゃないかな」

「そうですね。何から何までありがとうございます」すまなそうにお礼を言うセシールに「あとセシールの事は、王都から月に一度、主人の命令で子息を探しに来る侍女って事にしたから。もし誰かに聞かれたら、そういう事にしといてくれ」バツが悪そうに続けた。

セシールはマシューが良い人だと分かっていたので、自分に悪い事ではないのだろうと「わかりました」と笑って了承した。


「あと、どこか行きたい所はあるかい」尋ねられ、セシールはすぐに「手芸店に行きたいです」と答えた。リリーの一歳の誕生日に会えないので、せめて刺繍したハンカチを贈りたかったのと、村でお世話になっている人たち、そしてマシューにも贈りたかった。


手芸店はマシューの店のすぐ近くだったので、危ないと渋るマシューに買い物が終わったらすぐに宝飾店へ行くと約束して、店の前で別れた。

手芸店で、セシールは皆の顔を思い浮かべながら、沢山の端切れと刺繍糸を買った。リリーにあげる誕生日プレゼント用には、自分と同じ瞳の色の若草色の絹の端切れと刺繍糸も特別良い物を買った。

買い物が終わったセシールは、約束通りまっすぐ宝飾店へ戻り、ホッとした様子のマシューにジュエリーを見せて貰い、感想を聞かれた。

「貴族のお嬢さんがどんなジュエリーが好きか聞ける、絶好の機会だよ」

もう貴族ではないけれど、精一杯流行っていた物を説明している内にジョージが戻って来た。彼は来た時同様、さっさとセシールを連れて店を出ようとするので「マシューさん、本当に今日はありがとうございました」と慌ただしく礼を言い、セシールはアルカン村へ帰った。


読んでいただき、ありがとうございます。


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