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女王陛下の宝飾職人  作者: Jun
第一章

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22 宝飾職人の思い出

見つけてくださってありがとうございます。

王太女殿下のパリュールを作成する栄誉を与えられた俺は、エドワードが帰った後もしばらく呆然としていた。やがて、初めて王太女殿下に出会ったあの祭りの日、次にこの店に殿下が現れた日を次々に思い出し、最後に初めて殿下のジュエリーを注文された日の事を思い出していた。


あの日、今日と同様に閉店した店に現れたエドワードが「今日はこの作品を拝見して、お願いがあって来ました」と、俺の作ったネックレスを差し出してきたのだ。

そのネックレスは、この店のお得意様である子爵に「名を明かせないがかなり高位貴族」がご所望と依頼され、ちょうど一カ月程前に完成したものだった。


依頼時に子爵に告げられた条件は『高貴な女性が公的な華やかな場で使用するネックレス』を、『作成期限は半年』で、『可能な限り新しい独自の技術を使って』作成する事で、予算としてかなりの高額が提示された。

俺はこの贅沢な気前の良い依頼に感謝し、ちょうど新しく考えた技法を思う存分使い、試し、半年をまるまる使ってネックレスを作成した。


今までの技法では、宝石を金属に取り付ける時は台座に留爪を作り、そこにはめ込む。

だからどうしても爪の部分が目に入るし、デザインが制限されるのが常だ。新しい技法は、まず金属に凹みを作りそこに石をはめ込むもので、そうすると表面はただ宝石が滑らかに並ぶようになり、しかも立体感が出るのだ。

俺はこの技法を使って、金の花の花びらが、無数の宝石によって緩やかにカーブを描く様にいくつもの凹みを作った。それから様々な色の宝石を凹みに合わせてカットし、デザイン通りに一つ一つ精密にはめ込んで、三つ目の花の上に同じ技法で作った蝶をとまらせた。

首元を一周する金の鎖は繊細なレース状に編み、最後に胸元に当たる部分に立体感ある花々をバランスよく配置した。細かさに気が遠くなるような作業だったが、会心の出来と思える品が完成し、俺は満足だった。


「本当に素晴らしい作品です。実はこのネックレスは、あなたの技量を確認する為に子爵を通して、私が依頼しました」

「あなたがご依頼主だったんですか。私の技量の確認とはどういうことでしょう」

「あの子爵は、実は私の部下なんです。彼は、奥方に贈るジュエリーの為自ら勉強を重ねるほどの愛妻家で、大変目が肥えているんですよ。その彼が、王都に素晴らしいジュエラーを見つけたと言うので名前を聞いてみたら、あなたでした」

「それは…光栄です」

「彼が奥方の為に購入した品も、いくつか見せてもらいましたが、どれも見事なものでした。さらに最終確認でネックレスの作成をお願いした上で、私がアイリーンへ贈るジュエリーを依頼したいと今日伺ったんです」


「え、エドワード様が殿下に贈る品をですか」

「はい。試すような事をして失礼だとは思いましたが、王太女であるアイリーンが身に着ける品はふさわしい物でなくてはいけません。私が贈った品が彼女の品位を落とすような事はあってはならないですから、これならと確信できてから、こうしてお願いに来ました。

…それに、アイリーンはあなたの作品なら特別喜んでくれるでしょう。

私の贈り物というだけでは、色々言って受け取ってもらえないかもしれないですが、あなたが作ったと言えば、絶対身に着けてくれると打算もあるんです」苦笑いするエドワードに、俺は依頼を受けて感激しているのに、笑い出しそうになって困ったのを覚えている。


殿下が夜会で身に着けるジュエリーひとつを贈るのに、ここまで慎重なテストをする男が、二人の結婚式のパリュールを俺に任せてくれた。全身全霊で素晴らしい物を作ってみせると心に誓った。


翌日から店を開いている時間以外は、王太女殿下のパリュールだけに捧げる時間になった。最初にデザインを考えた時、俺の頭の中にはあの思い出のブローチがあった。

あれと同じ花をモチーフに、黄金の花を連ねたティアラを作ろう。

結婚式の春の日に、ティアラを戴いて菫色の瞳が輝く彼女は、まさに花の女神の様だろうと思い、デザインを決めた。


俺の考えたティアラの説明を、うなずきながら聞いていたエドワードは「花の女神、素晴らしいと思います。ただ、一つだけお願いがあります。この石を、ティアラの中心となる部分に使って欲しいんです」と大粒のパープルダイアモンドを差し出してきた。

その色は殿下の瞳の色そのもので、よくこんな石を見つけられたなという驚きと同時に、このとんでもなく希少な宝石を、今手渡されるのは恐ろしすぎた。

「どうぞこのまま保管は王宮でお願いします。この石をセッティングする直前にご連絡しますので」と懇願し持ち帰ってもらったが、あれほどの石を見つけるのに、エドワードはどれだけの時間と金銭を費やしたのか。

その愛情という名の執念を思うと、あの日、不実な前婚約者と婚約破棄したい!と息巻いていた殿下の姿を思い出し「良かったな、リーン」ひとりでに笑顔になってつぶやいた。


そして期限の一年から一ケ月だけ早く、俺は完成したパリュールを王家へ納める事ができた。それから数日後、王太女殿下から俺宛に城への招待状が送られてきたのだった。



読んでいただき、ありがとうございます。

宝石の技法は、〇ァンクリーフを参考にさせていただきました。


続きが気になる!と少しでも思っていただけたら、ブックマーク、評価(下の方にある☆☆☆☆☆)やブクマ、いいねで教えていただけると、嬉しいです!

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