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女王陛下の宝飾職人  作者: Jun
第一章

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21 結婚式の宝飾職人

見つけてくださってありがとうございます。

私とエドワードは正式な婚約を取りかわし、一年半の婚約期間を設けて結婚することとなった。


エドワードのご両親のホール侯爵夫妻と、お兄様のギルバート様ご夫妻は、エドワードが私を長年思っていてくれた事をよくご存じで、婚約式では皆手放しで喜んでくださった。

「エドワードはどんなに言っても婚約者を作ろうとしなかったんです。私は次男だから良いでしょうと言い張っていたんですよ」ギルバート様がおっしゃると、ホール侯爵も「もう、エドワードは国に婿に出したつもりでいましたが、本当に国が婿にしてくださり喜ばしい限りです」と笑って、私は恐縮するよりほかなかった。

侯爵夫人は母と親しくされていたので「天国の王妃様にご満足いただける様、エドワードには絶対に殿下をお幸せにして、しっかりお支えするようにさせますから、ご安心ください」と意気込まれ、エドワードが憮然として「母上に言われなくても、かならず私が幸せにしますし、支えます」と言い返すのも新鮮だった。

母が亡くなってから父と二人、家族というより王と王太女という側面が大きかった私に、急に温かいつながりが増えた気がした幸せな婚約式だった。


結婚式については、王都の大聖堂で執り行う事だけは決定していたが、その他はこれから一年半の婚約期間で調整しなければならなかった。

あれこれと国のほとんど全ての部署を巻き込んで準備が進み、公務と併せて私たちも目の回る忙しさだったが、未来へ向けての準備に、明るい気持ちのまま半年が過ぎた。


そして今日は、式典のさまざまな場面で使用するジュエリー、パリュールを決めようとしている。宝飾担当の侍女が、私の前にあるテーブルの上に、ビロードの箱におさめられたパリュールをずらりと並べた。王家の女性が代々受け継いだ宝石たちはどれも貴重で、強い輝きを放っている。エドワードも自分の衣装との兼ね合いを考え、隣に控えて熱心に見つめていた。


どのパリュールも逸品ばかりなのだが、私は大聖堂の結婚式では、亡き母が身に着けた真珠のパリュールにすると最初から決めていた。ジンクスである『何か古い物』サムシング・オールドは、母の思い出と共に身に着け、幸せな花嫁になりたかった。

そうなると選ばなければいけないのは、当日の昼餐会と晩餐会、式後大聖堂から城への王都のパレード用のものになる。

晩餐会には重厚でありながら華やかなダイアモンドとルビー、昼餐会は爽やかなエメラルドと決めて、最後に王都をパレードする際のパリュールを決める段になって、同席していたエドワードが何気なく話し出した。


「王都で民に結婚を披露するのが目的だから、パレードで使うパリュールは、王都の職人が作成した物を使うと良いんじゃないかな」

「王家御用達のジュエラーということ?」

「今までの王家御用達も勿論素晴らしいジュエラーだが、お披露目という意味で、今話題の実力ある新人が良いと思うんだ」エドワードが笑みを深め、私が着けているイアリングを見つめた。彼がビルに依頼して作ってもらった品だ。


「実力ある新人ね。そう言われると、一人心当たりがあるわ。最近貴族達の間で評判で、私も彼の作るジュエリーがとても好きで気に入ってるの。ビルという名前の職人なんだけど」私が上気した顔で言うと、エドワードがうなずいた。

「彼に、パレードのパリュールを依頼しよう。まだ式まで一年ある。彼の技術を全て詰め込んだ君の為の作品を作ってもらおう」

「エドワード、ありがとう。あなたは最高の婚約者よ」

私はビルの作るパリュールと、彼の夢がかなう日を楽しみに待つことになった。


ビルは二人の婚約を、王都にばらまかれた新聞の号外で知った。

ここ数年エドワードの依頼で、アイリーンに贈る彼の独占欲満載のジュエリーを幾つも作ってきた身として、二人の婚約は我が事のように嬉しかった。

王都の新聞がこぞって出した号外は全て集め、いくつも刷られた二人の絵姿も、おそらく全種類買った。出来れば二人に直接祝福の言葉を言えたらと思うが、ただでさえ忙しい二人はこれで更に忙しくなるだろうから、おそらく当分先の事と諦めていた。


案の定音沙汰のないまま婚約発表から半年が過ぎ、ビルにも変化があった。

自分が任されている店を、師匠がかなり割り引いた金額で譲ってくれると言うので、貯金をはたき伯父さんから借金もして買い取り、名実共に自分の店にしたのだ。

最初は借金もあり不安だったが、裕福な商人や平民以外にエドワードとアイリーンのおかげで貴族の顧客も増えて、経営は順調だった。

そうなると次に目指すのは、やはり目標の「王家御用達」それも「王太女殿下御用達」だと、一層熱心に技を磨き制作に取り組む毎日だった。


その日もいつも通り営業を終え、次は何を作ろうかと考えていると、ノックの音が響いた。もしかしたらと予感がして窓から外をのぞくと、見慣れたマントをまとった男が立っている。ドアを開いて、すぐに招きいれた。

「お久しぶりです」フードを取ると、やはり婚約発表で街中にばらまかれた絵姿の片割れ、エドワードだった

「ご婚約おめでとうございます。今日はどうしたんですか。殿下に何か贈り物でも?」

本当なら祝杯をあげにセレンディピティに誘いたいところだったが、さすがにこれだけ姿が知れ渡った今は無理だろうと、奥の応接室へ案内する。

店にある中で一番高級な茶葉とカップを使い、出来るだけ丁寧にお茶を入れてエドワードの前へ置いた。


「今日は私とアイリーンから、ビルさんに正式なお願いがあってきました」

「お二人から、正式に? 何でしょうか」

いつもと違う雰囲気で居住まいを正すエドワードに、もしやという思いが生れ、ビルは膝の上で握りしめた手が無意識に震えた。無理やり心を落ち着かせ、そのまま続きを待つ。


「ビルさん。一年後の私たちの結婚式で、民へのお披露目の為に大聖堂から城までパレードを行います。パレードの時にアイリーンが着けるパリュールを、あなたに依頼したい」

ビルは、いつのまにか自分が涙を流しているのを感じたが、止めようがなかった。

それでも背筋を伸ばし、エドワードへ向かってはっきりと答えた。

「謹んで、お受けいたします。私の全てを賭けたパリュールを、王太女殿下へお作りするとお約束します」




読んでいただき、ありがとうございます。


続きが気になる!と少しでも思っていただけたら、ブックマーク、評価(下の方にある☆☆☆☆☆)やブクマ、いいねで教えていただけると、嬉しいです!

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