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女王陛下の宝飾職人  作者: Jun
第一章

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20/62

20 王太女殿下の婚約者2

見つけてくださってありがとうございます。

「そうなの。サミールの第三王子のライアンを覚えてる?」

「学院の留学生でしたね。優秀な方でした」

「ライアンから申し込みが来たんだけど、彼は婚約者がいたでしょう。どうしたのかと思ったら、この話をこちらが受けるなら、今の婚約を解消するっていう話だったの。ライアンは婚約者と仲が良かったから、おそらく王家としての判断でしょうね。お父様には断ってくれるようにお願いしたわ」

「そうですか。私もライアン第三王子からは、しょっちゅう婚約者の姫君の話を聞かされました…。 正直言って、殿下は新しい婚約についてどうお考えですか。もうあれから4年になります」

「私もちゃんと決めないといけないとは分かっているのよ。でも公務が楽しくて、そっちまで気が回らなかったというか。何しろ前の婚約者がキリアンだったから、どうしても面倒に感じてしまうのよね」


うんざりという顔で答えると、エドワードは何か口の中でもごもごと言って黙ってしまう。

最近こうして言いかけては止めることが多く、何が言いたいのか聞いても「大した話ではありません」と答えてくれないので、気になるけれどもう聞かない事にした。そのくせ、気づくとまた何か言いたげな目で私を見ているのだ。

最近はそのせいで、エドワードに接する時は妙に居心地が悪い。

いつも彼の榛色の瞳は私を落ち着かせてくれたのに、居たたまれない気持ちになるなんて初めてだった。でも彼に見つめられるのは、不思議に嫌な気分ではないのだ。


少し微妙な空気が流れてはいたが、その日もいつも通りエドワードのエスコートで夜会に出席していた。

エドワードは婚約者がいなくなってから私のエスコート役で、夜会前には律儀にドレスやアクセサリーを贈ってくれようとする。こちらがエスコートをお願いしているのだからといつもは断るのだが、今回はビルと相談して作ったジュエリーというので、有難く頂くことにした。今私の首元には、アメジストとシャンパントパーズを組み合わせた瀟洒なネックレスが輝いている。

ビルは新進気鋭のジュエラーとして貴族にも顧客が増えたので、エドワードは貴族との話題作りにもなると、最近よく彼の作品を贈ってくれる。


ダンスも歓談も一区切りついて、少し新鮮な空気を吸おうとエドワードと共にバルコニーに出た時、急に春先の冷たい風が吹いてきて、肌寒さに思わず腕をさすった。

それを見たエドワードはすぐに自分の上着を脱ぎ、背後から私の肩にかけてくれる。


「あ」家出をしたいつかの夜、ローブをかけてくれた事を思い出し懐かしくなって「前もこんな事があったわね。ほら、初めてセレンディピティに行った時。あの後、私の服もエールの匂いになっちゃって」笑いながら振り返ると、こちらを見つめるエドワードと近くで目が合ってしまった。

目をそらせないでいると彼の瞳に切なげな色が見え、いたたまれなくなって「まだこの季節は冷えるわよね。エドワードは大丈夫?上着が無いと寒いでしょ」早口で言って、貸してくれた上着を脱いで差し出した。

「殿下が風邪を引かなければ私は大丈夫です」と、差し出された上着を正面で受け取ったエドワードは、手を伸ばして私を閉じ込めるような体勢で再び肩にかけてくれたので、自然と距離が狭まりお互いの体温が感じられる程近くなった。

思わず目を閉じて彼の暖かさに包まれた時「なんだ。探さないでもずっと側にいてくれてたんじゃない」

天から降ってくる星みたいに、優しい真実が心にすとんと落ちてきた。

それを大事に拾い上げ、私は心に浮かんだ願いをそのまま口にした。

「エドワード、私と結婚して」


一瞬動きを止めたエドワードは、じわじわと耳まで赤くなり、そして私を見つめたままゆっくりとひざまずいて、右手を左胸に当て「御意」と答えた。

嬉しくて、でも少し呆れて「エドワード、他に返事の仕方があるんじゃない」といつもの調子で言うと、彼はゆっくり立ち上がって私をきつく抱きしめた。そのまま首元に顔を埋め「愛しています。昔からずっとあなたを愛してた」とささやいてくれた。

私は彼の顔を見たかったけれど、彼の肩が震えていたので、そっと背中に手を回し抱きしめ返した。こうして、私に新しい婚約者が出来たのだった。


その後、二人で報告に行った父からは「全く遅すぎる。私は諦めかけていたぞ、エドワード。まさかアイリーンから求婚するとは思わなかったが、これでやっと安心できる」と言われ、エドワードは「全く不甲斐なく、返す言葉もありません」としょげていた。


今は辺境伯夫人のダリアからも手紙が来て「アイリーンが気づくまで待っていられるなんて、気が長すぎて私には考えられない。でも、待てなかったら終わっていたかもしれないから、これが正解だったのかしら。ともかく誰もが期待した形に落ち着けて本当に良かった」と書いてあり、これはもしかしたら私以外は気づいていたのかと思い始めていると、最後に例のサミール王国ライアン王子からも手紙が来た。

「アイリーン、エドワードご婚約おめでとう。

しかし、君たちが早くまとまってくれないから私の婚約が危うくなるところだったよ。私としては、あと数か月で婚姻予定の大切な彼女と別れる気はなかったが、国と家を捨てるのも本意ではないから、そちらからすぐに断ってくれて助かった。友情に感謝する。

それにしても、エドワードは我慢強いにも程があるね。相手がアイリーンならそれが最善の策だったのかもしれないが、周りはさぞかしやきもきした事だろう。結婚式にはぜひ招待して欲しい。その時は妻と共に伺い、国同士の友好も深めたいと思っている。

ライアン・サミール 」

エドワードと一緒に手紙を読んでいた私は、読み終わって尋ねた。

「ねえ、エドワード。ライアンが留学してきたのって、私たちが16歳の頃よね。今から8年も前よ。なのになんでこんな事を書いているのかしら。あなた、ライアンに私の事を何か話してたの」

「それは、ライアンが自分の話ばかりだとつまらないと言い出して、私の事も聞きたいとしつこかったから…」狼狽えるエドワードに「気づいてないのは私だけだったって事ね」と言うと「あなたには婚約者がいたでしょう。婚約者がいるのに他の男の気持ちを推し量るような人ではないと、分かっていたから良いんです。そういうあなただから、ずっと好きでいられました」

私は嬉しくなって「私もそういうエドワードが大好きよ」抱き着いて背伸びをしてキスをした。「ああもう!」真っ赤になったエドワードが、しっかり抱きしめ返してキスをくれた時、いつまでもこの人と一緒にいたいと思えた。



読んでいただき、ありがとうございます。


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