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閑話 魔女の人間関係

1065年35日目

聖騎士のリリスに加え、術者のピックが加わった。2人共まだまだ大きく成長する時期であり、5年後に訪れる災厄を超えた後も騎士団の主力となってくれる筈だ。魔物討伐を終え、酒場で入団希望者に会いに行くが、既に衰退期に入っている者や騎士団の戦力となってくれる期間が短い者が多い。ツルギの様に15年以上も共に戦ってくれる団員は一握りしかいないのかもしれない。

ツルギとガイラスがリリスとピックを指導していた。すると突然、ガイラスの膝が地に着いた。

「ガイラス殿、如何なされた?」

「なぁに、ちょいと疲れただけよ。リリスの嬢ちゃんはまだ良いが、チビの相手は疲れるぜ。」

「俺ピック!チビじゃない!!」

「ガイラス、私も"嬢ちゃん"はやめて頂きたい。」

「ガハハハハ!そいつぁ悪かったなぁ。んじゃ、後はツルギの旦那に任せたぜ。俺ぁスカイ団長の所に行ってくらぁ。」

ガイラスはリリスとピックをからかうと、3人に背を向けて手を振った。

「ツルギ...。」

「そろそろでござるな。」

「何だ?昼飯か?」

「違う。ガイラスが騎士団を辞める事だ。」

「あいついなくなるのか?何でだ?あいつ強いぞ?」

「確かにピック殿の言う通りだ。しかし生ある者は必ず老い、やがて死す。これは何人も逆らえぬ定でござる。」

「あいつ死ぬのか?」

「すぐにではないが...。これ以上騎士団の戦力でい続けるのは難しいかもな。」

「ならスカイはどうだ?あいつも死ぬのか?」

「スカイ殿は不老不死故死ぬ事は無い。だが拙者達は、スカイ殿が世界を救う時まで生きる事は出来ぬな。」

「俺見たい。スカイが世界救うの見たい!」

「私も見てみたいさ。けど...それは出来ないんだ。ピック...。」

ピックの純粋な思いに、ツルギとリリスは上手く答えられずにいた。


騎士団本部にガイラスが来た。内容はやはり退団時期の相談だった。

「団長の見立てじゃあ、俺ぁいつまで戦える?」

「あと4年だな。残念だけど、次の災厄が来る頃にはガイラスは衰えている。」

「くそぉ!あと1年くれぇ保ってくれねぇのかよ!」

ガイラスは自分の身体の限界に腹を立てた。

「フォーロは衰退期が来る2.3年前に退団した。ガイラスもそうするか?」

「いや。リリスの嬢ちゃんとチビの面倒をもう少し見てやらねぇとな。あの2人はまだ不安か?」

「リリスは聖騎士だから問題無いけど、ピックは術者だからな。攻撃力が高くても、味方への補助が出来ないとなると編成が組み難くてな。」

「あんまり出番が少ねぇと、あいつまたイタズラっ子に戻っちまうぜ。」

「あぁ分かってるよ。退団したい時はいつまで言ってくれ。俺もそろそろ予言に向けての戦力を固めるつもりだ。」

「おぅ。そん時が来るまでよろしくな、スカイ団長。」


1065年225日目

騎士団の現状は、ツルギ・リリス・ピックの他、魔術師2名、アーチャー・サムライ・僧侶・神官・騎士・冒険者それぞれ1名ずつである。ガイラスは退団予定の為カウントはしていないが、このままでも十分とも思えた。欲を言えば精霊の加護が欲しかったが、こればかりは運としか言えなかった。だが遠征を終えると、どの団員が結婚しそうで友情が結ばれそうかが何となく分かるようになった。団員の確保を選べば結婚だが、強力な戦力を選べば友情だった。

この日は幻の村とも呼ばれている村に現れた魔物を討伐した。本当はアゼルという名前だが何故"幻の村"などと呼ばれているかは、この村が幻視の森と呼ばれる森の中にあるからだと言う。漆黒の森と違ってこの森は同じ木が無数にあり、遭難者が絶えないらしい。

村を散策して役に立つ情報や、気になる噂を聞ければと思っていると、見覚えのある後ろ姿が見えた。黒くツバの大きい帽子に黒のコートとくれば、思い当たるのは1人しかいなかった。

「おーい、レダ!」

「あら?秀哉じゃない!こんな所で会えるなんて、運命かしら?」

「レダ、この前の事だけど...。」

「あぁその事?大丈夫よ。ちゃんと行って来てあげたわよ。秀哉にあんな顔されちゃ、知らんぷりする訳には行かないしね。」

「ありがとう。それと、ごめんな。」

「悪いと思っているなら、あたしの頼みも聞いてくれる?」

「結婚以外なら聞いても良いぞ。」

「ちぇっ、つまんないの。」

レダがふてくされた顔をした。俺はレダから何を感じ取ったのか分からないが、思わずこんな事を言ってしまった。

「レダには...友達とかいないのか?」

「何でそんな事聞くの?」

「ごめん、ふと思っただけ...。言いたくないならそれでいい。」

「いたよ。昔の話だけど...。」

レダがすんなり答えた事に驚いたが、レダの人間関係が明らかになった事にも驚いた。

「その友達も、レダと同じ不老不死なのか?」

「"いた"って言ったでしょ。それにあたしには友達なんて要らない。あたしには"男"がいればそれで良いのさ。」

「ならレダは、俺以外にも多くの男性と付き合っていたのか?」

「そうね。星の数程にね。けど...本気になったのは1人だけよ。秀哉!」

「そうか...。じゃあそろそろ俺達は行くよ。レイラに頼まれた魔物の討伐があるからな。また会おうレダ!」

俺はレダに別れを告げ、団員達の元へと向かった。レダは軽く手を振った後、1人佇んでいた。

「(秀哉...。あたし、あの女神に負けないから!)」

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