閑話 仲間の訃報 参
1061年50日目
聖騎士のリリスが加わったお陰で、騎士団の戦力は盤石なものとなった。しかしガイラスとフォーロがあと5.6年で衰退期に入ってしまう。他の団員の中にも、もうすぐ入れ替えをしなくてはならない者がいる為、油断は禁物だった。
俺は騎士団本部で魔物が出没した村や街への遠征ルートを考えていた。するとそこへ、ツルギが手紙を持って来てくれた、
「スカイ殿...これを...」
ツルギが持って来た手紙は、訃報を伝える手紙であった。俺はツルギの表情を見て、若しやと思いつつ手紙を読んだ。内容はエイドとフランが亡くなった事であった。一昨年にフランが亡くなり、エイドは後を追うように逝ってしまったそうだ。最後に会った時に出会った子供達はまだ小さかったから、これからシェンリーにかかる苦労がとても心配であった。暫く沈黙していると、ツルギがゆっくりと口を開いた。
「拙者はあの男に、己の掟が何たるかを問うた。その時奴は迷う事無く、己自身が掟だと答えた。あの時の衝撃は、今でも忘れる事が出来ぬ。」
「ハハ...エイドらしいな。あいつが騎士団に入団する前、ウォルターの時計塔に登って街の人達を騒がせた事があったんだ。その後昔の仲間にバカにされたっけな。」
「あの街の時計塔に!?するとスカイ殿は相当奴に手を焼いたのだな。」
「まぁな。けど...ツルギが加わるまで、俺はエイドに支えられてきたさ。偶にエイドが前に出過ぎると、ヤエが抑えてくれたりしたっけなぁ。」
「ヤエ殿も、今頃何処で何をしていようか...」
「そうだな。エイドのように家庭を持っているか、何処かで静かに過ごしているか、或いはもう既に亡くなっているか...。でも、俺達が忘れない限り、ヤエは生き続けるさ。勿論、今日まで騎士団にいてくれた皆もな。」
「左様でござるな。」
「よし!皆に遠征の準備をさせて、ここから北にある村に出没した魔物を討伐するぞ。」
俺はエイドとフランの訃報の手紙を引き出しにしまい、団員達に魔物討伐に向かう事を伝えた。
1062年55日目
この日討伐した魔物がいた村は、極寒のシーズという名の村で、一年中雪か降っていると言われている村であった。地図を見るとこの村が最北に位置し、次の予言はこの村から西にある離島で起こると記されている。未踏の地での戦いはローグバースで経験済みだが、団員達が万全の状態で戦えるとは限らない。不老不死の俺は他の皆と違って、この苦しみを共有出来ないのが心苦しかった。
「お〜い。秀哉〜!」
遠くから俺の本名を呼ぶ声が聞こえてきた。振り向くとやはり、そこには俺と同じ不老不死のレダがいた。
「ひっさし振り!元気にしてた?」
「あぁ。レダも相変わらずだな...。ところで、そんな格好で寒くないのか?」
レダの格好は相変わらず、へそ丸出しの軽装であり、ツバの大きい帽子は雪を被っていた。
「寒いに決まってるでしょ?でもあたしには秀哉を想う"愛"があるから、こんな寒さへっちゃらよ!」
「"愛"か...」
「ん?何々?もしかしてあたしと一緒になる決心でも付いた?」
「エイドもさ...レダに対する"愛"が凄かったなと思ってさ...」
「エイド?あぁ。あのバンダナの戦士ね。まぁ、秀哉に比べればどうってこと無いけどね。」
「エイドが...去年亡くなったんだ。」
「ふ〜ん。そうだったんだ。まっ、仕方ないよね。あたしらとは違うんだからさ。」
「レダ...エイドの墓がバルトウェイにあるんだ。責めて花くらい添えてやってくれないか?」
「何であたしが?」
「頼むよ...」
「...はぁ。秀哉にそんな顔されちゃ、断る訳にはいかないわね。分かったわよ。」
「ありがとう。レダ...。」
「お礼は言葉じゃなくて体で表してよね。じゃあね。」
レダは俺に別れを告げると、すぐに姿が見えなくなってしまった。レダにとってエイドはやはり、男として眼中に無かったのだろうか?そしてレダは俺に出会うまで、心に決めた男性はいなかったのだろうか?
様々な憶測を浮かべていると、フォーロが俺に声を掛けて来た。
「スカイ団長、ここから東に行くと船着場があって、そこから更に進むとレームに行けるんじゃよ。」
「魔法都市レームに?そうだったのか。」
「すまぬが立ち寄ってもらえんかのぅ。少々早いが、儂は騎士団を引退したいんじゃ。」
フォーロの退団願は予期していなかった訳ではない。2.3年前からフォーロの荷物が綺麗に整えられており、今回の遠征ではフォーロは自分の私物を全て持って来ていた。
「そうか...分かった。今までありがとうフォーロ。」
「何を言うか。儂こそ長年の夢が叶って満足じゃよ。今後は再び、教師に戻るつもりじゃ。」
俺は団員達にレームへ行く事を伝え、進路を変更した。




