聖騎士とヴァンパイア 後編
戦闘態勢が整い、リリスを加えた聖炎騎士団と魔物と化したヴァンパイアとの戦いが始まった。
ツルギとガイラスは元々攻撃力が高く、況してやツルギは急所にヒットする可能性が高い。だが俺はそんな一か八かの勝負で今回の編成を組んだ訳では無い。ツルギが先に攻撃し、リリスが続いた後に魔物がツルギに攻撃した。最後にガイラスが攻撃し終えると、1巡目の戦闘が済んだ。魔物は両腕を揺らした事で、次の攻撃が複数攻撃と分かった。ツルギがこれ以上ダメージを受けると危険な為、俺はすぐに隊列を変えた。リリスと魔物の回復が終わると、2巡目の戦闘が始まった。先にヴァルキリーが攻撃し、アーチャーと俺が攻撃し終えると、魔物の複数攻撃が俺一人に向けられた。この時点で魔物の体力は4割に減らせた。魔物は雄叫びを上げた事で、次が体力吸収と分かった俺は隊列を変え、魔物が回復し終えると3巡目の戦闘が始まった。魔女が先手を取り、ヴァルキリーとアーチャーが攻撃し終えると、魔物は魔女の体力を瀕死まで吸収した。ツルギ達の支援を受けた事で、攻撃力が低い魔女達でも中ダメージを与えられた。この時点で魔物の体力は残り僅かとなり、隊列を変えて魔物が回復しても、最後にリリスがトドメを刺さるまでとなった。隊列を変えて再び1巡目に戻り、魔物が雄叫びを上げて吸収攻撃を仕掛けるのが分かったが、魔物より早く攻撃出来るので問題無かった。ツルギの攻撃が急所に当たり、風前の灯となった魔物にリリスがトドメを刺すと魔物は力尽き、戦闘は終結した。
リリスの聖剣が魔物の胸を貫いていたが、魔物は最後の力を振り絞って何かを喋った。
「リ...リ...ス...。」
「アルザス...もう喋るな。」
「あ...り...が...と...」
「お前を救ってやれなかった私を...許してくれ。」
「リ...リス...。」
「何だ、アルザス?」
「..........」
リリスがアルザスと呼ぶ魔物は、もう喋る力も残っていなかった。焼け爛れた唇が2.3度開き、そのままとなった。
「アルザス?嫌だ、私を一人にしないでくれ!目を開けろ!アルザス?...嫌あぁぁぁぁ!!」
リリスの悲痛な叫びが、塔の中で大きく響いた。
街に戻った俺はガイラスに魔物討伐が終わった事を、ルースに伝えるように頼んだ。数年振りに親子の再会をさせたかったし、ひょっとすれば孫に会えるかもしれなかったからだ。そして俺達はリリスとアルザスと呼んだ魔物についての事情を聞いていた。
「リリスは...ヴァンパイアの事を知ってたんだな。」
「奴は...アルザスは、嘗て私の恋人であった男だ。だが魔物と化した奴は、人々に危害を加える災いでしかない...倒すべき敵であった。私情を挟みたくなかった。」
「彼は何故ヴァンパイアに?」
「私のせいだ...。数年前に、私は吸血性の魔物討伐に向かった。アルザスは魔物が若い女性を狙う事を知っていた為、私に注意を呼びかけた。しかし...その時にはもう...私は魔物の餌食となっていた。」
「しかし拙者の知る文献には、血を吸われた女性は3日後には体が腐って生き絶えたと記されてあったが...。」
「そう...私もそうなる筈だった。ツルギ、その文献にはこう綴られていなかったか?"後に優れた抗体を生み出され、死亡する女性は激減した"と。」
「...じゃあ、その抗体を作ったのが...」
「そう...彼だった。彼は魔術師であったから、自らの肉体を使って抗体を生み出したのさ。彼のお陰で多くの女性の命が救われた。だがその代償に、彼は魔物の毒に犯されてしまった。」
「やりきれぬな...」
「そうだな。彼が魔物になったと知った時、私は赤子の様に泣き喚いたさ。三日三晩泣き続け、涙が枯れ果ててしまった後、私は彼を討たねばならないと決心した。それが彼に出来る...唯一の償いであったからだ。」
「それがお主の"天命"であったか...」
「"正しい"事をしようと思っても、足が動かなくなってしまう時があると初めて知ったよ...。」
「..."正しい"事をするってのは、時には残酷な事なんだよな。とにかく、これでこの街の恐怖は拭えたな。ありがとうリリス。お前はアルザスの最期の言葉を聞けたか?」
「...いや、最早声にもならなかったからな。」
「俺は唇の動きで分かったよ。"愛してる"...アルザスはリリスにそう言ったんだ。」
するとリリスの瞳に涙が浮かんだ。彼女は片腕で涙を拭うと、改まった表情になった。
「色々と世話になったな。もしよければ、これからも君達について来ても良いかな?」
「あぁ。勿論さ!これからもよろしくな。」
俺とリリスは握手をして、共に災厄と戦う事を決意した。
聖炎騎士団 ・スカイ 17歳(∞)・ツルギ35歳(19)・フォーロ48歳(7)・ガイラス43歳(9)・リリス18歳(19)他団員9名
次の災厄まで、あと11年。




