聖騎士とヴァンパイア 前編
1059年250日目
魔物討伐の為に少し到着が遅れたが、俺達は要塞都市グラディウスへと来た。街の中は高い城壁で守られているのに、外に出ている住民は殆どいなかった。すると俺の視界に少女の姿が見え、何かを呟いているのが分かった。
「...どうか襲われませんように...血を吸われませんように...私とメルンだけは...どうか襲われませんように...」
「やぁ。こんにちは。」
「!!...きゃ...きゃあああああ!」
少女は俺の顔を見るなり、血相変えて逃げてしまった。何か悪いことでもした訳でも無いのに、あそこまでされるとはショックだった。
「俺...あんな事される程、怖い顔してたか?」
「いや。スカイ殿は普段通り、良き若者の面構えでござったぞ。」
「あの子は怯えていたのさ、<ヴァンパイア>に。」
突然女性の声が聞こえたので振り返ってみると、そこまでには茶髪で綺麗な顔立ちの女騎士がいた。
「ヴァンパイアって、ウォルターで聞いた吸血鬼の事か?」
「君達は騎士団か?」
「あぁ。俺達は聖炎騎士団。そして団長のスカイ=ウルメイア=フィールドだ。」
「君達が噂の騎士団か。にしても、まさか団長がこんなに若いとは...不老不死というのは本当らしいな。」
「まぁね。見た目は17歳だけど、もう70歳くらいになるかな。それで貴方は一体...?」
「申し遅れた、私は聖騎士のリリス。ヴァンパイアがこの街に現れたと聞き、参上した。」
やはり彼女はただの騎士ではなかった。リリスはヴァンパイアの事を知る限り話してくれた。この町の外れに住まう奴は、夜な夜な子供をさらっては血を吸い、恐るべき力を内包しながら生き続けているという。
「俺達が噂で聞いた魔物は、何年か前に若い女性をだけを狙っていたと聞いたが、例のヴァンパイアと同一か?」
「違うさっ!!」
「そ、そうか...すまない。」
彼女が追っている魔物と違ったとは言え、彼女の過剰な否定の仕方に疑問に思った。
「しかしながら、かような魔物を何故放置して置く?」
「放置など...町の人達は、子供を守る為に戦って来たさ!ある者は根城ごと奴を焼き払おうとした。またある者は心臓に杭を打ち込んだ。それでも、奴は時が経てば再び復活するんだ。」
「不滅の魔物か...」
「ベルフェザードと同類だとしたら、相当タチが悪いな...」
「安心しろ。私もただ指を咥えて我慢して来た訳じゃ無い。奴を打ち倒す事が出来る聖剣が遂に完成したんだ。研究に研究を重ね、その間に犠牲者が出てしまった事は無念だが...この剣でその者達の無念を晴らす事が出来る!」
リリスは聖剣を握りしめ、ヴァンパイアを打ち倒す意を露わにした。
「スカイ殿、如何なさるか?」
「勿論協力するさ。良いだろうリリス?」
「...」
「どうかしたか?」
「これは私と奴の戦いだ。気持ちは有り難いが、君達には君達の戦いがある筈だ。ならばそちらを優先してくれ。では失礼する。」
リリスは一方的に別れを告げて、ヴァンパイアの討伐へと向かった。彼女の言った事は間違っていないが、なんだか腑に落ちなかった。すると遠くから俺達を呼ぶ声が聞こえたので振り返ってみると、ルースが手を振ってやって来た。
「お久しぶりです。スカイ団長。」
「ルースか!随分逞しくなったな!」
「ありがとうございます。エレナも元気です。おかえり、お父さん!」
「おっおぅ!久しぶりだなルース。んで?オメェは何でここに来たんだ?」
「あぁそうだ!さっきこの辺りに聖騎士が来たって聞いたんだけど...」
「リリスの事か?彼女なら一人でヴァンパイアを倒しに行くって言ってたぞ。俺達も協力しようとしたのにな...」
「あの人、俺達の協力も断ったんだ。幾ら聖剣があるからって無茶だよ!スカイ団長、俺から貴方達にヴァンパイア討伐をお願いしても良いですか?悔しいけど、俺達の力じゃ倒せなくて...」
「分かったルース。リリスにはルースに討伐を依頼されたって言うさ。それじゃあ皆、急いでリリスに追い付こう!」
「御意。」
俺達はルースに別れを告げて、リリスの後を追った。そして街外れにあるヴァンパイアの根城へと向かった。




