閑話 友との再会、再来した脅威
1059年50日目
次の予言までまだ10年残っているとは言え、ツルギ以外の主力は衰退期に入ってしまう。各地に出現する魔物の討伐に、東奔西走の日々であった。もうすぐこの世界に来て60年が経過する。団員達はみるみるうちに成長していくが、俺は全く変わらない17歳の高校生のままだった。
「スカイ殿、あの山岳付近にある街は何と言う名でござろうか?」
ツルギが指を指した先には、バルトウェイが見えていた。遠くからでも、あの頃の面影がないくらい街が戻っている事が分かった。
「ちょっと情報収集の為、寄り道するか。」
「良いのでござるか?まだ魔物が現れた村への遠征中だが...」
「そろそろ団員を入れ替える頃だからな。それに、ガイラスとフォーロの後任を見つけなきゃならないからな。」
1059年70日目
正門から入ると、街の中は昔の記憶と大差無かった。俺は団員達に、嘗て自警団が使っていた本部で一泊する事を伝えると、ゴードンの墓があった場所へと向かった。そこにはゴードンの他、フィリン、ガルド、ケーラの名前か書いてある墓標があった。俺とツルギはそれぞれの墓標の前で手を合わせた。すると背後から女性の声が聞こえた。
「もしかして、聖炎騎士団の方ですか?」
振り返ると随分歳をとってしまったが、50年前にガルドと共に魔物に襲われた少女フランがいた。
「フラン...なのか?」
「はい。父ガルドと共に、魔物に襲われたフランです。あの時のままですね。副団長さん。」
彼女の成長に、俺の涙腺が緩んでしまった。魔物に壊滅されてしまったこの街で、ここまで大きく育ってくれた事に、ガルドとケーラの苦労が十分伝わった。
「そうだフラン、エイドはどうした?あいつはちゃんと帰って来てるか?」
「はい。今は私の家で、孫達の相手をしています。父親に似て、子供に好かれるんですよ。」
「そうか。俺達は明日この街を出るから、一目会っておきたいんだ。ツルギもそうだろ?」
「あぁ。あやつの子にも、会っておきたいものだ。」
俺とツルギは、フランの案内で自宅に向かった。
2人の家に着くと、男女1人ずつの子供が家の中で遊んでいた。まるでガルドとケーラが小さくなって戻って来たようだった。すると家の奥から、まだ衰えていないエイドが出て来た。
「まさか...スカイ団長!それにツルギまで!」
「やぁ。元気そうで良かったよ。」
「まあね。街の人から、聖炎騎士団が来たって聞いてさ。俺が迎えに行こうとしたのに、フラン姉ちゃんが行くって聞かなくってさ。」
「気のせいでござるか...お主、少し太ったか?」
「まさか!?娘と息子だけじゃなく、この街の子供達まで相手にしてるんだから、逆に痩せちまったよ。」
「よく言うわよ。昨日だってお母さんに食べ過ぎだって言われたくせに。」
エイドを指摘したのは、ヴァルキリーの女性だった。どうやら彼女がエイドの嫁らしい。
「初めてましてスカイ団長。妻のシェンリーです。嘗て騎士団に所属していたウェンリーの子孫です。」
「そうか、態々教えてくれてありがとうシェンリー。にしてもまさかエイドの妻がヴァルキリーとはな。てっきり魔女と結婚するかと思ってたよ。」
「その話は止してくれよ団長。確かにレダさんは俺の憧れだったけど、今はシェンリーと子供達が一番さ!」
「それが聞けて良かったよ。元気でな、エイド。」
「達者でな、友よ。」
「あぁ。ツルギも早くアリアと幸せになれよ。」
1059年120日目
バルトウェイを後にしてから、俺達はウォルターへ辿り着いた。この近くに王都へ向かう馬車があるので、一度帰還するのも有りだが、街の人から妙な話を聞き、酒場でも同じ内容の話を聞いた。
「グラディウスに吸血鬼が現れて、夜な夜な女子供を攫っているらしいな。」
「だけどよ団長ぉ!そいつぁ何年も前にどっかの誰かが退治したって話だぜぇ!」
「拙者もガイラス殿と同意でござる。或いはそれとは別物でござろうか?」
「いずれにせよ、人々の危機を見過ごす訳には行かないな。この近くに現れている魔物を討伐したら、グラディウスへ向かおう。」
一度倒された筈の吸血鬼の復活...まるでベルフェザードの様に、何度も転生を繰り返す魔物が、今後も現れてしまわないかと不安に思いながら、俺達はウォルターを出発した。




