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ひ弱な婚約者と無敗の父親 中編

ルースと共にエレナとガイラスの家に着くと、エレナが出迎えてくれた。部屋の奥まで進むと、魔物の骨で作った様な兜を被った剣闘士がいた。両腕には自警団のマークを入れ、顎髭が立派であった。

「これはこれは、スカイ団長!きったねぇ我が家へようこそ!!今日は人生最高の誕生日だぜ!ガハハハハ!!」

「エレナと"ルース"が、熱心に誘ってくれたんです。」

見た目通り豪快な人だった。そしてルースの名前が出ると、ガイラスの表情が険しくなった。

「ルースだとぅ!?また、あの若造が来やがったのか!」

「あ、はい、あの...コレ...お誕生日おめでとう...ございます。」

ルースは俺の後ろからおずおずとガイラスの前に進み、俺と一緒に選んだプレゼントを渡した。

「これは...?」

「ブドウ酒です。60年物なんで、味わいも濃厚かと」

「テメェ...俺を酔わせてその隙にエレナと駆け落ちしようって魂胆か!?」

「そ、そ、そ、そんな滅相も無い!!」

ルースが必死に否定するが、ガイラスは聞く耳持たなかった。

「いいか!母親が死んでから、エレナには苦労かけ通しだ!あいつは良い男と幸せになってもらわなきゃならねえんだ!その良い男ってのは、テメェ見てえなヒョロい奴じゃねぇんだよ!」

ガイラスの怒鳴り声に、エレナは顔を真っ赤にして反論した。

「お父さん、酷い!謝ってよ!ルースが折角お父さんの為にプレゼントを用意したって言うのに!」

「うるせぇ!んな事より料理はまだか?スカイ団長をお待たせするな!」

エレナはガイラスにそう言われると、ムスッとして台所の方へと向かった。ルースの付き添いで来たのに、主役のガイラスより特別扱いされて、申し訳なかった。それにしてもガイラスに怒鳴られているルースを見ると、昔の自分と同じに見えた。俺はガイラスがどうしてそこまでルースを気に入らないのか尋ねた。

「...ガイラス、ルースのどこが気に入らないんだ?容姿も性格も良いし、ちょっと内気な所があるけど、そこまで怒鳴る程じゃないだろ?」

「スカイさん...」

「へん!全部だよ!...と言いてえが、特に気に入らねぇのはこいつの"武器"よ。」

「武器?ちゃんと手入れされているし、悪くないじゃないか?」

「僕の弓に...何か問題でも...?」

「大有りだ!男は体張ってなんぼだろうが!そんなヒョロい体でコソコソ隠れて戦うなんざ、俺は認めねぇ!」

「そんな事...言われても...」

ガイラスの主張も分からなくないが、アーチャーのルースにはどうしようもない。

「いざエレナと危険が迫った時、テメェは体張れんのか?どうせどっかに隠れて、震えて動けねぇだろ?」

「僕はエレナを守れます!」

「口じゃあなんとでも言えらぁ!」

「じゃあ...どうしろと?」

「...そうだな...今から俺とモルガロスを討伐しに行くか?」

「!?モルガロスって、自警団が倒せない危険な魔物じゃないですか?」

「おうよ!そいつを倒せたら、潔くエレナをくれてやらぁ。どうする?」

「...やります。やらせて下さい!」

「決まりだな。」

ガイラスとルースは共に武器を持ってモルガロス討伐に向かった。台所から戻ったエレナは2人が出て行った事を知り、父親に対して怒った。

「...主役が祝いの席を外し、拙者らを忘れるとは。」

「もう、お父さんのバカ!...ルースに無茶させるなんて...。どうしましょう、団長様?」

「大丈夫。俺達も後を追うよ。必ず2人を無事に連れ戻すさ。行くぞ、ツルギ!」

「御意。」

俺はエレナに約束し、すぐに後を追った。ツルギが付いて来ていない事を団員が教えてくれたが、特に気にならなかった。

「蛇足を一つ。」

「え?」

「父上もルース殿も...そなたを大事に思うが故に無茶をする。男心分かってあげられよ。」

「...はい...」

「では、御免。」

ツルギはエレナに一礼すると、すぐに騎士団の元へと走り出した。


2人が言ってたモルガロスは、自警団が様々な策を講じても倒す事が出来ずに手を焼いている魔物だった。そしてその魔物は、街から離れた洞窟に潜んでいた。

「自警団の話だと、モルガロスがいる洞窟付近にある植物は、薬草としてとても価値が高いらしい。だけどそいつのせいで採る事が出来ずにいるそうだ。」

「その薬草でしか治せぬ病によって、近年死者が増える一方だと。」

「ほんの一握り程度取れても、薬にするには五倍の量がいるそうだ。」

「自警団が苦戦する魔物を、あの2人と拙者らで倒せるでござろうか?」

「倒さなくちゃならない。魔物の被害を受けているのを、見て見ぬ振りする訳にはいかない。」

洞窟の中は思ったより広く、魔物との戦闘で崩れるような心配は無さそうだった。

「どうだ?気味悪りぃだろ?チビんじゃねぇぞ。」

「...はい...」

ルースは弓を握りしめていた。するとガイラスはルースに尋ねた。

「オメェ...エレナのどこが良いんだ?」

「全部です!彼女が嬉しそうに笑ってくれると、僕は幸せな気持ちになります。」

「馬鹿野朗!誰がノロケろっつった!」

「彼女が一番楽しそうに笑う時が何か知ってますか?」

「あぁん?」

「ガイラスさんの事を話す時ですよ。だから僕は...あなたに認められたい。」

「...そ、そんなモンを握りしめているようじゃ...無理だぞ?」

「...これが、僕の戦い方です。剣闘士が肉弾戦を得意とするように、アーチャーは狙撃を得意とする...。そんな風にそれぞれの能力に合わせた役割分担をする事が、集団戦闘において勝利への近道だと思うんです。」

「なぁにぃをぅ?小難しい理屈で並べやがってぇ!役割分担が何だか知らねえが、俺は体ごとぶつかってみろって言ってんだ!」

すると突然、魔物の攻撃がガイラスに向かって来た。

「ぬおっ!?」

「お父さん、危ない!!」

ルースがガイラスを庇い、攻撃はルースに当たった。

「うわっ!!」

「お、おい!しっかりしろ?ルース!ルース!?」

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