老練の魔術師 後編
俺達がメリィの元へ駆けつけた時、石を抱えて魔物から逃げ回っていた。何故石を捨てないのかと思った時、フォーロがメリィに叫んだ。
「何をやっとるか!?そんな重い石など捨ててしまえ!」
「ダメ!これをもってなきゃ、意味ないんだもん!」
メリィは石を抱えたまま必死に逃げた。しかし魔物に追いつかれるのも、時間の問題であった。
「強情娘が!」
「全員、隊列を組め!フォーロ、あんたもだ。」
「なんじゃと!?」
「世の中には、実力不相当の夢を抱いて苦しんでいる者もいる。けど...自分に力があるのを知りながら、それを活かす事が出来ない者は、もっと苦しいんだと俺は思う。フォーロ、一緒にメリィを助けよう!」
「いかん!儂の魔法は人を傷つける...」
「救いたい気持ちで放つ魔法で傷付く奴なんていない!」
「...分かった。儂もお主らと共に戦わせてくれ。」
【フォーロ 魔術師 40歳】
・体力20 ・攻撃力05 ・素早さ4.0 ・支援力25 ・補助力12 ・他回復力15 ・衰退期まで15年
フォーロは見た目が60歳を超えていると思ったが、まだ40代であった事に驚いた。ツルギがエイドより歳下という事にも驚いたが、この世界は見た目と年齢が一致しない時が多過ぎる。
【バッドスモーク レベル06】
・体力220 ・攻撃力 16列 ・素早さ6.0
特徴•••2・3度目に死の呪い攻撃
相手は苦手な常時列攻撃系の魔物だが、フォーロが加わった事で何とかなりそうだ。
「前列は俺とツルギ。中列にはフォーロ、アーチャー、魔術師。後列は魔騎士と僧侶だ。フォーロはツルギ、魔術師は俺を補助。魔騎士は魔術師、僧侶はフォーロを補助だ。」
「御意。」
「良かろう。」
戦闘に参加しない団員は、メリィを安全な場所へ避難させるよう指示を出した。
そして騎士団と魔物との戦闘が始まった。先手はフォーロの補助を受けたツルギが取り、運良く急所に当たった。次にアーチャーが弓で攻撃し、俺が魔術師の補助を受けた一撃を食らわせ、この時点で魔物の体力を4割に出来た。魔物の攻撃は完全には防げなかったが、かすり傷程度で済んだ。俺は隊列を変更させたが、俺とツルギは回復が出来なかった。アーチャーがナイフで攻撃し、魔術師とフォーロがそれぞれ攻撃し終えると、魔物が攻撃してきた。魔術師は魔騎士が守ってくれたが、アーチャーとフォーロはダメージを受けた。俺はすぐに後退させ、フォーロと魔術師に回復をさせた。最後はツルギの支援を受けた魔騎士がトドメを刺して、戦闘は終了した。
俺達は森から戻り、街の中心部に来た。メリィとフォーロ、そして騎士団全員無事で良かった。
「先生があんな凄い魔法使えるなんて、全然知らなかったよ!カッコイイ!」
メリィがフォーロに感激すると、フォーロは鬼の形相でメリィを叱った。
「馬鹿者!今度という今度はイタズラが過ぎるぞ。罰として停学一週間じゃ!」
「...ごめんなさい。」
命を落としかけたのだから、流石のメリィも堪えたらしい。それにしても...どうして彼女は未だに石を抱えているのだろうか?
「メリィ、何でそんなのずっと待ってんだ?魔物から逃げている時も持ってたし...」
「そんなの決まってんじゃないのさ!黄金色の瞳を持つドラゴンは、見た物全てを金に変えるの。だから...その...この石を金塊に変えてもらおうとおもって。」
「むぅ...」
「おとぎ話の功罪ってやつだな。メリィ、お前はもう騎士団の一員だ。」
「えぇ!?本当?」
「あぁ。無鉄砲だが、お前の勇気は十分に資格がある。だから焦る事はない。お前が入団するまで、10年でも20年でも待つさ。だから、じっくり勉強して一人前になれ。メリィ、お前はお前だ。"おばあちゃん"とは違んだ。違う人生を歩んで良いんだぞ。」
「...うん!分かった。」
「いやぁ。素晴らしいのぅ。まるで教育者のような励ましだわい。」
「ありがとう。あなたの腕も素晴らしかったですよ。教育者のままでいるのは惜しいくらいだ。」
「何じゃと?」
「フォーロ、あなた本当は自警団に入りたかったんじゃないですか?」
「...遠い昔の夢じゃよ。」
「夢はいつか覚めるものだ。覚めない夢は...現実にするしかないんだ。聖炎騎士団に入ってくれないか?」
「...儂のような老いぼれを仲間に?」
「貴殿の技は若鮎の如きキレの良さであった。過ぎたる謙遜は嫌味に等しい。」
「その通りだ。返事は素直な一言で十分さ。」
俺とツルギの説得に、フォーロは目を閉じて数秒間黙ると、ゆっくりと口を開いた。
「...よろしく頼む。」
「あー!聞いちゃった!聞いちゃった!先生ったら、あたしに抜け駆けしちゃってさ。」」
「...すまんの。」
自分より先に騎士団に入ったフォーロに対し、メリィは怒ったが...すぐに落ち着きを取り戻した。
「...停学、取り消してくれる?」
「ぐぅ...それとこれとは...。第一、儂は教育者として...。」
「もう先生は”卒業”でしょ?」
「...おぬしの口には負けるわい。」
「わーい!やったね!」
魔法の知識では敵わないメリィだったが、フォーロを論破する知恵はあるようだ。
「じゃあね団長さん!いつかメリィ様にひれ伏してやるんだから!」
「末恐ろしい...。」
メリィに別れを告げて、俺達は王都へと戻った。
聖炎騎士団 ・スカイ17歳(∞)・ツルギ27歳(27)・フォーロ40歳(15)




