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老練の魔術師 前編

前回からの続きです。

俺達はフォーロの部屋へと場所を移し、メリィの事を聞いた。そして俺の予想通り、メリィはあのミリィの孫である事が分かった。

「まさかあの2人に孫がいたなんて...」

「ミリィは儂らも神童と呼ぶくらいの才能を持っておった。」

「神童?」

「左様。ミリィの天才的な魔法はレームの町の語り草じゃ。世が世なら<不滅の魔女>とやらにもなれたんじゃなかろうか?とな。儂も学生時代は散々聞かされたし、今の生徒達の名前もちゃんと知っておる。それだけに...メリィは色々窮屈な思いもしておるわい。」

天才の祖母と比べられるメリィがどんな思いをして来たのか、考えるだけで劣等感を感じた。確かにミリィは優秀だった。彼女が早すぎる退団届を出した時には、惜しい逸材を失ったと思ったくらいだった。

「メリィが騎士団に拘る理由が分かったよ。後でちゃんと謝んなきゃな。」

「いやいや、あれで結構!ハンパな魔法を持って戦いに臨めば..."死"が待っておる!メリィにはじっくり勉強を積んで、立派な魔女になってもらう。」

フォーロが急に声を上げた事に、俺は驚いた。メリィが実践で学びたいと言った時も、フォーロの表情はあまり良くなかった。すると、今まで沈黙していたツルギがやっと口を開いた。

「時に、フォーロ殿。先程の貴殿の錬金術、素晴らしいものであった。最高峰の術をあそこまで扱えるという事は、他の攻撃魔法もさぞや。」

「儂は錬金術しか使わんよ。」

「その理由は如何に?」

「授業が錬金術専門じゃからの。フホホホホ!」

「...」

「...」

フォーロは笑って答えたが、俺とツルギはそれが本心ではない事を感じた。すると一人の魔女が、慌てて部屋に入って来た。

「先生!大変です!メリィが!!」

「どうした?」

「町外れの森へ行ってしまいました!」

「何じゃと?あそこへ行くのは、校則で禁じている筈じゃぞ。」

「はい。でも...ドラゴンを見つけるとか言って...」

「ドラゴンって...黄金色の瞳を持つっていうあれか?」

「あれはおとぎ話だわい!」

「あぁ...やっぱり...」

分かっていたものの、ハッキリ言われるとそれでもガッカリしてしまう。

「子供が魔物で一杯の森へ入らないようにこしらえたんじゃ。メリィめ...次から次へと問題を起こしおって...」

「なら、俺達が連れ戻して来るよ。すまないが、案内を頼む。」

「スカイ殿、それならばフォーロ殿が良いかと。」

「えっ?」

「生徒の過ちは、師の責任。良いでござるな?」

「あぁ。勿論じゃとも。」

俺達はフォーロの案内で、町外れの森へと向かった。


森の中は昼でも薄暗く、魔物でなくても何かいる気配を感じた。俺達は懸命にメリィを探した。

「メリィ!!いたら返事をしてくれ!!」

森に入った時から大声で呼びかけているが、一向に返事か聞こえて来ない。するとフォーロの表情が険しくなった。

「むぅ...相変わらず、薄気味悪い森じゃわい。」

「校則で禁じているのに、入った事があるので?」

「...大分昔にな。」

「この森の魔物は、魔法攻撃しか効かぬ物も多いそうだ。その際にはフォーロ殿、貴殿に任せても良いだろうか?」

「それは大変だ!俺からもお願いします。俺達は剣などの物理攻撃しか出来ない者が大半なんです。」

「すまぬが...儂には出来ぬ。」

「何故だ!?何故そこまで攻撃魔法を嫌がる?」

ツルギがフォーロに尋ねると、フォーロは目を瞑った。

「もう...仲間を失うのは懲り懲りじゃ...」

フォーロは若い頃、仲間と腕試しにこの森へ入り、魔物を仕留めようとした際に、誤って仲間を傷つけてしまった過去がある事を話してくれた。

「儂は気付いたんじゃよ。戦いの為の魔法は儂を思い上がった人間にしてしまう、とな。故に儂は攻撃魔法を使う事を、自分に禁じた。攻撃魔法が必要な自警団に入らず、魔法学校の教師をしておる。これもまた人生じゃのう。」

「立ち入った事を聞いてすまぬ。」

ツルギが謝ると、フォーロは突然笑いだした。

「何の何の、偶には昔話もせんとなの、フホホ。」

その時、森の奥からメリィの悲鳴が聞こえて来た。

「きゃあああ!!!!」

「メリィの声じゃ!」

「急ごう!」

俺達は悲鳴が聞こえた方向へと走り出した。

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