学園都市の生徒と教師
1051年100日目
俺達はようやく目的地に到着した。魔法都市と呼ばれるくらいだから、電気の代わりに魔法を使っている街かと思っていたが、雰囲気はリゼルやフェルメアと変わらなかった。
「ここが魔法都市レームか...」
「ここは昔から、魔術師や魔女を目指す者が集う、学園都市として有名ですわ。」
「町の名前の由来は黄金色の瞳を持つドラゴンを森の岩に封印した大魔術師、レームに因んでいるくらいさ。」
レイラとテトが親切に教えてくれた。という事はもし俺が最初からこの街にいたら、魔術師になれたかもしれないな。
「黄金色の瞳を持つドラゴンかぁ...」
「おいおい、あっさり信じるなよ。町の名前の由来なんて、後世の人間がこじつけたに違いないじゃないか。」
「そうか?女神や妖精がいるんだから、ドラゴンもいるんじゃないのか?」
「お前...ホント偶にアホだな...」
テトが俺に呆れると、遠くから女の子の声が聞こえた。
「動かないで!」
「えっ?」
女の子は杖を俺に向け、何かの呪文を唱えた。すると杖から光が放たれ、俺に命中した。
「うわっ!?」
ところが、ダメージは一切無く、身体のどこも異常は無かった。すると女の子が俺の元へと来た。
「残念。折角メリィ様の魔法であんたを素敵なカエルにしてあげようと思ったのに...」
「お、おい!?俺はそんなの頼んじゃいないぞ!」
「あら?カエルよりカタツムリの方が良かった?」
「スカイ殿、拙者はカエルが良いかと思うのだが」
「ツルギ...真顔で冗談言うなよ...」
「スカイ?スカイって、あのスカイ=フィールド!?」
「あぁ。けど今はスカイ=ウルメイア=フィールドだ。」
「知ってる!不老不死で聖炎騎士団の団長でしょ!」
メリィは急に背筋を伸ばすと、恭しく頭を下げた。
「どうかあたしを仲間に入れて下さい!」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。お前はまだ子供だろ?」
「すぐに大人になるさ!色気だってちゃんと出る筈!うん!」
「色気は置いといて...この町にいるって事は、お前はまだ学園の生徒だろ?学生の本分は勉強だ。卒業してから出直して来な。」
「うぅ...」
少しキツめに言ってしまったせいか、メリィが半泣きの顔になった。
「全く...子供に色気なんて言葉を教えた奴は、とんでもない奴だな。」
「スカイ殿...童が拙者の足に噛み付いて離れぬ...」
メリィは涙を堪えてツルギの足にしがみついている。確か昔、こんな感じのおもちゃが俺の世界にあった様な...。俺は深呼吸して、メリィをどうするか決めた。
「分かった。じゃあお前の先生の所へ行こう。先生が許してくれたら、入団を許可しよう。」
「ホント!?そう来なくっちゃ!こっち、こっち!」
メリィはツルギの足から離れ、嬉しそうに案内した。
「良いのかスカイ殿?童はすっかりその気だが?」
「先生なら上手く丸め込んでくれるだろ?それより早く行かなきゃ、メリィを見失うぞ。」
「御意。」
メリィの案内で俺達は学園にある教諭室へと着いた。部屋の中には様々な本や魔術に使う薬草や道具の類が沢山あった。まるでファンタジー映画のワンシーンみたいだった。
「フォーロ先生。あたし、騎士団な入って良いよね?」
彼女の言うフォーロ先生は、まさしく熟練の魔法使いの風格を漂わせていた。長くて白いヒゲが何とも言えなかった。
「むぅ...お主、まだ初等科の準備講座をウロウロしているではないか?」
「実践で学びたいの!」
「...やれやれ、口達者な奴よ。どうしても騎士団に入団したくば、"卒業試験"を受けよ。」
魔法使いの卒業試験...一体どんなものか期待すると、フォーロが教卓の下から拳大の石を取り出した。どこにでもある、普通の石ころだった。
「お主に問う。魔法の最高峰とは何だ?」
「え、え〜と...」
「ん?儂は授業で何度も言っとるぞ?」
「...あ!錬金術。」
錬金術と言えば...中世の頃、金を生み出そうと色々な物を混ぜ合わせたが結局は失敗し、その代わり現代の科学の礎となった...というくらいにしか覚えていないが、この世界にも存在しているとは意外だった。
「その通り!華々しい攻撃魔法に夢中になるのは、トーシロの証拠じゃわい!...という訳でメリィよ。この石を金に変えてみよ。さすれば儂はお主に、快く卒業証書をやろう。」
「えぇ!?こんな大きな石にかける錬金術は、高等科にならないと教えてくれないよ!」
「卒業したくばやれ。」
「...えぇい!こうなりゃ自棄だわ。えーい!」
メリィが杖を石に向けると、石が光り形を変えた。
「うわ!?ヘビ!ヘビ!石がヘビになったぞ!」
「あれれ?失敗かな?」
「おいおい!?巻きついて来たぞ!」
「落ち着きなされ。ほれ。」
フォーロがヘビに杖を向けると、忽ち石ころへと形を変えた。そして石が割れると、中から小さな金が出てきた。
「おぉ!凄い!」
再び杖を振ると、金は溶けて、ただの石ころへと戻った。
「おおおおぉ!!」
「...お見事。」
「必要な魔法が使えぬ魔女など、どこの騎士団が受け入れてくれる?...まぁ、実力不相当の夢は抱かず、勉学に励むのだな。」
「くぅぅぅ...」
メリィは何も言い返せず、石ころを頭の上に掲げた。俺は下手すれば怪我してしまうと思い、メリィを止めようとした。
「何やってんだ!?危ないぞ!」
「これを金塊にすれば良いんでしょ!?あたし、やれるもん!ちょっと練習すれば出来るもん!待ってなさい。すぐにこのメリィ様の前に跪かせてやるんだから!」
メリィは捨て台詞を吐くと、重そうな石を抱えながら部屋を出た。
「やれやれ...うちの生徒がご迷惑をおかけしました。どうもすみません。」
「いえいえ、こちらこそ先生に何とかしてもらおうと思ってたので、お手数かけてすみませんでした。」
「...しかし、メリィが聖炎騎士団に憧れるのも無理はない。あの子の祖父母は、あなた方のお仲間でしたからな。」
「えっ?俺達の?フォーロさん、もしかしてあの子は...」




