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湾岸都市アトレアへ

1050年53日目

団員達は湾岸都市アトレアへ向かう準備を進めていた。これからは1回の遠征で、1年以上も王都へ戻らない事が起きるかもしれない。勿論団員達には無理をさせたくないが、魔物が村を壊滅する前に到着する為にはやむを得ないかもしれない。

「傷は良いのか?」

「あぁ。既に完治しておる。これ以上スカイ殿に迷惑はかけられぬ。」

ヤエがツルギの様子を見に来た。2人が会話するのは、これが初めてだった。

「あいつは戦闘じゃ、いつも他より多く傷付いている。そしていつも、他が傷付かないように気を遣ってる。」

「確かに...以前の戦闘ではそうだったな。」

「あいつは団員達の事をなんて言ってるけど、自分の事は二の次にしている。だから、偶にはゆっくり休めって言ってやってくれないか?」

「それは...ヤエ殿が言えば良いのでは?」

「あたしはいずれ退団するつもりだ。これから先はあんたがあいつの側近だ。だから...頼んだよ。」

「承知した。エイドからも、スカイ殿を任されたからな。」

2人の会話がひと段落した頃に、俺はツルギの様子を伺った。

「ツルギ、怪我はどうだ?」

「心配ご無用。いつでも戦えますぞ。」

「そうか。それは良かった。よし!じゃあアトレアへ向けて出発だ!」

「御意!」

ツルギが加わった聖炎騎士団の、新たな道のりが始まった。


1050年120日目

湾岸都市アトレアは、文字通り海沿に作られた街であった。王都やフェルメアの人達の言う事には、この街の造船所は一見の価値があるらしい。となれば事情を説明すれば、一隻くらい貸してもらえるやもしれない。俺達は港へ到着すると、年老いた魔術師がいた。

「すみません。ここにある船で使える物を、一隻使わせてもらえないでしょうか?」

「ん?船を出したいのかね?やめた方が良い。今、大陸近海は魔物だらけだぞ。」

「海に魔物が出るのですか?なら、俺達聖炎騎士団が倒します。」

「ほう、あなたがあの有名な...」

「団長のスカイ=ウルメイア=フィールドです。」

「おお!丁度良かった。私はこの街で薬学の研究をしているロンメルという者だ。スカイさん、あなたに是非とも協力して頂きたいのです。」

「魔物討伐なら任せて下さい。」

「いえ、それは私に任せて下さい。」

「?では、一体何をすれば...」

「あなたの団員を一人貸してもらえないでしょうか?」

魔物はロンメルが何とかするのに、団員を一人貸して欲しいと言う彼の主張に、俺は良く理解出来なかった。

「海の魔物は群れで現れる小魚のような奴です。そんな相手では騎士団も手に負えないでしょう。だが、今私が研究中の薬が完成すれば、蹴散らすのは容易い。」

「じゃあ、その薬で魔物を倒せたら...」

「昔のように船を出す事も出来ましょう。しかし問題は、薬を撒く場所です。薬を撒くには魔物が現れる海に出なくてはなりません。戦う事が出来る人間の助けが必要なのです。」

「なるほど...」

「スカイさん、あなたの騎士団から団員を一人貸してもらえないでしょうか?アトレア以外にも、大陸中の海を回らなくてはならない大変な仕事だ。お借りした団員さんは、騎士団に戻れないかもしれませんが...」

「誰か一人があなたに協力すれば、海の魔物は倒せるんだな?ちょっと待って下さい。」

俺は誰をロンメルに預けるか考えた。船の上で魔物と戦うとなれば、陸以上の苦戦になるのは必然。しかも大陸中の海を回るとなると、その間に衰退しない者でなくてはならない。頭の中で様々な事を考えていると、誰かが俺の頭を叩いた。

「何一人で考えてんだ。」

「ヤ、ヤエ!?」

「あたしが行く。それで良いだろ?」

「けど...ヤエ以外にも適任がいるかもしれないし、大陸で協力な魔物が出た時、ツルギと他の団員達で倒せるか分からないし、それに...」

バシッ!ヤエが再び俺の頭を叩いた。今度は強めだった。

「だから一人で考えんなって言ってんだよ。」

「ヤエ...」

「あんたはいつもそうだ。一人で考えて一人で決めて、一人多く傷付いている。団員の事よりも、少しは自分の事を考えてもいいんじゃないのか?」

ヤエがここまで俺に言うのは、王都に魔物が出た時以来だった。

「スカイ。今日限りであたしは騎士団を辞める。その代わり、海の魔物はあたしに任せろ。」

「いいのか、ヤエ?」

「頃合いだろ?」

俺とヤエは数秒間、無言で見つめ合った。ヤエの瞳には一切迷いが無かった。なら俺も...ヤエの気持ちに応えなくてはならない。

「分かった。この件はヤエに任せる。大変だろうけど、大陸の魔物は俺達に任せろ。」

「あぁ。そうさせてもらう。ツルギ、あたしの炎、あんたに託したよ。」

「御意。ヤエ殿、どうかご武運を!」

俺はヤエをロンメルに預けて、アトレアを出た。予言の年が来るまで、魔物討伐と共に他の街へ行ってみる事にした。ヤエの言葉を胸に刻み、エイドとヤエ...2人の炎を受け継いだツルギと共に、俺達はこれからも進み続ける。

退団者・ヤエ

エイドに引き続きヤエも騎士団からいなくなってしまいました。ニンジャは中々来てくれない職業だったのに...

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