大陸を超えて
{こうして、騎士団の仲間に大剣豪ツルギが加わった。この先の活躍により、騎士団の名はさらに広く、世界中を駆け巡ることとなる。
フェルメアの人々は、決められた役割や規則に縛られ、同時に、そこに逃げ込むことで日々の安寧を得ていた。そんな不死ならざる人々に対して、半世紀先の災厄に危機意識を持って備えろと言うのは、確かに難しい注文だ。しかし青年は怯まなかった。市長の娘やその親衛隊のサムライの頑なな心を忍耐強く解きほぐし、共に戦う。そしてまた一つ、滅びに向かう災いの予言を消す事に成功した。
ただ、魔将ベルフェザードは転生を繰り返す毎に、その狂暴さを増し、世界に垂れこめた雲はまだ晴れそうにない。それでも、女神レイラの顔は穏やかだった。幾たびの試練を経てこの時代、青年が漸く見つけつつあった新しい方針に、理解を示したのである。フェルメアでの役目を終えてサムライを仲間に加えて、騎士団は更に世界を駆ける。}
聖炎騎士団 ・スカイ17歳(∞)・ツルギ25歳(29) 他9名
退団希望 ・エイド・ヤエ
1050年45日目
ツルギが騎士団に加わって、約半年が過ぎた。ヤエよりも寡黙な彼は、エイドのように気軽に話しかける事は無かったが、常に的確で冷静な判断を俺に提案してくれる。そしてエイドは、ツルギへの引き継ぎを終えてバルトウェイに帰った。ウォルターから加わり、王都でも俺を支えてくれた彼は、俺にとって良い友達であった。ヤエは相変わらずであったが、ツルギと上手くやれているか気にかけてくれている。だがいつまで彼女に甘えている訳にもいかず、俺は後任の団員採用に努めた。
そしてこの日、レイラが俺を呼んでいるとテトが教えてくれたので、いつもの場所へ彼女に会いに行った。
「ツルギの様子は如何ですか?騎士団での生活に馴染みましたか?」
「あぁ。ヤエよりも寡黙な性格だけど...余計な事を言わず、動じないところに団員達は信頼を寄せているよ。」
「良かった...。これからの25年は、不慣れな土地での戦いとなるでしょう。騎士団がまとまっている事が重要です。」
「次の予言は、"大陸を超えた場所"に"魔物"が出ると書いてあったな。」
「えぇ。海を越えて未知の土地で戦うのです。どれだけ大きな規模となるか...私にも想像がつかないわ。...準備は抜かり無いように。」
「ありがとうレイラ。皆にもそう伝えるよ。」
未知の土地となれば、気候や地形など...俺達にとって不利な状況での戦闘も考えられる。元の世界にいた頃は、海外へ行く事に胸を踊らせたが、今は不安しかなかった。
俺は騎士団本部で、団員達に次の予言の内容を伝えた。やはり海を越える事に、皆萎縮してしまっている。ヤエとツルギは平然としているが、内心は不安に思っているに違いない。
「海を越える...となると、船が入り用になりますな。」
「あぁ。俺は国王くらいしか頼れる宛が無いけど、2人はどうなんだ?」
「良いんじゃないのか?王様なら何とかしてくれるだろ?」
「ツルギは?」
「.........................」
ツルギは目を閉じて、約1分間黙ってしまった。
「ツ、ツルギ?」
「やはり王に頼むのが筋ではなかろうかと。」
「そ、そうか。熟慮ありがとう。」
今まで俺のそばにいてくれたのは、ゴードンとヤエを除けばほぼ同じくらいの歳であった。早くツルギと上手く付き合えるようにしなくては...と思った。
「...スカイ殿、予言では戦いの期間は25年と...?」
「え?あぁ、そうだけど...」
するとツルギの表情が寂しそうになっていた。
「その間、拙者は海を越え、大陸を離れると...」
やはりツルギはアリアの事が心配なようだった。無理もない...ツルギはついこの間まで、ずっとアリアの護衛に就いていたのだから。
「...ツルギ、俺は団員の幸せを大切にしたいと思ってる。休暇願を出してくれれば、その間他の団員達と何とかするさ。」
「...いえ。拙者の天命は今や世界を守る事。気遣い無用。さぁ、王への謁見に参ろう。」
ツルギは気を取り直して、謁見室に向かった。
「...大丈夫だ、ツルギ。アリアは待ってくれるさ。」




