フェルメアの新たな始まり
1049年121日目
フェルメアの市長舎には市民が集まり、市長の言葉に耳を傾けていた。
「既存の法律の類は、全て!白紙に戻します!」
市長の発言に、市民はざわめき出した。今まで規則や法律を基に生活して行った人々にとっては、雷にうたれたくらいの衝撃だった。
「今後、我々の生活は我々が考え、作っていくのです。間違う事も多いでしょうが...どうか皆さん、怖れないで下さい!」
市長の力強い発言に、市民は落ち着きを取り戻した。
「なお、これからも破滅の予言は引き続き様々な災厄を指し示しています。騎士団に協力するか?街の自衛に努めるか?各人、自分の進む道を決めて下さい。法律はありません。義務もありません。...皆、自分で考えるのです!」
市長の演説は、市民の盛大なる拍手で幕を閉じた。
王都の災厄と共に、フェルメアに現れた魔物を倒した俺達聖炎騎士団は、役目を終えて王都へ戻る事にした。正門でアリアが見送りをしてくれた。
「スカイ=ウルメイア=フィールド。そして騎士団の皆さん。ありがとうございました。...フェルメアは生まれ変わるわ。...いえ、変えてみせる!」
「あぁ。楽しみにしてるよ。アリアが市長になれる日も、そう遠くないかもな。」
「私が市長なんて...」
「アリア、お前の決意、しかと受け止めたぞ。」
「お父様!?」
「しっかり頑張りなさい。その心意気があれば、市長にだってなれるだろう。」
「え...だって...私、女だし...」
アリアが困惑すると、オーロは笑って答えた。
「"女性は市長になれない"という法律は、もう無効だ。」
「ありがとうお父様!!私、頑張るわ!」
「うむ...そしてツルギよ。此度のお主の武勲、見事であった。これからはフェルメアの親衛隊長として、皆を率いてくれないか?」
「親衛隊長!?凄いじゃない!」
「あ...」
市長の提案に、ツルギは少し戸惑った。
「...」
「...もう!!無口な男は厄介ね!」
アリアがツルギの反応に苛つき、声を上げた。
「お父様。ツルギは暫くこの街を留守にするそうよ。」
「え...」
「さぁツルギ、続きはちゃんとあなたの口から言って頂戴。」
ツルギは、がばりと地面に付すと、そのまま頭を擦り付けた。
「拙者、騎士団の一員となり、世界を守りたいと考えております!!入市管理局長護衛の任、途中で放棄する事を、お許し下さい!!」
「...お別れね。」
アリアはツルギの真意を知り、寂しそうに言った。
「...」
「私はここに留まって、良い街を作るわ。誰もが誇らしくなるような、素敵な街を作るわ!それが...私の役目だもの。だから、ツルギ...あなたも自分の役目を果たしたら、また、必ず戻って来て頂戴。フェルメアの街に...私の元に...待ってるから!」
「...御意!!」
アリアは瞳から溢れそうな涙を堪えて、ツルギに別れを告げた。そしてツルギは目を閉じて、アリアと約束した。それを見たエイドは、何かを悟ったようだった。
「スカイ団長...俺、分かったかもしれない...。父さんと母さんがバルトウェイに残った意味、やっと分かった...」
「そうか...なら、いつか帰ってやれ。ガルドもケーラもフランも、きっとお前の帰りを待っている筈だ。」
「はい!...もっと早く分かっていれば、ちゃんと謝る事が出来たのになぁ...」
「?」
「団長...実は俺...父さんと母さんが亡くなっているの、知ってるんだ。」
「!?」
「団長がいない時に机の中見たら、手紙を見つけたんだ。団長は俺の事を考えて、今まで黙ってたんだよな?俺もそうだったんだ。騎士団の皆に迷惑かけないように、ずっと堪えてたんだ...」
「ごめんな、エイド...」
「謝んなくていいさ。父さん達の事を誤解してた俺が悪いんだから。」
「エイド...いつでも退団しても良いんだぞ?後の事は俺とツルギに任せろ。」
「ああ。やっとツルギが騎士団に入ってくれて、俺も満足さ!」
「ヤエはどうするんだ?」
「まだ迷ってる。体はまだ動くけど、お前の見立てじゃ長くないんだろ?」
「まぁな...」
「なら、その時が来るまで居てやるさ。お前が私を必要としなくなるまでな。」
「ありがとうヤエ。なるべく早く後任を見つけるよ。」
この日、聖炎騎士団にサムライのツルギが正式に入団した。そして、エイドとヤエが退団希望を出した。もうすぐ俺は、この世界に来て50年目を迎える。そして大災厄まで、残り50年となった。




