フェルメア中央広場の事件
魔物の倒した俺達は、アリアにこの事を報告した。
「これで、フェルメアの危機は回避出来たな。にしてもアリア、1人で魔物と戦うなんて無茶するなよ。いくらあんたがヴァルキリーだからって...」
「あ、あなた達に助けを求めた覚えは無いわ!」
アリアは礼も言わずに街へ戻って行った。
「団長。あの人がヴァルキリーってのは、本当ですか?」
「あぁ。けど実力は中の下だ。恐らく実戦経験はほぼゼロに違いないな。」
すると門番が俺達の所へやって来た。
「あれ...魔物は...?」
「俺達が退治したよ。」
「そうか...良かった。門から入って来たらどうしようかと...」
「その時は戦ってくれよ。今の時代、いつ魔物が来るか分からないからな。」
「それは...難しいかと思います。」
「何でさ?あんた門番だろ?」
「就業義務に、戦闘は含まれてませんので...」
そう言うと門番はさっさと帰ってしまった。
「何が義務だよ。そんなの、時と場合によって変わるのにさ。」
「...」
俺の愚痴を、ツルギは黙って受け流した。
「あれ?そういやアリアは?」
「!?先程まで、ここにいた筈。」
フェルメアの中央広場では、老人と役人が言い争っていた。エイドとヤエが駆けつけ、少し離れた所で様子を見ていた。そしてその現場には、アリアもいた。
「やれやれ、魔物の次は人間の争い?忙しいものね...」
「おやおや、入市管理局長が何のご用で?」
秘書のラパンも居合わせていたらしく、アリアに態とらしく近づいた。
「街の見回りは、私の仕事よ。一体何が起こったの?」
「簡単な話さ...。酒場で市長就任記念金貨が盗まれた。役人が疑わしい人物をしょっぴいた。すると老婆が公務執行妨害をした。ただそれだけさ。」
「また拷問!?恐怖政治でもするつもり?お父様...市長の名誉をいくら傷つければ気が済むの?」
「...小娘が。私にもう少し地位があれば、名誉毀損で罰せられたものを。」
アリアとラパンの言い争っている間に、老婆と役人の言い争いは、嫌な方向へと向かっていた。
「うちの爺さんは泥棒なんてする人じゃない!ちゃんと調べてから疑っておくれ!」
「うるせえ!ならお前からやるか?串刺し!」
役人が剣を抜くより先に、エイドの拳がうなりをあげるのが早かった。衆人が見守る中、役人が地面に倒れた。
「どこまで腐ってんだよ。この街は!!」
「てっ、テメエ!」
役人が起き上がる前に、ヤエの指が役人の両目の前で止まった。
「串刺しにしてやろうか?」
「ヒィッ!」
すると役人の懐から金貨が落ちた。それは間違いなく、酒場から盗難された物だった。
「あぁ!金貨だ!」
老婆が声を上げると、街中が騒めき出した。そして小声で役人が犯人じゃないかと言い始めた。
「あなたが真犯人ね。窃盗罪は懲役30年の刑よ!」
役人は降参してこうべを垂れた。
「どうするラパン?罪人を庇えば、共謀罪を適用するわよ!」
「くっ...」
ラパンは状況が悪くなり、現場から退散した。エイドの活躍に、街の人々は拍手喝采した。
魔物討伐を終えた俺達は、監獄塔近くでエイド達と合流した。
「フェルメアの為に尽力した市外者には、誠心誠意を持って応えるという特例法があるわ。」
「団長!尽力したのは俺だぜ!」
「あぁ。ヤエから聞いたよ。良くやったな。」
「...本当に残念だけど、あなたの希望を聞きましょう。」
「それじゃあ。レイラさんを釈放してくれ!」
監獄の重い扉が開かれ、中からレイラが出て来た。
「スカイ!」
「無事で良かった。」
「へへっ。美人に牢屋は似合わないや。...ところでアリア、もう一つ。今後俺達が自由に街を歩けるようにしてくれ!」
「二つなんて言ってないわよ!」
「あれれ?希望は一つだけって規則あったっけ?」
「...勝手にしなさい!」
アリアはエイドに揚げ足を取られ、監獄塔を出て行った。
「お主!少々卑怯ではないか。」
「恨むんなら法律に縛られている自分達を恨むんだな。」
「くっ...」
「エイド、さっきは卑怯だと思うぞ。」
「何だよ!?俺のお陰でレイラさんが釈放されたってのに...」
「それは感謝してる。けど人の揚げ足を取る事は止めろ。ツルギも怒ってただろ。」
「確かにそうだけど...これからもフェルメアへ行く度に手続きをするなんて、面倒じゃないっすか?」
「あたしはあの時、"ツルギを騎士団にくれ"って言うのかと思ったよ。」
「ああ!!その手があったか!」
「あったかじゃねぇだろ!」
俺はエイドの頭を叩いた。
「!!痛ってぇなぁ。折角良い事したのに、何で打たれなきゃならないだ。」
「日頃の行いだろ?」
「ヤエもだ!寸止めとはいえ、両目を潰すなんて事するな。想像しただけで背筋が凍るわ。」
「魔物相手には平気なのに。変な奴だ。」
「それはそうと...レイラさん、あの後すぐにいなくなっちゃいましたね?」
「あぁ。けど...また何処かで会えるさ。」
「その時は是非、俺の事を紹介して下さいね。」
「もう一発行っとくか?」
俺が握り拳を見せると、エイドは首を横に振った。王都への帰路でたわいもない話をし、俺はあの場所でレイラに会う事を決めていた。




