フェルメアの監獄塔
1043年12日目
フェルメアは市庁舎、住民区の他に、監獄塔と呼ばれる場所がある。元々規則に厳しいこの街では、ここへ収容される者は1日に最低1人はいるくらいだ。だが最近は4.5人もこの塔へ連れて来られ、厳しい拷問を受けているという噂が立っている。そして今、1人の女性が牢屋に入れられていた。
「何故私が牢屋に入れるのですか!?」
「それがこの街での規則だからだ。酒場でその様な格好は、公共良俗違反の対象となる故な。」
彼女がいる牢屋の前には、親衛隊のサムライ...ツルギがいた。
「アリア殿に感謝するのだな。もしラパンに見つかっていれば、そなたは拷問にかけられていたぞ。」
「私はその様な事をされる覚えはありません。」
「では酒場で何をしていた?」
「世界を救う者を探していました。」
「...戯言はよせ。」
ツルギの問いに対してはっきりと答えた彼女の発言を、彼は即刻切り捨てた。
「いいえ...事実です。」
牢屋の中にいた女性は...女神レイラだった。彼女はスカイ達が魔物を討伐している別の場所で、少しでも協力してくれる存在を探していたのだ。
「世界は、そこに住まう人間全ての努力によって、ようやく存続出来るのです。協力が必要でしょう?」
「...拙者には分からぬ。」
「いいえ、分かっている筈です。ツルギ、あなたの信じるものは掟ですね?」
「!?貴様、何故拙者の名を...」
レイラがツルギと話すのは勿論、会うのもこれが初めてだ。
「では掟の中身は何?規則ですか?...違う筈ですよね?」
「貴様...何者だ!?返答次第では...お主を斬る。」
「私は女神です。ツルギ、あなたの本当の掟とは何か考えてごらんなさい?きっと答えが出る筈です。」
「...失敬する。」
ツルギはレイラを牢屋に入れたまま、監獄塔を後にした。
聖炎騎士団がフェルメアへ着き、スカイはレイラが収容されている監獄塔の近くへと来た。するとそこにはテトが待っていた。
「遅いじゃないか!待ちくたびれたぞ!」
「ごめん。レイラは無事か?」
「早く早く!こっちの牢屋だ...おっと、マズイ!」
テトは何かに気づき姿を消した。するとアリアが俺の元へ来た。
「今度はどんな厄介事を持ち込んで来たのかしら?」
「アリア...監獄塔に収容されている女性を釈放して欲しい。」
「...やっぱり、あなた達の知り合いだったのね?道理で変な女だと思ったわ。」
「頼む!この通りだ。」
俺は深々と頭を下げた。最悪レイラが拷問にかけられる時は、俺が身代わりになる覚悟もした。以前ならレイラがどうなろうと構わなかったが、俺達への助力をしてくれている彼女を放ってはおけなかった。
「いくらあなたが誠意を見せても、罪人を罰するのが規則です。彼女にはちゃんと罪を償ってもらいます。」
すると住民区の方から、老婆の叫び声が聞こえた。
「やめておくれ!爺さんは何もしていないんじゃ!」
「何だろう?」
「放っておけ...あたしらに出来る事は何も無い。」
「そんな事無いだろ?団長、俺ちょっと見て来ます。」
「あぁ、頼むよ。ヤエ、エイドを頼む。」
「分かった。」
エイドとヤエは住民区の方へと走り出した。
「ちょっとあなた達!この街で騒ぎを起こせば、民政争乱罪にかけられるわよ!」
「騒ぎが起これば反応するのが必然だ。」
「街の安心は法律が作ってくれてます。」
「拷問の恐怖まで必要があるのか?」
「...それは...私だって...」
アリアの表情が険しくなった。彼女も本当は拷問は必要無いと思っているのだろう。
「アリア、一つ言わせて貰おう。この街の安心が法律によって作られているのなら、何故法律を守る?」
「何故って...」
「人が法律を守るんじゃなく、法律が人を守るべきなんじゃないのか?」
「アリア殿!魔物が街の正門に向かって迫って来ております!」
ツルギが俺達の元へ来て、アリアに緊急事態を伝えた。
「何ですって!?直ちに正門へ向かいます。」
「待てよ!相手は魔物だぞ。俺達に任せろ!」
「魔物と雖も、許可証無しに街への入市を認める訳には行きません!」
「お待ち下され、アリア殿!」
2人は正門に向かって走り出した。そしてテトが再び、俺の前に現れた。
「予言の魔物じゃないけど...お前は行くんだよな?」
「あぁ。魔物は放ってはおけないからな。テト、必ずレイラを助け出す。だから少し待っててくれ!」
俺は団員達と共に、正門へ向かった。




