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王都での初夜

 魔物の脅威から一時的とはいえ解放された夜、街の灯りは早々に消えた。王都の人々は皆ここ数日間の睡眠不足を解消するべく、寝床に入ったらしい。聖炎騎士団も長旅の疲れにより、ルートスが用意した騎士団本部に着くとすぐに寝てしまった。俺はそれでも寝付くことができずに、夜道を散歩した。気づかぬうちに人気のない路地裏へと来てしまい、そこで背筋の凍る悪寒を感じた。

「夜風に当たって考え事か?呑気なものだな...スカイ=フィールド。」

「ゼオン!!」

振り向くと奴は戦斧を持っていなかった。そしてあの時斬り落とした左腕が元通りだった。

「安心しろ。今は何もしない。ここはゴルゾフの縄張りだ。私が人間共の寝首を引っ搔けば、奴の楽しみを奪ったと怒りを買ってしまう。」

「<破滅の死者>同志の、暗黙のルールってか...。おい!お前やギル、ゴルゾフの他にもまだ仲間がいるのか?」

「...それを教えてはつまらぬだろう?貴様には興味が沸いた。このまま滅びの時が来るまで、じっくりいたぶらせてもらうぞ。」

「なぜ人間を襲うんだ?お前らの、いや、お前は何がしたい?大災厄を経た後、お前は何をするつもりだ!?」

「...お前には分かるまい...」

ゼオンの表情が少し変わった。

「私が100年かけて何を手に入れたいか?...お前などには分かるものか!本当の絶望も知らずに、ただ長く生きているお前などにな!!」

ゼオンが俺に怒りをぶつけた。今までに無かった人間らしい感情を俺に見せた。

「...どういう...意味だ?」

「言葉通りの意味だ...私はお前を憎む!!覚悟しておけ、スカイ=フィールド!」

「俺は負けない!そしてよく覚えとけ、俺の名はスカイ=ウルメイア=フィールドだ!」

「ふん...その強がりがいつまで続くか見ものだな。お前の周りをうろつく人間ならざる者...あやつの事もせいぜい守ってやるんだな。」

「!?お前...なぜそれを?」

俺はレイラの名前を挙げなかった。しかし奴は彼女を知っていた。一体いつどこで...。

ゼオンは俺の問い掛けに答えないまま、闇の中へと姿を消した。


 1036年170日目


 王都に構えた騎士団本部は、入団希望者で連日大盛況となった。酒場のマスターの紹介から、フィリンの勧め、様々な所から来てくれた。自分達の力で街を守れた事が、王都の人々の自信になったようである。

「はい、次の方どうぞ!」

ちゃっかりレダが受付嬢を買って出てくれた。借りは大きく付きそうだ...

「え、えーと...自分、腕力には自信があります!大工仕事で鍛えました!」

彼は剣闘士だった。剣闘士で大工...まるでオルボの様だと微笑んだ。

「実は昔、君のような剣闘士がいたんだ。今は魔女の子と大工工房を開いたらしい。」

「はい!実は自分、オルボ師匠と女将さんの下で3年間修業してきたんです!」

「!?オルボとミリィの下で!」

「はい!出発する時、師匠は仕事でいなかったんですが...今回、自分が志願する際に女将さんが、団長さんにくれぐれもよろしくと仰ってました!!」

「そうか...伝えてくれてありがとう!」

「はい!!」

「嬉しそうだね!秀哉。」

「あぁ!...あの2人が幸せになってくれたからな。」

「うふふ。人間って案外しぶといもんよ。でも、懐かしいね...あのこましゃくれた魔女が女将さんか...」

「いっその事、俺らもそうなるか?」

「えぇ!?」

「冗談だよ。いつもはやられてばかりだからな。偶には俺もやり返さなきゃ。」

「もう!次やったら本気にするからね!」

レダは俺のからかいに怒り、そんな彼女を見て俺は笑った。

「スカイ団長!記録更新だ!今日の入団希望者は30人だったそうだよ!レダさんが勧誘してくれると入りがいいなぁ!流石だなぁ!」

「うふ、まあね。秀哉、感謝は言葉じゃなくて行動で返してね。くれぐれもよろしく!」

「わかったよ。今度1杯おごるよ。俺は飲めないけど...」

俺とレダのやり取りを見て、エイドが不機嫌になった。

「スカイ団長...贅沢だよ。」

「え?」

「いや、こっちの話...それより、あのサムライは来てないか?」

「ツルギの事か?」

「そう!あいつが騎士団に入ったら、あのゴルゾフやベルフェザードだってへっちゃらさ!」

「確かに彼の腕は凄かった。同じサムライに話を聞いても、ツルギ程の逸材はいないって言ってたな。」

「俺あいつと組みたいんすよね。」

「でもツルギはフェルメアの親衛隊だからな...」

「でもまた王都に予言の魔物が来るんすよね。」

「まぁ、そうだけど...」

「やっぱり!ツルギは騎士団に入る運命なんだ!」

「勝手な解釈をするな!ヤエからも何か言って...」

俺はヤエを呼んだが、彼女は本部にはいなかった。

「あれ?ヤエはどうしたんだ。」

「あぁ、ヤエなら両親の墓参りに行きましたよ。」

「墓参りって...」

「大丈夫っすよ。今回の件で、街の人達もヤエに対する考え方を変えましたから。」

「そうか。エイド、俺達も墓参りに行くぞ。」

「えっ、誰の?」

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