王都襲撃 -後編-
魔物の勢いは俺達だけでは抑えきれなかった。このままでは、団員達が動けなくなってしまう。
「エイド!ヤエ!ここからは別行動だ。俺達だけじゃ魔物は倒せない。少しでもいいから、住民達の協力を頼もう。」
「けど団長、王都の人間がそんな事...。」
「頼むんだ!全員に!王都を救えるのは俺達だけじゃない!1人1人がこの街を守れる英雄なんだ!」
「...。」
ヤエは1人どこかへ行こうとしたが、俺はヤエを呼び止めた。
「待つんだ、ヤエ!」
「何だ?」
「聖炎騎士団団長として命令する。...皆を守って、お前も死ぬな!」
「分かった。」
「エイドも頼んだぞ!」
「やるだけやってみるよ。」
エイドとヤエは俺から離れて行った。するとレダが俺の傍に寄って来た。
「ねぇ、秀哉。私も協力したげよっか?あたしのおねだり、効果抜群だよ。」
「借りを作りたいだけだろ?」
「あら、バレちゃった?まあ、期待しててね。」
レダはエイド達の後を負う様に去って行った。
ヤエは魔物から逃げる人々に声を掛け、協力してくれる者を探した。
「逃げていては何も変わらない。手を貸してくれ!」
「そんな事言ったって、俺なんかが加わったって...。」
「いいや、変わる!1人が2人に、2人が3人になる。お前の事は私が守ってやる。だから頼む!」
親を捨てたと言われていたヤエの説得に、住民の心が確かに動いた。
「ヤエ...わ、分かったよ。」
住民は武器を取ってくると言って、逃げて来た方とは逆方向へと走り出した。そしてヤエは再び、一人でも多くの協力者を求めて走り出した。
時は同じく、エイドは酒場で協力者を探そうとしたが、人々は外の事など気にもかけずに酒を飲んでいた。
「何呑気に酒飲んでんだよ!?魔物が出たんだぞ!」
「知ってるよ。けど俺なんかが戦ったってどうもしないだろ?どうせ死ぬなら、好きな事して死にたいね。」
「死にたいなんて軽々しく言うもんじゃねぇ!世の中にはなぁ、まだ十分に生きちゃいない子供が死ぬ事だってあるんだぞ!」
「んなもん知るか!生きるも死ぬも、所詮運任せじゃねえか!」
「この野郎!!」
エイドが男に殴りかかろうとすると、レダがエイドを抑えた。
「はい、選手交代っと!」
「レダさん!」
「ねぇ、お兄さん?あたしの為に戦ってくれたら...後で良い事してア・ゲ・ル!」
「...坊主!武器を貸せ!!」
男は武器を手に酒場を出て行った。
「一丁上がり!どう、エイド?男って馬鹿だよね~!」
「...レダさん、良い事って?」
レダはエイドの腹を殴った。
「本当に馬鹿だよ!!」
俺は王都の外れで、親衛隊らしき騎士を見つけた。
「おい!あんた親衛隊の騎士か?あの区画に隠れている子供達の保護を頼む。」
「ど...どうだろう?王様に伺ってみないと...。」
「そんな事してる暇無いだろ!いいから頼むよ。」
「し...しかし...。」
「さっさとやらんか!!」
後ろで怒鳴り声が聞こえた。するとフィリンが立っていた。
「フィ、フィリン様!」
「責任ならいくらでも取ってやる。いいから早くしろ!」
「は、はい!!」
騎士は慌てて子供達の保護へ向かった。
「ゴメンよ。僕以外の騎士は腑抜けてて...。」
「構わないさ。暫く一緒に来るかい?フィリンがいれば、騎士も言う事聞くだろう。」
「まぁね。王都の騎士は皆僕の教え子さ。」
-2時間後-
ヤエとエイドが俺達と合流してきた。
「スカイ団長!こっちの方に魔物はいないよ!」
「私の方もだ。...街の皆のお蔭だ。」
「そうか、あとは...。」
「きゃあああああ!!」
何処からか女性の叫び声が聞こえた。
「スカイ団長!あっちの方だ。」
「エイド、ヤエ、フィリン。急ぐぞ!」
俺達が駆けつけてみると、刀を構えた男がたった1人で魔物と向かい合っている所だった。猛々しく吼える魔物を前に、男は眉ひとつ動かさず、冷静に隙を伺っていた。
「あれ?...あいつは、確か...。」
ズバッ!!それは一瞬の出来事だった。男の居合切りが、魔物を一撃で仕留めたのだった。斬られた魔物は暫く周りをきょろきょろしたが、やがて大きな音を立てて倒れた。
「アリア殿、御怪我はござらぬか?」
「すげぇ!なぁ、あんた!あんたってサムライだろ。どこで覚えたんだ?」
エイドがツルギの剣技に興味津々だったが、ツルギは無反応だった。
「俺は聖炎騎士団のエイド!あんた、うちに入団してくれよ!」
「何言ってるのかしら?」
するとアリアが俺達の前に現れた。
「遅いじゃないの!親衛隊!ツルギがいなかったら今頃私、魔物に食べられてたわよ!」
「え?いや、俺は親衛隊じゃ...。」
「アリア殿、早くこちらへ。」
「王都の管理の甘さは問題ね。規則はどうなってるのかしら?全く...。」
「あんたツルギって言うのかい?俺さ、あんたみたいなやつと組んで...。」
「魔物がもう1匹。街の森へ逃げ込んでおるぞ。」
「!?何だって?」
「急ぐのがよろしいかと。拙者はこれにて、御免!」
「え?あ、おい!」
「エイド!最後の魔物を倒しに行くぞ!」
森に逃げ込んだ魔物を倒し終え、王都の中央広場へ戻ると、魔物を気配は無かった。
「やった!スカイ団長、俺達勝ったんだ!」
「あぁ、俺達だけじゃない、街の人々の協力があっての勝利だ。」
「良かった。」
俺は予言書を確認すると、内容が変わっている事を確認した。すると、レダが俺達の方へ走って来た。
「秀哉!おめでとう!さぁ!あたしの祝福のキスを受けて!!」
「えっ!?いや、それは...。」
「レダさん!俺にも!!」
するとヤエが俺とレダの間に入って来た。
「スカイ、王様が呼んでいる。」
「あ、あぁ。そうか!レダ、またな!」
俺はエイドを引っ張りながら、城へと向かった。
「...やるわね、あんた。」
「...。」




