王都襲撃 -前編-
再び、前•中•後の3部作です。
<中央広場>
「アリア殿、こちらへ!」
「全く!冗談じゃないわ!王都は一体どうなってるの?」
アリアという女性とサムライの男性に俺は声をかけた。
「おい、魔物がいたのか?どこだ?」
「そこの角に出たのだったら、ツルギが倒したわよ!あなた、この街の親衛隊かしら?」
「いや、俺達は聖炎...。」
「魔物襲来時の訓練規則は作ってなかったの?」
「アリア殿!早くお逃げ下さい。」
「不慮の事故への備えが緩慢ね!」
アリアとツルギは俺達を素通りしていった。
「何だ?今の...。」
「スカイ!こっちだ!ヤエが魔物を見つけた!」
エイドが俺に呼びかけた。考えるのは後にして、俺は騎士団の皆と共に走りだした。
<公共施設区>
魔物はレベルが中々高かったが、雪山を超えた俺達には苦戦する相手ではなかった。魔物を倒し、俺はヤエにふと質問した。
「ヤエ?お前、王都の出身なんだって?」
「...そうだ。」
「家族は?早く助けに行かないと。」
「気にするな。魔物が先だ。」
「ヤエ...。」
<周縁部>
俺達が駆けつけると魔物は既に倒されていた。
「ここに現れた魔物は、一体誰が?」
「刀を持った男の人でしたけど?一刀両断でズバッと!カッコ良かったなぁ。じゃあ、俺は、これで...。」
「ちょっと待てよ!あんたも一緒に戦おうぜ!この街を守らなきゃ!」
「だけど...戦うのは親衛隊や騎士団の仕事だろ?俺は...ただ平和に生きたいだけなんだ...。」
住民のやる気の無さに、エイドは激怒した。
「!じゃあいいよ!邪魔だ!大人しく家の中で震えてな!」
「ひっ...。」
住民はエイドに怯え、さっさと逃げてしまった。
「エイド、いらつくんじゃないよ。ただでさえ街の人は混乱してるんだ。」
「だってだ!平和で楽しくなんて...うちの親父やお袋と同じような事言うから。ウォルターの利己主義にも腹立ったけど、王都の事勿れ主義はもっと許せねぇ!現に!今!この世界で!問題が起きてるって言うのにさ!!」
「金で取り繕った平和が偽物であるって事にすら、気付かない馬鹿が多い街なんだ。見逃してやれ。」
普段は口数が少ないヤエに説得され、エイドは冷静を取り戻した。
「...あぁ。取り乱しちまった。悪い。俺、家出同然に飛び出しちまってさ。両親に似た奴等見ると、まだ心がざわつくんだ...。」
「気にするな...私も昔はそうだった。」
「ヤエも!?」
「...」
<スラム街>
「王都にまで、こんなに魔物が攻めてくるなんて、これも予言の災いか...?」
「諦めるな!親友!」
どこからか声が聞こえた。しかも”親友”って...
「フィリン?フィリンか!?」
「あぁ。随分歳を取ったが、まだまだ現役さ。」
「ありがとう。...そうだな。諦めてなるものか!」
-30分後-
魔物を倒し、ヤエが一軒の家の前で立ち止まった。
「どうしたんだ?」
「...ここ、私の家だ。」
「そうか、無事だと良いな。」
「...。」
するとヤエの家の近くから、1人の女性が出てきた。
「お前、ヤエじゃないか!?今頃帰ってきて、何のつもりだい?」
「父と母は?」
「死んだよ!」
「!!」
「魔物のせいか...。」
「違う!ヤエ、あんたがこの家を出てすぐに、彼らは首を吊ったんだ。金の切れ目が縁の切れ目と言うけどね...貴族の爵位を取られ、一文無しになった親を見捨てる子供がどこにいるんだい!」
「私は捨ててなど...。」
「帰っとくれ!彼らもあんたなんかに弔われたくないだろうさ!」
女性はヤエを追い払い、ヤエは何も言えなかった。
「...。」
「ヤエ...。」
「私は金が嫌いだった。金なんてこの世から消えてしまえば良い。金は人間を腐らせる。両親も彼らを取り巻く人達も、皆金で駄目になった。善人が金のせいで歪んでいくのを、私はそれ以上見ていられなかった。」
ヤエは心の内を俺達にさらけ出した。いつもは冷静な彼女が、感情的になった。そしてその熱が徐々に弱まった。
「だから逃げたんだ。この街から、両親から...。」
「けど、ヤエは帰ってきた!」
エイドがヤエを励ました。
「<深淵>を出て、雪山越えまでして、故郷の危機を救おうとしてるじゃねえか!お前は親を捨ててなんかいない。俺が保証する!」
「...ありがとう。けど、私が逃げた事に変わりはない。両親からだけじゃない。雪山でも、私は逃げた。」
「違う!それは違うぞ!」
「逃げたんだ!」
ヤエが再び感情的になった。
「ユナもリリも犠牲になったのに、私は1人のうのうと自分の体を休めてた。」
「あれは、ヤエが皆に迷惑をかけないようにだろ?」
「そうだぞヤエ、あの時ヤエは俺と約束してくれたじゃないか!」
俺は2人を落ち着かせて、話し始めた。
「ヤエ、エイド、頼むから...自己犠牲なんて事だけは絶対にやめてくれ!これは...団長命令だ!」
「スカイ...。」
「約束だぞ。俺達は全員で生き残る!1人でも死んだら、俺達の負けだ。」
「了解、団長!」
「...了解だ。」
エイドとヤエは再び魔物捜索に走りだした。
「強くなったな。秀哉。」
「まあな。考え方を変えたんだ。これからは自分の意志で行動しようって。」
「そうか、僕は他を見てくる。お互い生き残ろう!」
「ああ!」
俺はフィリンと別れ、再び魔物討伐へ向かった。
明らかになったヤエの過去、そして再会した親友フィリン、偽りの平和を取り繕ってきた王都を聖炎騎士団は救えるのか?




