王都リゼルへ
「雪が無くなった。見ろよ!いい景色だぞ。」
ライが俺達に呼びかけた。しかし俺は、未だに2人の死から立ち直れていなかった。
「...這い上がろうぜ、秀哉。ユナとリリに恥じない団長でいてくれなきゃ、皆ついていけないぜ。」
「あぁ...ありがとう、ライ。」
「それと、こんな時に言うのも何だが...僕が使い物にならなくなったら、遠慮無く言ってくれ。お前やエイドに背負われるのを想像すると、恥ずかしいしな。」
「ライ...。」
「お前の見立てじゃ、もう長くないんだろ。体のあちこちにガタがきてやがる。なぁに...辞めてもやる事はあるしな。」
「リーフの元へか?」
「お見通しか。あぁ、そうだ。看病か墓参りかは分からないけどな。」
「分かった。考えとくと。」
俺は胸を張って空を見上げた。そして思いっきり深呼吸した。気のせいか、いつもの空が少し違って見えた。
「エイド、ゴメンな。君の言う通りだった。僕は、自分の事しか考えていなかったよ。」
「謝ったりしないでくれよ!過ぎた事は帰ってこない。それに...スカイ団長だって、全力で考えた末の決定なんだろ?」
「うん。」
「なら、進むしかないじゃないか。これからもね。」
「あぁ、僕は...いや、俺はもう、絶対に犠牲を出したくない。その為に、進むんだ。...皆、ついて来てくれるか?」
「勿論!」
「あたしもな。」
「頑張れよ、スカイ団長。」
「あぁ、王都までは下り坂と平地だ!一気に行くぞ!」
{ウォルターの災厄を回避し、レオハイムの砦を急襲し、命懸けで時計塔の番人を救った。異世界から来た青年に女神が発した言葉は「急ぎなさい」の一言であった。青年は誰一人架けることなく、騎士団の戦力を限界まで引き上げて臨んだが、そもそも無謀な計画。痛ましい結果が導かれるのは不可避だった。未来ある神官、そしてひとつの場所から動けずに永遠の時を過ごしてきた神竜の少女。彼女達の尊い自己犠牲は、青年の方針を根底から覆すに十分な衝撃であった。立ち止まり、悔恨と懺悔の日々を送れたら、彼はどれだく慰められたことだろか?だが時は待ってくれない。次の災厄に向けて、積み重なっていく。騎士団は傷も癒えぬまま、大陸の中央都、アルマー平原に位置する王都リゼルにその拠点を移す。}
1036年 聖炎騎士団
・スカイ17歳(∞)・エイド25歳(20)・ヤエ21歳(25)
退団希望者 ・ライ
戦死者 ・リリ ・ユナ(ウルメイア・ラ・マ・ドラグーン)
王都へと向かう道中で、俺は1つの決心をした。
「皆、余談何だけど、変えようと思うんだ。」
「変えるって...何を?」
「俺の名前をさ。どうでもいいかもしれないけど...。」
「天野秀哉にするのか?」
「それは前の世界の本名で、今はスカイ=フィールドさ。」
「どんな風にだ。」
「スカイ=ウルメイア=フィールドだ。」
「”ウルメイア”って!?」
「ユナを...神竜達の事を忘れないようにって意味を込めて...。」
「いいんじゃないか。」
「俺も、ユナもきっと喜んでくれますよ。なぁヤエ!」
「あぁ。」
「ありがとう。本当にありがとう。」
1036年140日
ようやく王都へ到着したものの、時すでに遅し。王都のあちこちで魔物が暴れまわっていた。魔物の恐ろしい雄叫びと絶え間なくあがる火の手に、王都の人々はパニック状態であった。
「だ、誰か!助けてくれ!」
王都住民の若者が俺達の元へ駆けつけた。
「どうした!?」
「あ、あんたは?」
「俺達は聖炎騎士団だ。魔物はどこだ!?」
「至る所だよ!何でもいいから何とかしてくれ!」
「スカイ、どうする?」
「片っ端から倒すしか無い。大丈夫。俺達はやれるさ!」
「...あれ?あんた...。」
「先行くよ。」
若者はヤエの顔見て、何かを思い出したようだ。だが、ヤエは1人で先へ行ってしまった。
「?ヤエと知り合いか?」
「ヤエ!...ははぁ...今更どの面下げて帰って来たんだか...。」
「...ヤエは王都の出身だったのか?」
「あんた知らないのか?あいつはな...」
若者が台詞を言い切る前に、魔物の雄叫びが響き渡った。
「ひぃ!も、もう駄目だ!」
若者は一目散に逃げてしまった。すると視界の先に2人の男女が見えた。
とうとうライが暇乞いをしてきました。約30年も主人公を支えてきた彼には、私も感謝しています。波乱のスタートを切った王都リゼル編、こうご期待!




