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忘れられた5の種族

 突然ユナが光に包まれた。そして目を開けると、目の前には純白のドラゴンがいた。大きさは変身したギルと同じ位であり、雪が舞う空へと飛んだ。

緑と白、2体のドラゴンが俺達の真上でがっぷり組み合った。ギルが吐き出す炎により雪が解け、白きドラゴンはかわすので精一杯の様だった。白きドラゴンが一瞬下界を見下ろした後、猛々しく吼えた。

『さようなら』

俺の心にユナの言葉が響いた。白きドラゴンは自らの炎をその身に纏い、巨大な火の玉となってギルに飛び込んだ。ユナの特攻には流石のギルも致命傷を負ったらしい。悲痛の雄叫びを挙げると、ギルはよろよろと北の空へと飛び去って行った。

焼け焦げた白きドラゴンは、空中で灰になった。灰によって黒く染まった雪が、俺の頭や肩に積もった。

「ユナ...ユナぁ...ユナぁぁぁーーーー!!!!」

ユナの死に俺は絶叫した。しかし、現実は残酷で、更に追い打ちをかけて来た。

「スカイ団長!魔物の残党だ!」

「しっかりしろ!お前にはやらなきゃならない事があるんだろ!?」

「ちぃ...ちっくしょぉぉぉーーーー!!!!」


 俺の怒りと悲しみは、魔物を片付けても収まらなかった。怒りが収まるにつれ、悲しみが反比例の様に深まった。

「やっと超えられたな。雪山。」

「...」

「神竜なんて、おとぎ話の中だけかと思ってた。」

「昔、爺さんから聞いた<忘れられた5の種族>は、神竜達の事だったんだな。」

俺はユナの事、そして人間達に復讐しようとするギルの事を忘れない為に、神竜"達"と言った。

「僕らは忘れないさ。ユナの事も、リリの事も...」

後ろから誰かが向かってきている足音が聞こえた。それはヤエとレミリアだった。

「遅くなったな。もう大丈夫だ。」

「彼女の回復力には驚きました。...あら?リリは...。」

「レミリアさん...申し訳ありません...。」

俺は2人にリリの小さな亡骸をみせた。レミリアは声も上げずにすがりついた。俺は剣を捨てて、レミリアに土下座した。こんな事したって無意味なのは誰もが知ってはいるが、俺にはこれしか出来なかった。

「約束を...守れませんでした!騎士団の皆...本当にごめんなさい!!」

俺は素直に謝った。堅苦しい言葉は使わず、ただただ謝った。吹雪の寒さよりも、リリとユナを死なせてしまった責任の方がずっと辛かった。

エイドは背を向け、舌打ちと共に荒々しく雪を蹴り散らした。

ライとヤエは、静かに視線を下に向けた。

「顔を...上げて下さい。」

レミリアが俺に話し掛け、俺は恐る恐る顔を上げた。

「あの子は...リリは最期に...笑ってましたか?」

「はい...大事なものを見つけたと...笑ってました。」

「そうですか...良かった...。」

「俺の...僕のせいです。僕がもっと...もっとしっかりしていれば...。」

「いえ...雪山を超えると決めた時点で、私もリリも覚悟は出来ていました。さぁ!もう大丈夫ですわね。私達の案内はここまでにしとうございます。」

「...僕には...覚悟が足りなかった様です。世界を守ると言いつつも、いつも皆が傷つかない事を考えてた。誰1人犠牲を出さずになんて...僕が甘かったんだ!」

「団長様...自分を責めないで下さい。それでも...自分を責め続けるというのなら...。」

「...。」

「この世界を救って下さい。それがあの子にしてやれる。唯一の償いです。」

「...分かりました。」

レミリアは深々と一礼すると、リリの亡骸を抱え、修道院への帰途についた。


 俺は団員達と少し離れ、人気の無い山道を歩いた。目的は...レイラだった。

「レイラ!出てこい!いるんだろ!?」

「どうかしましたか?」

レイラは音も無く現れた。相変わらず彼女は無表情だった。」

「雪山を超えたよ。2人の犠牲者と引き換えにな...。」

「しかるべき結果です。気にせず、王都へ向かいなさい。」

「ふざけんな!何だよしかるべき結果って!?ユナもリリも死んで当然って事かよ!?」

「予言書以外の事に気を取られてはいけません。それらは全て脇道なのです。」

「無駄の次は脇道か...レイラ、お前の言う正しさを、俺は認めない!」

「な、何を言い出すのですか!?女神に間違いなどある筈がないでしょう?」

「そんなの誰が証明したよ!根拠は何だ!?納得出来る説明をしろ!!」

「そ、それは...。」

「あんたは涙を見た事があるか?誰かが涙を流す...その現場に居合わせた事があるのかよ!?」

「...。」

「無いんだな。あんたはただ遠くから見ているだけで、自分では何もしようとしないんだからな!」

「天野秀哉!目を覚ましなさい!あなたがこの世界に呼ばれた使命を、良く考えて...。」

「もうウンザリなんだよ!!」

パシッ!!俺はレイラの頬を思いっきり引っ叩いた。乾いた音が雪山に消えて行った。

「俺は今日まであんたの”正しさ”を鵜呑みにしてきた。けどもう、あんたの言いなりにはならない。自分で考えて行動し、後悔も自分の意志でする。」

「やれやれ。何熱くなってんだか。!!お前、レイラ様に何しやがった!内容次第じゃ、僕が...。」

テトが俺達の間に入って来た。

「”友達になってくれて、ありがとう”」

「な、何だよ!?」

「リリの伝言だよ。彼女は死んだ。」

「!!嘘だ!」

「嘘じゃない!人間は、人間はあっという間に死ぬんだよ。」

流石のテトも動揺を隠しきれていない。

「もうお前がどこを飛んでいようが、リリがお前を見つけてくれる事は永遠に無い。」

「うそ...だろ...。」

「リリは最期までお前の事が好きだった。その事だけは忘れないでくれよ。」

「...。」

俺はレイラとテトに別れを告げず、皆の元へと歩きだした。

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