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雪山強行軍 -後編-

 戦闘は約10分で終わった。魔物が吸収攻撃を仕掛ける前に倒す事が出来たが、前線に出した団員の体力は、半分まで削ってしまった。するとヤエが俺に話しかけて来た。

「スカイ、悪いがここまでだ。」

「そうか...ゴメンよ。エイドはリリを背負っていて、ヤエ以外に適任がいなかったんだ。」

ライがヤエの怪我を見た。それはあまりにも酷かった。

「この腫れは酷いな...。凍傷と膿んだ傷口、最悪の相乗効果だ。下手すりゃ両足切断だぞ。」

俺は想像しただけで、気持ち悪くなってしまった。もっと気持ちの悪い事を何度も経験しているのに、こればっかりは慣れる事は出来ない。

「最後まで行けると思ったんだがな。」

「いいからさっさと戻って養生しろ。」

「ライの言う通りだ。レミリアさん、ヤエをお願いします。」

「分かりました。砦に戻れば、薬草を煎じる事が出来ます。」

「感謝する。」

レミリアとヤエが砦に戻った後、再び魔物が現れた。

「またか!?エイド、お前も今度は戦え!」

「分かってるよ!」


 <レイス山頂>

レミリアがいない為、先導はリリとなった。小さい体で懸命に俺達を案内した。

「あと少し!ここを超えれば、山が終わるよ!」

「そうか...。皆!もう一踏ん張りだ!」

必死に雪道を歩いていると、俺の防寒着が引っ張られていた。振り返ると、リリが握りしめていた。

「どうしたリリ?」

「...団長さん...虫さんに伝えてくれる...?」

「え?」

「友達になってくれて、ありがとうって...。」

「リリ!?急にどうしたんだ?」

俺はリリの言葉から、最悪の予感を感じた。

「!!団長さん、危ない!」

リリが俺の背中を思いっきり押した。俺はその勢いで雪に埋もれ、体勢を整えて後ろを振り返ると...


<セリア山道>

「皆見て!道がなだらかになってるよ!私達...超えられたのよ!」

ユナが皆に声をかけたが、俺は応えられなかった。何故ならリリが俺の腕の中で血を流し、苦しそうな顔をしていたからだ。

「リリ!?」

「俺を庇って、リリが魔物に...。」

「リリ!リリ!しっかりして!目を開けて!!」

ユナが必死にリリに呼びかけた。リリは息を切らしながら、目を開けた。

「ユナ!?...へへ...リリも...大事な...もの...見つけたよ。」

リリは震える手で俺達の顔を順番に差した。

「皆...とても...大事。...友達...ね?」

「そうね...。そうだわ!あたし達は仲間。友達よ!」

「へへ。リリ、ちゃん...と...守れた...かなぁ?大事なもの...とっても...大事な...。」

「リリ!もういい!喋らないでくれ!!」

「団長...さん。ごめんね...お嫁さんは...無理...かも。」

「そんな事ない!待つよ...リリが大人になるまで、何年だって待つから!!」

「今度生まれる時は...虫さんが良いな。羽根があれば、どこでも...飛べるよね。団長さんの...元の世界へだって...飛んで...行けるよね。」

「あぁ勿論さ。だから、だから!」

「.......」

「リリ?リリ!...リリぃぃぃーーーーーー!!!!」

リリが俺の腕の中で安らかに眠った。俺の悲痛の叫びが、雪山に響き渡った。

「雪山でお遊びか?」

悲しみに打ちひしがれる俺の前に、ゼオンが無情の一言を放った。

「ゼオン!!」

「言った筈だぞ。貴様と違ってそいつ等はあっと言う間に死ぬと。...ま、それだけの足手纏いを抱えてここまで粘った気迫は誉めてやる。」

「お前だったのか...この山に魔物を放ったのは...。」

「あぁ。だが暇潰しにも飽きた。そろそろ決着をつけてやろう。」

「ゼェェェェェオォォォォォォォン!!!!」

俺は大剣をゼオンに向けて走り出した。ゼオンは戦斧で俺の剣を受け止めた。

「ほぉ、貴様と初めて対戦した時とはまるで違うな。...いや、あの時は虫けら程度も無かったか。」

「俺は絶対にお前を許さない!人の命を虫けら扱いするお前だけはぁぁぁ!!」

「貴様もそう思っていたからこそ、この山を越えようとしたのだろう?」

「違う!俺はお前と同じじゃない!同じであるものかぁぁぁーーー!!!!」

俺は剣を引いてゼオンの体勢を崩し、思い切り大剣を振り下ろした。

ザシュッ!!俺の大剣がゼオンの左腕を切り落とした。だがゼオンの切り口と斬られた腕からは、赤い血が流れていなかった。

「くっ!この程度で俺に勝ったと思うな。まさか、俺が1人でここへ来たとでも思ったか?」

「!やはり、ギルもいるのか!?」

「キッシャッシャッシャッシャッシャ!また会ったなぁ。お前らもそこの小汚い死体の様に、捻り潰してやる!」

ギルが俺に向かって飛びかかろうとしたが、誰かが俺の前に飛び出してきた。それは、ユナだった。

「やめて!ギル!」

「!ユナ、お前もいたのか?何故だ、何故人間側に味方する?」

ギルの反応は西の砦と同じだった。ユナのお蔭で頭に上った血が落ち着いていった。

「好きだからよ!人間が。」

「笑わせるな!我らよりずっと愚かな種族のくせに、悪知恵だけは働き、我らの地位をまんまと奪った人間だぞ!お前を時計塔に縛り付けておいて、守ってもらってる事に気付かぬばかりか、蔑みすらした人間だぞ!この略奪者共のせいで、我ら一族がどれほど辛酸を舐めてきたか...忘れたとは言わせないぞ!」

「わかってる!...でも...好きなの。秀哉には、人間には...希望がある。だから、私は彼らに賭けたい!ギル。あなたは間違ってるわ。魔物如きに、何を託すの?あなたこそ、誇りを失くしたの?」

「人間なんかとじゃれ合うお前に、我らの誇りを語る資格など無い!そんなにこいつらが好きなら、道ずれにしてやるよ!」

ギルが姿をドラゴンへと変えた。するとユナは俺達の方を向き、静かに笑った。

「秀哉...私、楽しかった。気が遠くなる位の時を生きてきた中で、とても楽しかったわ。ギルは私に任せて。」

「駄目だユナ!俺も、俺達も戦う!!」

「あなたの役目は皆を連れて道を切り開く事!世界を続ける事!リリの意志を無駄にしないで!」

「一人でどうするんだ...?」

「さぁ、これを...。」

ユナは俺に赤い石がはめ込まれた指輪を手渡した。

「<竜の涙>と呼ばれるものよ。きっと...あなた達を護ってくれるわ。」

「ユナ...君は一体?」

ユナは唇を噛み締め、ギルの方へ向き直った。

「...我は誇り高き神竜、ウルメイア・ラ・マ・ドラグーン!我は主 天野秀哉を守護する!ギル!おぬしの相手になろうぞ!!」

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