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雪山強行軍 -中編-

今回はちょっと長めです。

 <アストナ駐留所>

俺達はようやく雪と風を凌げる場所に辿り着いた。しかしここで長居は出来ない。団員達には申し訳ないが、あと1時間したら出発しよう。

するとエイドが俺の横に腰を下ろし、小声で俺に囁いた。

「団長、まだこの旅を続けるのかい?」

「...。」

「ヤエ、ユナ、リリ...女の子達は皆限界だよ!」

「...。」

「魔物もヤケに多いし、きっと奴等の仕業なんだ!」

「分かってる。けどこのままじゃ、この世界が...。」

「スカイ団長!未来の前に、今を見つめ直してくれよ!」

エイドの怒鳴り声に、皆が驚いた。確かにエイドの言う通りだ。俺も本当は、こんな事したくないのに...

「昔、似たような言葉を、お前の母親...ケーラに言われたよ。」

「母さんに?」

「ちょっと頭を冷やしてくる。ライ、皆を頼む。」


 俺は1人、砦から外へ出た。吹雪の音を聞きながら、真っ白な世界を見つめていた。あと1時間と決めていた休憩も、もうどれくらい経っただろうか...。

するとすぐ近くで翼のはためく音がした。振り向くと、レイラが背筋をしゃんとして立っていた。吹雪の寒さをものともしていなかった。

「...。」

「あんたの言いたい事は分かってる。”直ぐに出発しなさい”だろ。」

「ならば、早く皆に伝えなさい。」

「なぁ。もっと良い方法があるんじゃないのか?なんで俺達だけがこんな目に遭わなきゃならないんだ?」

「私は女神。そして天野秀哉、あなたの手には予言書がある。答えは明白でしょう。余計な考えは無用です。」

「俺は人間だ。機械のように動くだけじゃ無く、考える事だってあるんだ。」

「運命はその機械の様に動いています。結果を気にせず、進みなさい。」

レイラは、いや女神は非情だった。もし俺に勇気があれば、彼女の顔面を殴る事が出来たのだろうか?

「あっ!団長さ~ん。」

遠くからリリが俺を呼んでいた。

「リリ!砦にいなくて良いのか?外はまだ寒いだろ?」

「うん。でも団長さんに見せたい物があるの。」

「見せたい物?」

「虫さん!」

リリの手の中に、妖精テトが収まっていた。

「...よぅ。」

「リリね。小さい頃からずっと虫さんとお友達なの。いっぱいお話したよ。団長さんが”いせかい”から来た事も、虫さんが教えてくれたの。」

「それで不老不死も知ってたのか...。」

「あ、えー、う、うぉっほん。リリ。そろそろ砦に戻った方が良いぞ。」

テトは下手クソな咳払いをしたが、リリは顔をしかめた。

「えー!もう?いつもみたいに遊ぼうよ。あっ!そうだ、キラキラやって!キラキラ!!団長さんにも見せてあげたいの!」

「...1回だけだぞ。」

テトは虫羽根をパタパタと忙しなく羽ばたかせた。光る鱗粉が舞い落ちて、白い雪をふわりと照らす。リリは光を掴もうと両手を広げ「キラキラ!」と叫んだ。

「虫さん、ありがとう!リリと団長さんの結婚式には虫さんも呼んであげるね!」

リリは笑顔で砦の方へと走りだした。

「”虫さん”って、お前の事だったんだ、テト。」

「誰が人間なんかと友達だ!」

「言ってねえよ。」

「...。あいつ、変なんだ。あいつだけはいつも僕を見逃さないんだ。どんなにこっそり飛んでいても、あいつは必ず僕を見つけるんだ。だから...。」

「リリと友達になったと...。」

「知り合いだ!...強いて言うならな。レイラ様には絶対言うなよな。」

「分かったよ。それより...さっきのキラキラだけど。」

「?」

「それで空を飛べるようになったり...しないよな?」

「お前...偶にアホだよな。」


 俺は砦に戻り、皆の顔を見た。団員達は少しは休憩出来たものの、まだ疲労が残っていた。そして皆、俺を恨めしそうに見つめていた。だが俺は、意を決して皆に告げた。

「...出発しよう。」

「どうして!」

真っ先にエイドが反発した。だがライがそれを止めてくれた。

「よせ!スカイは団長なんだぞ。」

「だけどよ!」

「一番辛いのはスカイなんだぞ。戦闘じゃ一番傷ついて、皆の気持ちを知った上で告げなきゃならない...お前だって分かるだろ。」

「...けどよぉ。」

「エイド、こんな団長で本当にゴメン...どうしても納得出来ないなら、その思いを俺にぶつけてくれ。」

「団長...ぅおおおぉぉぉぉぉーーー!」

エイドの拳が俺の右頬に当たった。折角休めた体力を振り絞ったかの様な一撃だった。

「皆、俺の決定は変わらない。俺達はこのまま進む。リリとユナ、ヤエは行けるか?」

「うん!平気だよ。」

「大丈夫よ、秀哉。」

「...。」

リリとユナは平気そうだ。けどヤエは無言だった。するとレミリアが俺にそっと囁いた。

「団長様...。」

「ヤエか...。」

「はい、大分傷口が開いてしまいました。このまま進むのは...。」

「内輪話は好きじゃない。」

「すっすみません...。」

「出発しよう。」

「ヤエ!!」

「自分の事は自分が一番分かってる。本当に駄目な時は必ず告げる。約束する。」

「...今の言葉、忘れるなよ。」


 <レイス山中腹>

俺達は再び歩き出した。幸い吹雪は強まっていなかった。しかしそれでも皆の疲労が軽減される訳では無かった。

「ユナ、大丈夫かい?顔色が悪いぞ。」

「まるで一生分の寒さを感じているみたい。けど大丈夫。それよりもリリが...。」

エイドがリリを見ると、リリはふらふらと歩いている。

「...。」

「リリ!しっかしろ!お前だけでも砦に戻れ!」

「無理じゃないもん!最後まで歩けるもん!」

「胸まで雪に埋もれてるじゃないか!そんなんでどうやって歩くんだ!」

エイドは必死にリリを引き返すよう言うが、リリは首を振って反対した。

「行く!行くもん!!...やだよ。1人はやだよ!」

「全く...じゃあ俺に負ぶされ。嫌なら引き返せ。」

「ごめんね。リリ...早く大きくなりたいよ。」

「魔物よ!」

ユナが視界に魔物を捉えた。相手は生命力吸収をしてくるマッドノーズという飛行獣種だった。

「くそ!複数攻撃に体力吸収、今の俺達には最悪の相手だ...。」

「スカイ、一気にケリを付けるぞ!」

「ああ、前線は俺とヤエ、サムライ、剣闘士だ!ライは剣闘士、魔女はサムライ、魔術師はヤエを補助!」

俺達は体力を奪われる前に、全力攻撃の編成で立ち向かった。


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