雪山強行軍 -前編-
今回は前・中・後と3部作でお送りします。
<レヴァレス山脈 アグナ山中腹>
レヴァレス山脈の道なりは過酷だった。先ずはアグナ山から登り、次にレイス山、最後にセリア山道を下る計画だ。吹き荒れる吹雪により、みるみる内に体温を奪われていく。防寒着は真っ白になり、息をする度肺が凍りつきそうだった。
「皆、足元には十分気をつけてな!」
俺達はレミリアの先導の元、懸命に山道を登った。
「これでまだ登り始めなんだよな...。」
「こんな時に魔物と戦いになったら、俺達あっという間に力尽きちまうよ。」
「そうなったら、可能な限り体力を消耗しない様に戦うまでさ。」
すると、目の前に魔物のオウルラッドが現れた。
「言った傍からこれかよ!」
「レミリアさんは下がって、ここは俺達が...。」
「リリもやるぅー!」
「わっ分かった...。俺とエイドと剣闘士で叩く。リリはエイドを、魔女は剣闘士を補助!」
「良いのかよ、こんな少数で?」
「相手は大した強さじゃない。なるべく団員の体力は温存したいんだ。」
戦闘は約8分で片付いた。リリはレミリアの言った通り、桁外れの力を秘めていた。
「えへへ、リリ凄いでしょ?」
「あっあぁ。お蔭で助かったよ。」
「でも、団長さん大丈夫?」
「俺の事はいいよ。早く山を越えなきゃな。」
俺は再びレミリアを先頭にし、団員達に隊列を整える様に指示を出した。
「団長、ちょっと無理し過ぎなんじゃないかな...」
「あいつはいつもこうだ。いくら体力があるからって、少しは自分を労われってんだ。」
「もしかして、ライをリーフさんのお見舞いに行かせなかった事に対する償いとか?」
「それもあるかもな...」
山越えを始めてどれくらいたっただろうか...。必要最低限の休息で、団員達の反感を一体どれほど買ってしまっただろうか...。この山を越えたら、また一から戦力を集める事も考えておこう。
「おいヤエ、ぐずぐずしてたら雪に埋もれるぞ。手を貸せ!」
「...悪いな。」
「お前、その怪我誰にやられたんだ?」
「別れの挨拶」
「別れ?何のだ?」
「<深淵>を出てきた。」
「闇ギルドを!?そんな事出来るのか?あそこは入ったら最後、二度と出られないってミリィが言ってたぞ!」
「筋を通せば、出られなくない。」
「その結果このザマか...。死ななくて良かったな。」
「あぁ...。生きて抜けられたのは、私が初めてだ。
「...。そうまでして王都へ行く理由が、お前にはあるって事か。」
「あぁ。行かなきゃいけないんだ。」
ライは初めて、ヤエの瞳に強い意志を感じた。
<レヴァレス山脈 アグナ山頂付近>
「お姉ちゃん!そこくぼみになってて雪が深いよ。気を付けて!」
リリがユナに注意を促す。
「うん。あなた凄いわね。まだ小さいのに、山の事が分かるのね。」
「えへへ。山はリリの遊び場なんだ!雪が積もると怖いけど...。時計塔の番人さんは、山は初めて?」
「...私の事、知ってたんだ。」
「知ってる知ってる!ず~っと時計塔を守って来たんでしょ?凄いね!リリも大事なものを守れる人になりたいな!」
リリが笑顔でユナに言った。
「あなたの大事なものは?」
「え~っと、え~っと...まだ考え中なの。」
「そう、見つかると良いわね。」
「うん!」
すると、ユナが何かを視界に捉え、俺達に知らせてくれた。
「気を付けて!魔物が出たわ!」
「何!?今度はヘルドッグか...。アーチャーとヴァルキリーで迎え撃つ。前線は俺1人で良い。」
「危険だわ、秀哉!」
「団長さん、リリが守ってあげるよ。」
「大丈夫だ。奴が仕掛ける前に、俺が仕留めてやる!」
俺は大剣を持って、魔物に向かって走り出した。弓使い3人の攻撃は避けられたが、俺の攻撃は急所に当たった。だが魔物の攻撃でダメージを受けてしまったが、トドメは弓使い達が刺してくれた。
「よしっ...先を行こう...。」
「団長、早く手当を!」
「いくら何でも無茶し過ぎよ!」
「そうだよ、でないと酷くなっちゃうよ。」
「皆が無事なら...俺はどうなったって構わないんだ!」
俺は弓使い達を振り払い、再び先頭を歩いた。今の俺の頭の中は、団員達を死なせずに山を越える事で一杯だった。たとえそれが雲を掴む事だとしても...
<レイス山入口>
吹雪は強くなる事は無かったが、それでも体温を無情にも奪っていた。他の団員達も疲れの色が見えてきた。戦闘による疲労は軽減出来ても、山越えの疲労は軽減出来なかった。そしてヤエも疲労が限界に近づいていた。
「大丈夫か?顔色悪いぞ。」
エイドがヤエを心配する。
「問題無い。」
「負ぶってやるよ。」
「2人して雪に埋もれたらどうするんだ。」
ヤエはエイドを追い越して歩きだした。するとリリがエイドの傍に寄って来た。
「もうすぐ砦があるから、もうすぐお休みが取れるよ。」
「リリ?」
「もうすぐ...もうすぐ...。」
「お前も随分疲れてるじゃないか。負ぶってやるよ。」
「ええ~と、まだ大丈夫。...リリが虫さんなら、飛んで行けるのになぁ...。」
「虫って?この前言ってたあれか?」
すると、俺の視界に建物が見えてきた。
「...おい!砦が見えたぞ!もう一踏ん張りだ!頑張れ!」
俺は懸命に団員達を励ました。全員が砦に入ったのを確認したら、最後に俺も入った。




